中国主導チームが1万km超の量子暗号通信に成功 中国と南アフリカ結ぶ国際ニュース
中国が主導する国際研究チームが、衛星と小型地上局を使って、中国と南アフリカ間の約1万2900キロメートルで量子暗号通信を実現しました。量子技術による安全な通信を地球規模で展開できる可能性を示す成果として、いま世界の注目を集めています。
中国と南アフリカを結ぶ1万2900kmの量子通信
今回の成果は、中国の研究者が率いる国際チームが、南アフリカ・ステレンボッシュにある地上局との間で実証したものです。中国側の衛星と南アフリカの地上局をつなぎ、約1万2900キロメートル離れた地点同士で量子暗号通信を行うことに成功しました。
研究チームは、ジナン1号と呼ばれるマイクロナノ衛星と、コンパクトな地上局を組み合わせ、衛星と地上との間で量子鍵配送(QKD)をリアルタイムに実現しました。これは、衛星と小型地上局を使った形では世界で初めての試みとされています。
量子鍵配送(QKD)とは何か
今回のニュースのキーワードである量子鍵配送(Quantum Key Distribution, QKD)は、暗号通信に使う「鍵」を量子力学の性質を利用してやり取りする技術です。
- 通信前に、送信側と受信側が量子状態を使って暗号鍵を共有する
- 第三者が盗聴を試みると量子状態が乱れ、その痕跡が検出できる
- 盗聴の有無を確認しながら、安全な鍵だけを選んで利用できる
この仕組みにより、理論的には盗聴の痕跡なしに通信内容を読み取ることが極めて困難になるため、「ハッキングに非常に強い通信」として期待されています。
なぜ1万km超えが重要なのか
量子通信はこれまでも、同一国内や同一大陸内の比較的短い距離での実証が中心でした。今回の実験では、中国と南アフリカという異なる半球の地点を結び、1万キロメートルを大きく超える距離での量子暗号通信が達成されました。
これは、単に「距離の記録」を伸ばしたというだけでなく、将来、地球規模で安全な通信ネットワークを構築できるかどうかを左右する重要な一歩です。海底ケーブルや光ファイバーだけに頼らず、衛星を使って離れた地域同士をつなぐことで、より柔軟で広範囲な量子通信網の姿が見えてきます。
技術的なポイントはどこか
今回の研究で注目される技術的なポイントを、コンパクトに整理してみます。
- マイクロナノ衛星「ジナン1号」の活用
大型衛星ではなく、比較的小型の衛星で量子通信を実現したことで、将来の衛星コンステレーション(多数の衛星によるネットワーク)への応用可能性が高まります。 - 小型地上局との組み合わせ
巨大な設備ではなく、コンパクトな地上局で運用できたことは、世界各地への展開を考えるうえで重要です。南アフリカ・ステレンボッシュの地上局も、そうした小型局の一つとして機能しました。 - リアルタイムの量子鍵配送
衛星と地上局の間でリアルタイムに量子鍵を配送し、安全な通信路をその場で確立できることを示しました。 - 学術誌での高い評価
この成果は英科学誌「Nature」に掲載され、査読者からは「技術的にも非常に印象的で、衛星QKDサービスの広範な展開に向けた大きな前進であり、衛星量子通信技術の成熟を示している」と評価されています。
「ハッカー耐性の高い通信」が示す未来像
研究チームは、今回の成果を「これまでで最長距離のハッカー耐性の高い通信」の実証と位置づけています。理論上盗聴の有無を検知できる量子鍵を使うことで、従来の暗号技術だけに頼るよりも安全性を高められる可能性があります。
もし、複数の衛星と地上局を組み合わせた「トラステッドノード型」の量子通信ネットワークが構築されれば、次のような分野での活用が期待されます。
- 政府間・外交交渉などの機密通信
- 国際金融取引や中央銀行間の連絡
- エネルギーやインフラを支える制御システムの通信
- 医療・研究データなど、流出リスクの高い情報のやり取り
もちろん、量子通信を実用レベルで広く展開するには、コストの低減、衛星と地上局の増設、国際的な標準化など、多くの課題が残っています。それでも今回の成果は、「本当に実現できるのか」という問いに対し、「技術的にはここまで来ている」と示す材料になりました。
国際協力としての意味合い
今回のプロジェクトは、中国の研究者が主導しつつ、南アフリカのステレンボッシュ大学との協力によって進められた点でも注目されます。量子通信のような先端技術は、一国だけで完結するのではなく、異なる地域・研究機関が協力しながら発展していく傾向が強まっています。
中国と南アフリカを結ぶこの実験は、国際的な量子通信ネットワークの将来像を先取りするものでもあり、今後、他の国や地域を交えた共同研究が広がっていく可能性があります。
私たちの生活にどう関わってくるのか
量子通信と聞くと、まだ遠い未来の話のように感じるかもしれません。しかし、インターネットやスマートフォンも、かつては一部の研究者や専門家だけが使う技術でした。
将来、量子鍵配送が国際通信インフラの一部として組み込まれれば、私たちが意識しないところで、オンラインバンキングやクラウドサービス、ビジネス上の重要なやり取りが、より強固なセキュリティのもとで守られる可能性があります。
今回の中国主導の国際研究チームによる実証は、「安全なデジタル社会」をどうつくるかという大きな問いに対して、一つの具体的な答えを示したものと言えます。量子通信がどのように社会実装されていくのか、今後の国際ニュースや研究動向を追いながら、私たち自身も視野をアップデートしていきたいところです。
Reference(s):
Chinese-led team achieves 10,000-km quantum-secured communication
cgtn.com








