高山植物のカモフラージュ遺伝子を解明 青海・シーザン高原の新研究
中国西部の青海・シーザン高原で、高山植物が岩と同じ色に“化ける”仕組みが遺伝子レベルで解明されたとする研究が報告されました。自然界のカモフラージュと昆虫との長期的な共進化を示す例として、進化生物学の国際ニュースとしても注目されています。
岩に溶け込む高山植物コリダリスとは
研究対象となったのは、高山に生育するケマンソウの仲間、コリダリス・ヘミディケントラ(学名: Corydalis hemidicentra)です。この植物は、中国西部の青海・シーザン高原の岩場の斜面に自生しています。
同じ種でありながら、次の2つのタイプが存在することが知られています。
- 一般的な緑色の葉を持つタイプ
- 周囲の岩とほぼ同じ、岩灰色の葉を持つタイプ
とくに岩灰色のタイプは、遠目には岩とほとんど見分けがつかず、まさに自然の「カモフラージュ(保護色)」として機能していると考えられます。
カモフラージュの「遺伝的な仕組み」を解明
今回の研究では、このカモフラージュがどのような遺伝的仕組みによって生み出されているのか、その「遺伝的基盤」が明らかにされたとされています。
岩灰色の葉と緑色の葉が、単なる環境要因の違いではなく、遺伝子レベルの違いとして長期的に維持されていることは、自然選択と適応進化の具体的な証拠になります。高山という厳しい環境のなかで、どのような遺伝子の組み合わせが生き残りに有利だったのかを読み解くヒントにもなります。
昆虫食草者との「長期共進化」
研究者たちは、コリダリス・ヘミディケントラと、それを食べる昆虫(昆虫食草者)が、長い時間をかけて共進化してきたことも示したとしています。
共進化とは、一方の生物の変化が、もう一方の生物の進化を促し、それがまた最初の生物の進化を促すという、相互作用のループのことです。例えば、
- 昆虫が植物を見つけやすくなるほど、植物側には「見つかりにくくなる」方向の変化が有利になる
- 植物が岩と同じ色に近づくほど、昆虫には「より巧みに探し出す」能力が求められる
このようなせめぎ合いが世代を超えて続いた結果、現在見られるカモフラージュと昆虫側の行動や感覚の特性が形づくられてきた、という見方ができます。
高山の生態系と進化研究への示唆
今回のように、高山植物のカモフラージュとその遺伝的基盤、昆虫との共進化の証拠がそろって示されるケースは多くありません。青海・シーザン高原のような厳しい環境では、わずかな色の違いが「食べられるかどうか」「次の世代を残せるかどうか」を左右する可能性があります。
この研究は、次のような点で重要だと考えられます。
- 自然界のカモフラージュがどのように進化してきたかを理解する手がかりになる
- 植物と昆虫の相互作用を通じて、生態系全体のバランスを考える視点を与えてくれる
- 気候変動など環境変化が進むなかで、生物がどのように適応していくかを考える基礎データになりうる
「見えない」ものを見る視点をくれるニュース
日常生活では、私たちは岩場に生える小さな植物や、それを食べる昆虫のことを意識することはあまりありません。しかし、高山の一角でも、植物と昆虫の間には長い時間をかけた「かくれんぼ」のような進化のドラマが存在しています。
今回の研究は、そうした「見えにくい」自然の工夫を、遺伝子というミクロなレベルから浮かび上がらせた点で、科学ニュースとしても興味深い内容だと言えます。スマートフォン越しに読む一つの国際ニュースが、身の回りの自然を見る目を少し変えてくれるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








