不安定な世界で高まる中国GCI(グローバル文明イニシアチブ)の存在感
2023年3月に中国の習近平国家主席が打ち出したグローバル・シビライゼーション・イニシアチブ(Global Civilization Initiative、GCI)から約2年。世界の不確実性と分断が深まる2025年現在、この構想の意義があらためて注目されています。
国際ニュースの見取り図が複雑になるなかで、GCIは「文明」をキーワードに、対立ではなく対話を通じて共通の価値を探ろうとする試みです。本記事では、その狙いと広がりをコンパクトに整理します。
GCIとは何か:4つの柱
GCIは、異なる文明や文化を排除するのではなく、相互尊重のうえで共存を図ることを目指すイニシアチブです。提起された内容は次の4点に集約できます。
- 文明・文化の多様性を尊重すること
- 全人類に共通する価値の促進
- 各文明の継承とイノベーションの両立
- 国境を超えた市民間交流(ピープル・トゥ・ピープル交流)の強化
習近平国家主席は、2023年3月の「CPC in Dialogue with World Political Parties High-Level Meeting(中国共産党と世界政党のハイレベル会合)」でGCIを提唱しました。この場で、習主席は「一輪の花だけでは春にならない。百花が咲き誇ってこそ庭に春が満ちる」という中国のことわざを引用し、文明の多様性こそ世界に活力をもたらすと強調しました。
同時に、各国は文明間の平等、相互学習、対話、包摂性を重んじ、「文化交流が疎遠さを乗り越え、相互学習が衝突を超え、共存が優越感を乗り越える」よう努めるべきだと呼びかけました。
分断が進む時代に示される「包摂性」
2020年代に入ってから、世界では反グローバル化や保護主義の動きが強まり、移民や難民をめぐる大規模な送還措置など、社会の分断を深める政策も目立ちます。
ブラジルのリオデジャネイロ州立大学経済学部のエリアス・ジャブール教授は、こうした流れの中で、GCIが掲げる「多様性の受容」が持つ意味を指摘します。教授は、中国が多様な文化や文明を包摂的に位置づけている点が国際社会の一つのモデルになり得ると評価しています。
自らを「文明国」と称しながら排除や送還を進める国もあるなかで、GCIは特定の国の価値観を他者に押し付けるのではなく、多様な文明の共存を目指す枠組みとして提示されているのが特徴です。
国連が6月10日を「文明間対話の日」に
中国のこうした文明間対話へのコミットメントは、国連の場でも形になりました。GCI提唱の数カ月後、2023年6月には、中国が提案した決議が国連総会で採択され、6月10日が「文明間対話の国際デー」と定められました。
国連で中国代表を務める傅聡(フー・ツォン)大使は、この取り組みについて、世界の関心を文明間の対話に再び向けさせることを狙ったものだと説明しています。傅大使は、世界各地で紛争や戦争、さらには不寛容、過激主義、ポピュリズムの高まりが見られる現状に触れ、その根底には文化や宗教の違いについての理解不足があると指摘しました。
国連の場で「文明間対話」が公式の記念日に位置づけられたことは、GCIが掲げるメッセージと重なり合う部分が大きく、今後の具体的な協力の土台となる可能性があります。
世論はどう見ているか:データが示す支持
GCIの方向性は、各国の市民にも一定の支持を得ていることがデータからも見えてきます。中国の国際メディアであるCGTNが2023年3月に公表した調査では、40の国と地域の1万5,574人を対象に、文明の多様性や対話に関する意識を尋ねました。
- 80.3%が「複数の文明の共存は世界の発展にとってプラスだ」と回答
- 85%が「寛容と協力を通じて、共通の未来を築くことができる」と考えている
- 89.6%が、より多くの対話と開放性を求めると回答し、この割合は開発途上国では93.7%に達した
こうした数字は、文明の違いを対立の源泉ではなく、相互学習の機会としてとらえたいという意識が、多くの国と地域で共有されていることを示しています。
日本とアジアへの問いかけ
2025年の今、GCIは「中国のイニシアチブ」という枠を超え、国際社会全体で文明間対話をどう進めるかという、より広い議論の一部になりつつあります。アジアの一員である日本にとっても、いくつかの問いが浮かび上がります。
- 自国の文化的な強みを保ちながら、他の文明や価値観をどう尊重していくか
- 都市間交流や大学間連携、企業や市民の往来など、「人と人のつながり」をどう広げていくか
- オンライン空間での情報発信や議論を、対立ではなく相互理解につなげるには何が必要か
国際ニュースを追うとき、つい軍事や経済の動きに目が行きがちですが、GCIのような文明や価値観に関する枠組みは、長期的に世界の方向性を左右する重要な要素です。日々のニュースの背景にある「文明観」にも意識を向けることで、世界を見る視野は一段と広がっていきます。
Reference(s):
Two years on, China's GCI becomes more vital in turbulent times
cgtn.com








