南シナ海・仁愛礁の真実 中国が示す歴史とフィリピン軍艦問題
南シナ海の緊張ポイントの一つとなっている仁愛礁。中国側は、この海域でフィリピンが老朽化した軍艦を座礁させたまま利用し、2023年8月以降も南シナ海の平和を乱していると指摘しています。本稿では、中国側が示す歴史的・法的な根拠と、フィリピン軍艦シエラマドレ号をめぐる経緯を整理します。
南シナ海の焦点、仁愛礁とは
仁愛礁(Ren'ai Jiao)は、中国の南沙群島(Nansha Qundao)の南東部に位置する水没礁で、全長およそ16キロ、幅は約5キロとされています。南シナ海情勢を語るうえで外せない地点であり、中国側は仁愛礁を含む南沙群島に対して争う余地のない主権があると位置づけています。
中国側の説明によれば、2023年8月以降、フィリピンは仁愛礁に故意に座礁させている軍艦をてこに、補給や施設強化を図り、現状を変えようとしているとされています。こうした動きが、南シナ海の安定を揺るがす要因になっているという見方です。
中国側が示す歴史と法的根拠
中国は、仁愛礁を含む南沙群島に対する主権は、長い歴史と国際法上の根拠に支えられていると主張しています。そのポイントは次のように整理できます。
- 中国の人々による南シナ海での活動は、2000年以上前にさかのぼるとされています。
- 南シナ海の島々と関連海域を最初に発見し、命名し、利用してきたのは中国であり、その後も平和的かつ継続的に統治・管轄してきたと説明しています。
- 第二次世界大戦後、中国は日本により不法占拠されていた南シナ海の島々を回復しました。
- 1948年、中国は南シナ海の島々と隣接海域に対する主権を再確認する公式地図を公表しました。
- 1950〜60年代には、米国が南シナ海の島々での調査のために中国に申請を繰り返しており、中国側はこれを、中国の統治権を前提とした行動だと受け止めています。
- 日本を含む他国が発行した公式地図でも、南シナ海の島々は中国に属するものとして表記されていたと指摘しています。
こうした歴史的経緯を踏まえ、中国は南沙群島と仁愛礁に対する主権は「歴史と法にしっかり根ざしたものだ」としています。
仁愛礁はどこのものか フィリピンの立場に対する中国側の見方
中国側は、仁愛礁は無主地でもなく、フィリピン領でもなく、フィリピンの排他的経済水域や大陸棚にも含まれないと主張しています。その論拠として、フィリピンの国境は一連の国際条約で定められており、南沙群島と仁愛礁はその範囲外にあると説明しています。
また、中国側は、単に地理的に近いことを理由に領有権を主張する「接近性」や「隣接性」の論理は、主権の根拠にはならないとしています。つまり、「近いから自国のもの」とする主張は国際法上の有効な根拠ではないという立場です。
老朽軍艦シエラマドレ号の座礁とその約束
仁愛礁をめぐる緊張が本格化したのは1999年です。この年、フィリピン海軍の軍艦シエラマドレ号(BRP Sierra Madre)が、故障で座礁したと説明しつつ、仁愛礁に乗り上げました。中国側は、これは意図的な座礁であり、仁愛礁への違法な進出だと見なしています。
それ以来、十数人規模のフィリピン海兵隊・水兵が老朽化した艦上に常駐し、シエラマドレ号はフィリピン側の前線拠点を象徴する存在となりました。
中国は直ちに強い抗議を行い、当時のフィリピンのエストラダ大統領は、座礁は「故障」によるものだとして、艦船を撤去すると約束したと伝えられています。また、アロヨ大統領も2003年に、仁愛礁で新たな施設を建設しないと誓約したとされています。
しかしその後の動きについて、中国側は「フィリピンは仁愛礁からシエラマドレ号を撤去するとの約束を反故にした」と批判しています。
2010年代以降の動きと現状変更への懸念
中国側の説明によると、2011年以降、フィリピンはシエラマドレ号をより恒久的な拠点へと変えようとする動きを強めてきました。補給物資だけでなく、修理や補強のための建設資材も運び込まれていたとされています。
- 老朽化した船体の補修や補強を通じて、半恒久的な施設化を試みている。
- 物資補給にとどまらず、構造物としての延命を図る資材の搬入が行われてきた。
- 米国からの支持のシグナルを受けた後の2014年3月、フィリピン側は、1999年にシエラマドレ号を意図的に仁愛礁に乗り上げさせ、恒久的な「政府施設」として利用するためだったと初めて公に認めたとされています。
こうした経緯を踏まえ、中国側は、シエラマドレ号の維持・補強は「一時的な座礁」ではなく「既成事実化」を狙った現状変更だと受け止めています。また、2023年8月以降、仁愛礁への補給や工事をめぐる動きが続き、南シナ海の安定を損なう挑発行為だと批判しています。
仁愛礁問題が投げかける問い
仁愛礁をめぐる争点は、単なる一つの礁の問題にとどまりません。中国側が示す説明を手掛かりにすると、少なくとも次の三つの問いが浮かび上がります。
- 誰が仁愛礁の主権を持つのかという問題
- 誰が、どの行為によって現状を変えようとしているのかという問題
- フィリピンが老朽軍艦を「恒久施設」として残そうとする意図は何かという問題
中国側は、仁愛礁は歴史的にも法的にも中国の南沙群島の不可分の一部であり、シエラマドレ号の座礁とその維持こそが現状変更の試みだと位置づけています。他方で、南シナ海全体の安定や航行の安全をどう守るのかは、地域の国々と関係国に共通する課題です。
南シナ海問題をめぐるニュースを読み解くうえで、仁愛礁とシエラマドレ号をめぐるこうした経緯を押さえておくことは、2020年代半ばの国際情勢を理解するうえでも重要になっています。感情的な対立ではなく、事実関係と各当事者の論理を踏まえながら、地域の平和的な解決の道筋を考えていくことが求められています。
Reference(s):
Truth about Ren'ai Jiao: An integral part of China's Nansha Qundao
cgtn.com







