タクラマカン砂漠を囲む3046キロの緑のベルト 「砂は砂のまま」で暮らしを守る video poster
リード:3046キロの「緑のベルト」は何を変えたか
2024年11月、タクラマカン砂漠の外周をぐるりと取り巻く「緑のベルト」が整いました。総延長3046キロにおよぶこの生態バリアは、砂漠の広がりから人々の暮らしを守るための大きな節目となりました。しかし、その達成をもって事態が終わったわけではありません。
タクラマカン砂漠を一周する生態バリア
タクラマカン砂漠の周囲を囲むこの緑の帯は、砂の移動を和らげ、周辺の集落やオアシスの安全を高める役割を担っています。周囲3046キロにわたる生態バリアが形になったあとも、砂漠の縁に暮らすYutian Countyの住民たちは、日々この緑の帯を補強し続けています。
彼らが手を止めないのは、「砂漠の基本的なふるまいは変えられない」という現実を理解しているからです。緑のベルトはあくまで砂漠と人の暮らしのあいだに設けられたクッションであり、一度つくって終わりの構造物ではありません。
「砂は砂のままに」ーー共生をめざす発想
この地域の取り組みを象徴するのが、"letting sand be sand"(砂は砂のままに)という考え方です。砂漠そのものをねじ伏せるのではなく、その存在を受け入れたうえで、人々の生活への脅威をできるだけ小さくする。そんな発想が、緑のベルトづくりの背景にあります。
- 砂漠の自然な生態をできるだけ保つこと
- 人の暮らしやインフラを、砂嵐や移動する砂から守ること
- 短期的な効果だけでなく、世代をまたいだ長期的な安全を見据えること
自然を完全にコントロールしようとするのではなく、「変えられないもの」を前提にしたうえで、被害を減らし、共生の余地を広げていく。タクラマカン砂漠の縁で進む試みは、そのような地道な適応戦略の一例だと言えます。
バラも低木も、同じ前線に立つ
砂漠とオアシスの境界となる前線では、バラ(roses)、タマリスク(tamarisks)、サクサウル(saxaul trees)、シスタンケ(cistanche)など、性質の異なる植物が肩を並べるように育っています。色とりどりの花をつけるものから、乾燥や塩分に強い低木まで、多様な植生がモザイク状に広がり、一本の線ではなく「幅を持った帯」としての緑を形づくっています。
この多様性こそが、緑のベルトを強くする要素でもあります。特定の樹種や草種に頼り切るのではなく、さまざまな植物が役割を分け合うことで、気候や環境条件の変化にもより柔軟に対応できる土台が生まれます。
オアシスと砂漠、そのあいだで暮らす
Yutian Countyの人々は、こうした緑の帯の管理を日々の暮らしの一部として続けています。砂漠とオアシスの境界に立ち、植物の状態を見守りながら、必要な手入れを積み重ねる。その繰り返しが、「繊細なバランス」を保つことにつながっています。
- 砂漠の動きに目を配り、異変を早く察知する
- 緑のベルトの切れ目や弱い部分を見つけ、補強していく
- 砂漠の景観と生態を尊重しつつ、住居や農地への影響を抑える
2024年11月に緑のベルトが一周分つながってから、およそ1年がたった今も、こうした作業は続いています。完成というより、ようやくスタートラインに立ったという感覚に近いのかもしれません。
自然をどこまで変えるべきかという問い
タクラマカン砂漠の「3046キロの緑のベルト」は、砂漠化対策や気候変動への適応策としてだけでなく、「自然をどこまで変えてよいのか」という問いを私たちに投げかけます。
砂漠を完全に緑地に変えるのではなく、「砂は砂のまま」にしておきながら、その周縁で人の暮らしを守る。その姿勢は、海面上昇や豪雨、極端な高温など、さまざまな環境リスクに直面する世界各地の地域にとっても、一つの考え方のヒントになりそうです。
自然を相手にした長期戦では、「勝つ」ことよりも「折り合いをつける」ことが重要になります。タクラマカン砂漠の縁で静かに広がり続ける緑のベルトは、その現実を静かに物語っているように見えます。
Reference(s):
cgtn.com







