中国の商業ロケットCERES-1、8基の衛星打ち上げに成功 video poster
今年3月、中国の商業ロケット「CERES-1(セレス1)」が8基の衛星を一度に打ち上げ、気象観測や宇宙ビジネスの新たなページを開きました。この国際ニュースを、日本語で分かりやすく整理します。
3月17日、CERES-1が8基の衛星を軌道へ
3月17日(月)、商業ロケット「CERES-1 Y10」が中国北西部の酒泉衛星発射センターから午後4時7分に打ち上げられました。ミッション名は英語の古い歌にちなんだ「Auld Lang Syne(オールド・ラング・サイン)」と名付けられています。
ロケットは高度約535キロの太陽同期軌道に投入され、以下を含む8基の衛星を予定通りの軌道に送りました。
- 「雲遥(Yunyao-1)55〜60号」衛星
- 「AIRSAT-06」「AIRSAT-07」衛星 など
商業気象衛星コンステレーション「雲遥-1」とは
今回打ち上げられた「雲遥-1」は、天津に拠点を置く企業・雲遥宇航(Yunyao Aerospace)が開発する商業気象衛星シリーズです。最終的に90基規模の衛星コンステレーション(衛星群)を形成する計画です。
新たに打ち上げられた衛星には、GNSS(全地球航法衛星システム)掩蔽観測装置と呼ばれる観測機器が搭載されています。これは、GPSなどの測位衛星からの電波が大気を通過する際のわずかな変化を測ることで、次のようなデータを取得する技術です。
- 大気の温度
- 湿度
- 気圧
- 電離圏の電子密度
こうしたデータは、台風や豪雨の進路予測、航空・海運の安全、農業・エネルギー分野の需要予測など、多くの分野で役立つと期待されています。
20分ごとの「ほぼリアルタイム」予報を目指す
雲遥宇航が目指すのは、地球規模で大気と電離圏をほぼリアルタイムに観測するネットワークです。同社は、衛星コンステレーションが完成すれば、世界各地の大気・電離圏の状態について、20分ごと、あるいはそれ以上の頻度で更新される気象情報を提供できるとしています。
このデータは、とくに次のような用途での活用が想定されています。
- 一帯一路パートナー国や地域に向けた高頻度の天気予報サービス
- 洪水や暴風など自然災害のリスク評価
- 国際物流や航空路の運行計画の高度化
- 再生可能エネルギー(風力・太陽光など)の発電予測
観測データの精度と更新頻度が上がるほど、気象業務だけでなく金融や保険など、データを前提としたビジネスにも影響が広がります。
打ち上げ企業ギャラクティック・エナジーの存在感
CERES-1を運用する北京拠点のロケット企業「ギャラクティック・エナジー」は、これまでに17回の打ち上げを行ってきました。そのうち、直近のミッションの一つは、中国における今年最初の商業ロケット打ち上げとなりました。
同社は、CERES-1に続く新たなロケット開発も進めています。
- CERES-2:固体燃料を用いるキャリアロケット。500キロの低軌道(LEO)に最大1.6トンのペイロード(積載物)を運ぶ能力を持つとされています。初打ち上げは2025年6月に予定されていると発表されました。
- Pallas-1:中〜大型クラスの再使用型液体ロケット。離陸時の質量は283トン、LEOに最大8トンのペイロードを打ち上げる能力を目指しており、同年上半期の初打ち上げが予定されているとされています。
再使用型ロケットの開発は、打ち上げコストを下げ、宇宙へのアクセスをより日常的なものにする鍵とされています。ギャラクティック・エナジーの動きは、世界の商業宇宙市場の競争が一段と激しくなっていることを示しています。
日本やアジアの読者が押さえておきたいポイント
今回のCERES-1による打ち上げと雲遥-1コンステレーション計画は、日本やアジアにとっても無関係ではありません。ポイントを3つに整理します。
1. 気象データの質と量が世界的に向上
衛星数が増え、観測手段が多様化することで、世界全体の気象データの質と量は着実に高まります。各国の気象機関がどのような形でデータを取得し、活用・共有していくかは、今後の重要なテーマです。
2. 宇宙ビジネスのプレーヤーが増える
従来は国家主導だったロケットや衛星の打ち上げに、多くの民間企業が参入しています。ギャラクティック・エナジーのような企業の台頭は、日本国内の宇宙スタートアップや関連産業にとっても、競争と協力の両面で刺激となり得ます。
3. 「一帯一路」と宇宙データの組み合わせ
雲遥宇航は、一帯一路のパートナー国や地域に向けて高頻度の気象情報を提供する方針を示しています。インフラ開発にとどまらず、衛星データや気象サービスも含めた広い意味での「つながり」が意識されていることが分かります。
これから考えたい問い
宇宙空間から得られるデータが増え続けるなかで、私たちが考えておきたいポイントも見えてきます。
- 増え続ける衛星が、宇宙の「交通渋滞」やスペースデブリ(宇宙ごみ)をどう変えていくのか
- 気象データや衛星観測データを、どの範囲までオープンにし、どこからを商業サービスとするのか
- 災害対策や気候変動への適応に、各国がどう連携してデータを活用していけるのか
3月のCERES-1打ち上げは、一つのロケット成功にとどまらず、「誰が、どのような目的で宇宙を使い、得られたデータをどう共有していくのか」という、これからの時代の問いを静かに投げかけています。
Reference(s):
China's CERES-1 commercial rocket sends 8 satellites into preset orbit
cgtn.com








