OpenAIが中国本土AI「DeepSeek」を米政府に警戒要請 AI規制めぐり波紋
2025年3月13日、米国の人工知能(AI)企業OpenAIが、ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)に提出した書簡で、中国本土発のAIモデル「DeepSeek」を「重大なリスク」と位置づけ、米政府に対応を求めていたことが分かりました。本件は、AI技術が国際ニュースや安全保障の文脈でどのように扱われるかを示す一例となっています。
何が起きたのか:OpenAIがホワイトハウスに提出した書簡
OpenAIは、米政府が策定を進めるAI政策「AIアクションプラン」に関する意見募集に応じる形で、15ページにわたる書簡をホワイトハウスの科学技術政策局に提出しました。書簡に署名したのは、同社のGlobal Affairs(グローバル渉外)担当バイスプレジデントであるChris Lehane氏です。
Lehane氏はこの中で、現時点では米国がAI開発で世界をリードしていると認めつつも、中国本土発のモデルであるDeepSeekの急速な進歩によって、その優位性が縮まりつつあるとの見方を示しました。
OpenAIが指摘する「DeepSeekリスク」の中身
書簡によると、OpenAIはDeepSeekが特に安全保障の観点から「重大なリスク」になり得ると警告しています。その論点はおおまかに次のように整理できます。
- 重要インフラなど「高リスク用途」でDeepSeekが利用された場合、セキュリティ上の脅威になり得ると主張
- DeepSeekが「中国政府による操作」を受ける可能性があると懸念を表明
- 知的財産(IP)の盗用に関与していると非難
- 利用者がプライバシーやセキュリティ上のリスクにさらされる可能性があると警告
これらはすべてOpenAI側が書簡の中で示した見解であり、現時点でDeepSeekや中国側の立場や反論については、この書簡の内容からはうかがえません。
AI覇権と安全保障:にじむ米国の危機感
Lehane氏が「米国の優位が縮まりつつある」と指摘したことは、AI技術をめぐる国際競争の激しさを象徴しています。単なる技術競争ではなく、重要インフラや軍事、サイバーセキュリティなどと結びついた「安全保障上の資産」としてAIが認識されていることが背景にあります。
特定の国の企業が開発したAIモデルが、どの程度まで他国のインフラや社会システムに組み込まれてよいのか——。今回の書簡は、その難しい判断を米政府に迫る内容になっています。
OpenAIの提案:高度AIへのアクセスを「段階的」に制限
この書簡は批判や懸念を述べるだけでなく、具体的な政策案も示しています。OpenAIは、国や用途ごとに高度なAIモデルや関連技術へのアクセスを段階的に制限する「ティア(層)構造」の枠組みを提案しました。
その中では、中国を含む一部の国を対象に、高度なAI技術へのアクセスを制限することが想定されています。どのレベルの技術やモデルが制限の対象になるのかなど、詳細は今後の議論に委ねられていますが、AIをめぐる輸出管理や規制の流れが一段と強まる可能性を示唆する内容です。
日本と世界にとっての意味
今回の動きは、米国と中国本土という二つの大国の間だけの問題にとどまりません。AIモデルを研究開発に使う大学や企業、サービスとして提供するスタートアップなど、世界中のプレーヤーに影響し得るテーマです。
- どの国・地域のAIモデルを、どの用途で使うのか
- 安全保障上の懸念と、オープンな技術交流をどう両立させるのか
- 企業による自主規制と、政府による法規制の線引きをどこに置くのか
日本の利用者や企業にとっても、今後の国際的なAIルールづくりの行方を注視する必要があります。今回のOpenAIの書簡は、AI技術の評価が「性能」だけでなく「誰が開発し、どのような統治のもとで運用されるのか」という視点へと広がっていることを、あらためて印象づける出来事と言えそうです。
Reference(s):
OpenAI targets China's DeepSeek in letter to U.S. government
cgtn.com








