中国人建築家が初のウルフ賞受賞 農村を変えた徐天天さんの挑戦
2025年3月10日、中国の女性建築家・徐天天(Xu Tiantian)さんが、建築分野で権威あるウルフ賞の2025年受賞者に選ばれました。中国人建築家としては史上初の快挙で、農村のかたちと暮らしを変えた仕事が評価されています。
歴史的な初受賞:なぜニュースになるのか
ウルフ賞建築部門で中国人建築家が選ばれるのは今回が初めてです。選考理由は「中国各地の村を、経済・社会・文化の面から変革した建築」です。2025年3月の発表から時間がたった今も、このニュースは中国内外の建築・デザイン界で大きな話題となっています。
都市のランドマークではなく、地方の小さな村に光を当てる建築が国際的に評価されたことは、世界のまなざしが「農村」や「地域コミュニティ」に向きつつある流れとも重なります。
徐天天さんはどんな建築家?
徐天天さんは1975年、中国の福建省に生まれました。清華大学で建築学の学士号を取得した後、アメリカのハーバード大学デザイン大学院で都市デザインの修士号(MAUD)を取得しています。
2004年に中国へ戻り、自身の事務所DnA(Design and Architecture)を立ち上げました。それ以来、一貫して農村地域をフィールドに、建築を通じた新しい地域づくりに取り組んできました。
「農村を実験の場」にしない、住民とともにつくる建築
徐さんの特徴は、地方を都市と同じように開発するのではなく、その土地に根付いた素材や工法を丁寧に読み解く姿勢にあります。外からデザインを持ち込むのではなく、村の歴史や生活文化を手がかりに、住民と一緒に空間をつくり直していくアプローチです。
村をどう変えたのか:評価された3つのポイント
ウルフ賞の発表では、徐さんの建築が経済的・社会的・文化的に村を変えたとされています。そこから見えてくるポイントを整理すると、次の3つにまとめられます。
- 経済面:地域の特産や観光資源を生かした施設づくりにより、外から人を呼び込み、雇用や収入の機会を生み出している。
- 社会面:広場や集会所などの公共空間を整えることで、世代を超えた交流が生まれ、コミュニティのつながりを強めている。
- 文化面:伝統的な建築様式や職人技を取り入れながら、現代的なデザインに再解釈することで、地域の誇りや文化的アイデンティティを再発見させている。
「持続可能な農村」のヒントに
徐さんの取り組みは、環境への配慮と地域資源の活用を重ね合わせた、持続可能な農村デザインとも言えます。輸送コストの小さい地元の材料を使い、既存の建物を生かしながら改修する姿勢は、環境負荷を抑えつつ、地域の経済循環を高める考え方につながります。
人口減少や高齢化が進む日本の地方にとっても、大規模開発ではなく、そこに暮らす人の生活文化を起点にした再生のあり方として、学べる点は少なくないでしょう。
読者への問い:建築はどこまで社会を変えられるか
今回のウルフ賞受賞は、一人の建築家の功績というだけでなく、建築が経済や社会、文化にどこまで関われるのかを問い直す出来事でもあります。
- 私たちの身の回りの当たり前の風景は、どのようなデザインや意思決定で形づくられているのか。
- 都市と地方の豊かさの基準を、そろそろ更新する必要はないか。
- 日本やアジアの他の地域で、どのような農村・地域デザインが可能だろうか。
2025年を振り返るとき、農村を変えた建築家に国際的な賞が贈られたというニュースは、世界がどこを向き始めているのかを示す象徴的な出来事として記憶されるかもしれません。
Reference(s):
Historic first: Chinese architect wins Wolf Prize in Architecture
cgtn.com








