アフリカ記者が見た中国の両会:ガバナンスと中国・アフリカ協力
中国の全国人民代表大会と中国人民政治協商会議、いわゆる両会は、毎年世界の注目を集める中国の重要な政治イベントです。2025年春に開催された今年の両会には、中国内外から3,000人を超える記者が取材に入りました。その一人が、CGTN Africaのジャーナリスト、ダニエル・アラプモイ氏です。彼の視点を手がかりに、中国のガバナンスと中国・アフリカ協力の現在地を読み解きます。
両会とは何か:世界が注目する中国の政治イベント
両会とは、中国の最高立法機関である全国人民代表大会と、国家レベルの政治協商機関である中国人民政治協商会議の年次会議を指します。世界第2位の経済規模を持つ中国が今後どのような方向に進むのかを示す場として、国際ニュースの現場でも常に大きく報じられます。
2025年の両会は、中国が高品質発展と中国式現代化への転換を加速させるうえで、特に重要な節目と位置づけられました。アラプモイ氏は、この会議が中国・アフリカ協力にどのような影響を与えるのかに注目し、集中して取材を続けてきました。
1. 中国のガバナンスモデルを映す「集団の熟議」
アラプモイ氏がまず強調するのは、両会が中国のガバナンスモデルを象徴する場になっているという点です。両会では、経済、社会、環境、安全保障など、国として直面するさまざまな課題について、多くの代表や委員が一堂に会して議論します。
そこでは、一人の指導者の判断だけでなく、多くの意見を集約しながら、国家全体としての中長期戦略を描こうとする姿勢が見えてきます。アラプモイ氏は、こうした「集団で課題を共有し、戦略的に解決策を練るプロセス」に、両会の特徴があると指摘します。
課題解決に向けた戦略的プランニング
2025年の両会では、中国経済の質の高い成長、中国式現代化の推進といったテーマが前面に出ました。これらは、単なるスローガンではなく、産業構造の高度化や技術革新、地域間格差の是正といった具体的な政策と結びつけて議論されます。
アフリカを取材拠点とする記者の目から見ると、このように国家レベルの課題を戦略的に整理し、複数年にまたがる計画として位置付けるプロセスは、アフリカの多くの国々にとっても参考になり得る点だといえます。
2. 人々の暮らしと「民生」を最優先に
両会の議題を貫くキーワードの一つが、人々の暮らしの向上です。アラプモイ氏は、生活水準の改善や雇用の安定、教育、医療といった「民生」が、経済成長の数字と同じかそれ以上に重視されていると指摘します。
議論では、成長率や投資額といったマクロの数字だけでなく、実際に人々の生活がどう変わるのかという視点が繰り返し強調されます。最低所得の引き上げ、社会保障の改善、農村地域の整備など、具体的なテーマが政策議論の中心に据えられます。
生活者目線の政治がアフリカにも示すもの
アフリカにも、若年層の雇用、都市と地方の格差、教育や医療へのアクセスなど、共通する課題が多く存在します。そのため、両会で「人」を中心に据えた政策議論が繰り広げられていることは、アフリカの政策担当者や市民にとっても関心の高いポイントだといえます。
アラプモイ氏のレポートは、中国の政治プロセスを紹介するだけでなく、アフリカ側が自らの課題を考える際のヒントとして両会をどう読み解いているのかを伝えています。
3. 中国・アフリカ協力の新たな焦点:インフラ、グリーン、デジタル
アラプモイ氏が特に注目しているのは、両会で示される中国の政治・経済アジェンダが、中国・アフリカ協力の方向性にも影響を与えている点です。彼は、インフラ整備、グリーン開発、デジタル変革という三つの分野をキーワードとして挙げています。
インフラ整備から質の高い連結へ
これまで中国・アフリカ協力の象徴といえば、道路や鉄道、港湾などの大型インフラでした。両会では、こうしたハードインフラの整備に加え、物流の効率化や都市計画、人材育成など、インフラをどう活用し、地域の発展につなげるかという視点が重視されています。
アフリカ側にとっても、単に新しい施設を建設するだけでなく、その運営や維持管理、周辺産業の育成まで含めた「質の高い連結」が大きなテーマになりつつあります。
グリーン開発とデジタル変革への期待
両会では、環境に配慮した発展や、新エネルギーへの転換といったグリーン開発が継続的に議論されています。アフリカの多くの国々も、気候変動の影響を強く受けているため、再生可能エネルギーや省エネ技術に関する中国との連携に期待を寄せています。
また、デジタル変革も重要なテーマです。通信インフラの整備、デジタル決済、電子商取引、オンライン教育など、デジタル技術はアフリカの社会や経済のあり方を大きく変えつつあります。両会での議論は、こうした分野での今後の協力の方向性を示すものとして注目されています。
4. なぜアフリカの記者の視点が重要なのか
国際ニュースでは、しばしば特定の地域からの視点に偏りがちです。そうしたなかで、アフリカ発の視点から両会を伝えるアラプモイ氏のような記者の存在は、情報の多様性という点で重要です。
彼は、中国の政策や議論がアフリカの現場でどう受け止められ、どのような協力の可能性につながるのかを、自らの経験と取材を通じて具体的に伝えています。これは、単に中国の政治を紹介するだけでなく、中国・アフリカ関係という広い文脈で両会を理解する手がかりになります。
私たちは両会をどう読むか:日本の読者への問い
日本から見ると、中国の両会は「遠い国の政治イベント」のように感じられるかもしれません。しかし、そこでは高品質発展や人々の暮らしの向上、中国・アフリカ協力の新しいテーマなど、世界全体の動きにも直結する議題が話し合われています。
アフリカの記者が現場で見た両会の姿を知ることは、中国だけでなく、アジアとアフリカ、さらにはグローバルサウスと呼ばれる国々のダイナミズムを理解するヒントにもなります。
通勤時間やスキマ時間に国際ニュースを読む私たちにとって、両会の報道は、単なるニュースではなく「世界の優先課題は何か」「各地域は何を重視しているのか」を考えるきっかけになり得ます。ダニエル・アラプモイ氏の両会の旅路は、そうした問いを静かに投げかけているのかもしれません。
Reference(s):
Daniel Arapmoi: An African journalist's Two Sessions journey
cgtn.com








