米国主導の国際秩序は崩壊したのか CGTN討論で専門家が警鐘 video poster
2025年3月、中国の国際メディアCGTNが配信した討論番組「Talking China」で、香港大学の研究者らが「米国主導のリベラルな国際秩序はすでに崩壊した」との見方を示しました。本記事では、その発言のポイントと、2025年の国際政治を見るうえでの意味合いを整理します。
CGTN討論番組で語られた「秩序崩壊」
番組に出演した香港大学Center on Contemporary China and the World創設ディレクターのLi Cheng(リー・チェン)氏は、いわゆる米国主導のリベラルな国際秩序について「全体がすでに消え去った」と述べ、近年、特にここ数週間の動きの中で崩壊が鮮明になったと指摘しました。
Li氏によれば、その原因の多くは米国自身の政策にあるといいます。番組はCGTNの討論番組「Talking China」として2025年3月10日にライブ配信されました。
トランプ政権の対欧州姿勢と大西洋関係
Li氏は、ドナルド・トランプ米大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」路線と、副大統領のJD・バンス氏による欧州への厳しい批判を具体例として挙げました。両氏は2025年2月のミュンヘン安全保障会議で、欧州諸国を同盟国というより「問題」として捉えるようなメッセージを発したとされています。
関税問題からウクライナ情勢まで、米欧間の溝が可視化される中で、Li氏は「米国主導の同盟国が、北大西洋条約機構(NATO)や米欧関係の崩壊の可能性について語るスピードには驚かされる」と述べ、大西洋をまたぐ安全保障枠組みそのものへの不安が広がっているとの認識を示しました。
「原因は中国ではない」 国連中心の秩序を支持
一部では、中国が既存の国際秩序を変えようとしているとの見方もあります。これに対しLi氏は、「こうした変化は中国が原因ではない」と明確に否定しました。
Li氏は、中国は他の多くの国々と同様に、国連を中心とするルールに基づく国際秩序を重視しており、国連主導の秩序そのものを変えたいとは考えていないと説明しました。そのうえで、中国はこの秩序の枠内で、自国を含む各国が利益を共有できる形での経済発展を目指していると述べました。
経済グローバル化と「一方的覇権主義」への警戒
Li氏はまた、中国が経済グローバル化を強く支持していると強調しました。経済の相互依存が深まることで、中国だけでなく他の国々も利益を得てきたからです。
同じ討論で発言した中国人民大学重陽金融研究院のシニアフェロー、Liu Zhiqin(リウ・ジーチン)氏も、中国はこれまで世界秩序を変えようとしたことはないと説明しました。一方で、国際社会には「一方的な覇権主義や弱い立場へのいじめのような行動は変えるべきだ」という強い需要があると指摘しました。
ここで言う「一方的覇権主義」とは、国際ルールや多国間協議よりも自国の力や都合を優先させる姿勢を指していると考えられます。Liu氏は、そのようなあり方こそ見直しが必要だと訴えた形です。
歴史の転換点で問われる「誰が秩序をつくるのか」
Li氏は、世界は今「歴史上きわめて重要な瞬間」にあり、変化のスピードが速く、不確実性と混乱が渦巻いていると語りました。米国主導のリベラルな国際秩序が崩壊したという認識は、そのような不安定さを象徴するひとつの見方だといえます。
こうした議論は、米欧関係やNATOの行方だけでなく、国連を中心とした多国間主義、経済グローバル化の今後を考えるうえでも重要です。日本を含む多くの国々にとっても、「誰が国際秩序のルールをつくり、どのような価値を共有するのか」という問いは、2025年を通じてますます重みを増しています。
中国の専門家たちの発言は、米国と欧州の関係変化だけでなく、国連や多国間協力をどう位置づけるか、そして一方的な力の行使をいかに抑制するかという、より大きなテーマを投げかけています。視点のひとつとして押さえたうえで、読者自身が国際秩序の行方を考える材料とすることができそうです。
Reference(s):
Expert: So-called U.S.-led liberal international order has collapsed
cgtn.com








