消えゆく氷河と国際氷河保全年2025 地球のコールドストレージは今
2025年は、国連総会で定められた国際氷河保全年の節目の年です。地球のコールドストレージ(冷蔵庫)のような役割を担う氷河が、今、記録的なスピードで失われつつあります。中国の研究者による20年にわたる現地観測から、その現実と、私たちが取るべき行動を考えます。
2025年は国際氷河保全年 世界氷河デーが始動
国連総会第77会期は、2025年を国際氷河保全年(International Year of Glaciers' Preservation、IYGP)と宣言し、さらに2025年から毎年3月21日を世界氷河デーと定めました。2025年12月の今、この一年は、氷河を切り口に気候変動と水資源を見つめ直す特別な年になりました。氷河は、気候システムの重要な一部であり、地球の過去の気候を記録し、変化の早期警報装置としても働きます。国際的な記念年と記念日は、その役割を世界規模で再認識するきっかけといえます。
20年の現地観測が映す後退する氷河
中国科学院・西北生態環境資源研究院の王飛騰研究員は、氷河研究に携わり始めた2005年から、ほぼ毎年、現地に入り氷河の長さや面積の変化を記録してきました。約20年にわたる観測で、彼が目の当たりにしたのは、多くの小規模な氷河が急速に後退し、中には完全に消えてしまった場所もあるという現実です。
新疆・ウルムチ川源流 1号氷河の変貌
王氏が初めて新疆ウイグル自治区のウルムチ川源流にある1号氷河を調査したのは2005年のことです。当時は、東西二つの氷河の枝の間が厚い雪に覆われていました。しかし現在、その雪は失われ、山肌が露出しています。観測によれば、この氷河は毎年5〜8メートルのペースで後退しており、かつては純白の雪と氷に囲まれていた観測地点が、今では岩や氷河堆積物がむき出しの場所へと変わってしまいました。
四川・大姑17号氷河 消滅のカウントダウン
四川省の大姑17号氷河でも、急速な縮小が進んでいます。2020年には0.05平方キロメートルだった氷河の面積は、2024年には0.03平方キロメートルまで減少しました。現在の傾向が続けば、今後2年ほどで二つの小さな氷河に分かれ、2030年までには完全に消えてしまう可能性があるとされています。観測の拠点そのものが失われつつあるという事実は、データの喪失だけでなく、温暖化が生態環境に与える深刻な影響を物語っています。
中国の氷河の8割は小さな氷河 消滅のリスク
中国に存在する氷河のうち、およそ8割は面積1平方キロメートル未満の小規模な氷河だとされています。こうした小さな氷河は、気温の変化に非常に敏感です。
中国科学院の天山氷河観測研究所の最近の研究によると、中国北西部の乾燥地域にある0.5平方キロメートル未満の氷河は、今世紀半ばまでに、将来の気候変動や降水量の増加の有無にかかわらず、消滅すると予測されています。長期観測データと氷河の動きを計算するモデルに基づくこの予測は、中国の氷河の後退がすでに不可逆的な段階に入っていることを示しています。
氷河の消失は、次のような影響をもたらす可能性があります。
- 地域の水供給への影響:氷河からの融解水は、内陸の乾燥地域にとって重要な淡水資源となっています。氷河が縮小し尽くした後には、逆に川の流量が減少する恐れがあります。
- 生態系の安定性:水量や水温の変化は、川や湿地に生きる生物の生息環境を揺らします。
- 地質災害リスクの増大:氷河湖決壊洪水など、氷河の後退に伴う災害リスクが高まる可能性があります。
氷河はなぜ地球のコールドストレージなのか
氷河は単なる氷の塊ではありません。気候システムの一部として、地球環境にさまざまな形で影響を与えています。
- 地球の気候を記録するタイムカプセル:氷の層には、過去の気温や大気の状態が刻まれており、長期的な気候変動を読み解く手掛かりとなります。
- 気候変動の早期警報装置:気温上昇に敏感に反応するため、氷河の変化を追うことで、気候システム全体の変化を早い段階で察知できます。
- 淡水資源の供給源:氷河から溶け出した水は、多くの地域で飲用水や農業用水などの淡水資源として利用されています。
- 生態系を支える役割:氷河からの水が、下流の河川や湿地の生態系を維持する重要な要素となっています。
こうした機能を考えれば、氷河を守ることは単に美しい景観を守ることではなく、人間社会と自然環境の安定を守ることそのものだと言えます。
国際氷河保全年を超えて 求められる行動
国際氷河保全年2025と世界氷河デーの設置は、氷河保全をめぐる国際社会の関心を高める大きな一歩です。同時に、氷河の後退が不可逆的な段階に入ったと予測される今、時間的な余裕はあまりありません。
王氏のような研究者による現地観測は、氷河変化の実態を把握し、将来を見通すうえで欠かせません。各国や地域が、データや知見を共有し合いながら、科学的な根拠に基づいた政策づくりを進めていくことが重要です。
では、一般の私たちにできることは何でしょうか。
- 関心を持ち続ける:国際ニュースや科学ニュースを通じて、氷河や気候変動に関する最新の情報を追い続けることは、小さな一歩ですが確かな行動です。
- 科学的な議論を支える:根拠に基づいた議論や政策を支持し、デマや極端な情報に流されない態度が求められます。
- 日常の選択を見直す:エネルギーの使い方や移動手段など、気候への負荷を減らす行動を少しずつ積み重ねることで、温暖化のスピードを抑える一助となります。
地球のコールドストレージである氷河は、静かに、しかし確実に姿を変えています。2025年の国際氷河保全年をきっかけに、次の世界氷河デー(2026年3月21日)までの一年を、氷河と気候、そして自分たちの暮らしとのつながりを見つめ直す時間としてみるのも良いかもしれません。
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Reference(s):
Earth's 'cold storage': Glacier conservation and global action
cgtn.com








