南極ポリニヤに新知見 中国第41次南極観測隊の国際ニュースを解説
中国の第41次南極観測隊が、アムンゼン海とロス海での重要な調査を完了し、海氷の中に現れる開水域「ポリニヤ」の姿を詳しく描き出しました。南極の生態系と地球規模の気候パターンに影響するこの現象を、日本語で分かりやすく整理します。
アムンゼン海・ロス海で何が分かったのか
今回の国際ニュースの中心は、中国の第41次南極観測隊によるアムンゼン海・ロス海の海氷観測です。観測隊はこの海域で、海氷に囲まれた中にぽっかりと現れるポリニヤを詳細に調査し、その分布や特徴を明らかにしました。
観測隊メンバーのSun Yongming氏は、2013年から2020年までの11月のデータを基にした海氷濃度マップを示しながら、次のように説明しています。黄色い部分は海氷がほぼ100%を覆う領域、青い部分は海氷がほとんどなく、開水面になっている領域を意味します。南極大陸に近い沿岸部に見える青い帯状の部分こそが、ポリニヤです。
ポリニヤとは? 海氷の中に開いた「青い穴」
ポリニヤは、周囲を海氷に囲まれながらも、その内部だけ海面が露出している開水域のことです。一見すると局地的な現象に見えますが、南極の生態系や地球全体の気候にとって重要な役割を持っています。
海氷に覆われていないポリニヤの海面では、海と大気の間で熱がより活発に交換されます。そのため、南極周辺の海洋環境や大気の状態に影響を与え、結果として地球規模の気候パターンにも関わるとされています。また、ポリニヤは南極の海洋生態系にとって、生物活動がとくに活発な「ホットスポット」となります。
強い下降風がつくる「風成ポリニヤ」
ポリニヤが生まれる仕組みはいくつかありますが、Sun氏が強調したのは南極特有の「カタバ風」と呼ばれる強い下降風の役割です。南極大陸の内陸部から海に向かって吹き下ろすこの風が、新たにできた海氷を次々と沖へ押し流し、沿岸に開水面をつくり出します。
このように風によって維持されるタイプのポリニヤは「風成ポリニヤ」と呼ばれます。その大きさは天候や風の強さによって変化し、拡大と縮小を繰り返します。Sun氏によれば、極めて低温の環境では、新しい海氷はほぼポリニヤの中でのみ生成されます。一度氷ができると風に吹き飛ばされ、再び海面が露出し、また氷が作られる──この循環のため、ポリニヤは「氷の工場」とも呼ばれます。
ポリニヤの規模は、面積そのものだけでなく、「どれだけの海氷を生み出しているか」でも評価されます。アムンゼン海にあるポリニヤは、南極周辺に存在する十数か所の大きなポリニヤの中で、現在4番目の規模とされており、その重要性が際立っています。
「氷の工場」は生態系と気候のキープレーヤー
ポリニヤは、単なる海氷の隙間ではありません。Sun氏は、ポリニヤが海と大気の間の熱交換を促し、周辺の生物にとって「より好ましい環境」をつくり出していると説明します。研究によると、アムンゼン海のポリニヤは、南極周辺のポリニヤの中で最も高い一次生産性(植物プランクトンなどが物質を生み出す力)を持つことが示されています。
そのため、中国の第41次南極観測隊は、このポリニヤが南極全体の生態系にどのように影響しているのかを明らかにすることを目的に、集中的な生態観測を実施しました。ポリニヤ研究のポイントを整理すると、次のようになります。
- 海と大気の間の熱交換を強め、南極周辺の環境を左右する
- 一次生産性が高く、南極の生態系にとって重要な「生物のゆりかご」となる
- 南極の変化と地球規模の気候パターンを理解するための貴重な観測対象である
3隻体制の第41次南極観測 背景にある長期ミッション
中国の第41次南極観測隊は、2024年11月1日に中国南部の港湾都市・広州を出港しました。観測と物資輸送を担う砕氷船「雪竜(Xuelong)」と「雪竜2(Xuelong-2)」に加え、秦嶺ステーション向けの物資を運ぶ貨物船Yongshengの3隻体制で南極海へ向かいました。
任務期間はおよそ7か月とされ、2025年5月ごろの帰還が予定されていました。その長期ミッションの一環として行われたのが、今回紹介しているアムンゼン海・ロス海でのポリニヤ観測です。複数年にわたる海氷データの解析と現地観測を組み合わせることで、南極の海氷とポリニヤの実態が、これまでよりも立体的に把握できるようになりました。
日本語で読む南極研究の意味
今回の中国の南極観測は、南極という遠い場所で何が起きているのか、そしてそれが私たちの暮らす地域の気候や海洋環境とどうつながっているのかを考えるうえで、重要な手がかりを提供しています。特に、アジアの研究者が南極研究で存在感を高めていることは、国際的な科学協力という視点からも注目すべき動きです。
海氷の中にぽっかり開いた「青い穴」のようなポリニヤ。その内部では、氷が生まれ、熱がやりとりされ、豊かな生態系が育まれています。南極の変化を知ることは、地球全体の変化を知ることにもつながります。こうした最新の国際ニュースを日本語で丁寧に読み解くことで、極域で進む変化を自分ごととして捉え直すきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
China's 41st Antarctic expedition uncovers key insights into polynyas
cgtn.com








