中国でブタ腎臓移植が成功 臓器不足に挑む異種移植の最前線
中国の医療チームが、遺伝子改変したブタの腎臓を人の体内に移植し機能させることに成功しました。深刻な臓器不足に直面する世界の医療にとって、大きな一歩となりうる国際ニュースです。
69歳女性にブタ腎臓を移植 6日目で腎機能が回復
西京医院(空軍軍医大学)の医療チームは、2025年3月6日、末期腎不全の69歳の女性に対し、遺伝子編集を施したブタの腎臓を移植しました。血流を再開すると、移植腎はすぐにピンク色に変化し、まもなく尿の産生が始まったと報告されています。
手術から6日後の時点で、患者の状態は安定し、腎臓の機能も良好だったといいます。24時間あたりの尿量は最大で5468ミリリットルに達し、腎機能の重要な指標である血清クレアチニン値は3日目には正常値まで低下しました。医療チームは、この段階で手術は初期的に成功したと評価しました。
この女性は8年前に慢性腎不全と診断され、適切な腎臓ドナーが見つからなかったため、週3回の透析に頼る生活を続けてきました。しかし病状の進行とともに、透析に伴う合併症も現れていたとされています。
1億3000万人の腎臓病患者 臓器不足が背景に
中国には、慢性腎臓病の患者が約1億3000万人いるとされ、そのうち末期腎不全の段階にある人は数百万人規模で、毎年増え続けています。透析に頼らざるをえない患者が多い一方で、移植に必要な提供腎臓は決定的に不足しています。
今回のようなブタから人への臓器移植は、異なる種の間で臓器を移植する異種移植の一種です。ドナー不足の解消につながる可能性がある一方で、安全性や倫理面を含む多くの課題が残されています。
米国では少なくとも4例 中国の事例が続く
これまでに報告されている生体のブタ腎臓から人への移植は、少なくとも4例で、いずれも米国で行われたものです。昨年11月に移植を受けた患者は、これまでで最も長くブタ由来臓器で生存しているケースとされています。
4例目の患者は2025年1月に移植を受け、報告時点で1カ月以上生存していることが伝えられました。今回の中国での成功例は、こうした国際的な試みがアジアにも広がりつつあることを示しています。
中国で進む異種移植研究 腎臓から肝臓へ
今回のブタ腎臓移植の背景には、中国で積み重ねられてきた異種移植研究があります。2024年には、中国の研究チームが遺伝子改変ブタ腎臓をマカクザルに移植し、同年12月に6カ月を超えて臓器機能が維持されたと報告しました。これは長期生存に向けた重要なベンチマークとされています。
また、西京医院の研究者らは2024年4月、遺伝子改変ブタ肝臓を脳死患者に移植する初の試みを実施しました。さらにその翌月には、安徽医科大学第一附属医院のチームが、重度の肝がんを抱える生存中の患者に対して、遺伝子改変ブタ肝臓の移植を行っています。
こうした一連の試みは、中国が異種移植の分野で経験を蓄積しつつあることを示すものです。
免疫拒絶と感染リスク 患者が直面する課題
医療チームによると、今回の患者は今後、次のような重大なリスクに直面する可能性があります。
- 免疫拒絶反応: 患者の免疫がブタ由来の腎臓を異物として攻撃してしまうおそれ
- 凝固障害: 血液が固まりにくくなったり、逆に血栓ができやすくなったりする状態
- 病原体による感染: ブタ由来のウイルスや細菌などが人の体内で問題を起こす可能性
遺伝子改変によって拒絶反応や感染リスクを抑える工夫はなされていますが、人への応用はまだ始まったばかりで、長期的な安全性や有効性はこれから検証されていきます。
臓器不足解消への鍵となるか 私たちへの問い
西京医院のチームを率いた竇克峰氏は、異種移植について、臓器不足の問題を解決する鍵となり、多くの患者に新たな希望をもたらしうると語っています。
一方で、ブタの臓器を人に移植することには、倫理的な議論や社会的な合意形成も欠かせません。誰に、どのような条件で適用するのか。患者の安全と尊厳をどう守るのか。コストや医療資源をどう配分するのか。議論すべき論点は多くあります。
今回の中国でのブタ腎臓移植は、臓器不足に悩む世界中の患者にとって希望のニュースであると同時に、医療の未来について私たち一人ひとりが考えるためのきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Pig-to-human kidney transplant in China offers hope to millions
cgtn.com








