中国とナミビア外交35年:資源協力からAI・宇宙へ、新時代のパートナーシップ
2025年は、中国とナミビアの外交関係樹立35周年の節目の年です。独立前から続く連帯の歴史に、新たな活力がどう加わろうとしているのか――経済協力、ハイテク分野、そしてナミビア初の女性大統領の登場を軸に見ていきます。
ポッドキャスト番組「China Africa Talk」は、ナミビアの地域開発エコノミスト、ペニー・トゥナ・マグダレナ・ウーコンデ氏にインタビューを行いました。本稿では、その発言を手がかりに、現在の中国・ナミビア関係と今後の展望を整理します。
独立前から続く「連帯」の歴史
ウーコンデ氏は、中国とナミビアの関係を「単なる貿易ではなく、共有された歴史と戦略的協力、そして相互成長に基づくもの」と表現します。
1960〜70年代、中国はナミビア独立運動の中心だったSWAPO(南西アフリカ人民機構)の解放闘争を支援してきました。毛沢東の反帝国主義的な理念は、ナミビアの独立運動と響き合い、中国は早くから重要な支援国の一つだったといいます。
その流れの延長線上に、1990年3月21日のナミビア独立と、その翌日にあたる外交関係樹立があります。ウーコンデ氏は、これは「新しいパートナーではなく、長年の同盟関係の正式な確認」だったと見ています。
鉱業・農業・インフラで進んだ実務協力
両国関係は2018年に「包括的戦略的協力パートナーシップ」へと格上げされ、そこから経済協力が一段と加速しました。
ウーコンデ氏が挙げる主なマイルストーンは次の通りです。
- 鉱業分野:ウランを中心に中国企業の投資が進展。
- 農業分野:2018年にナミビアは、中国へ牛肉を輸出した初のアフリカ諸国の一つとなる。
- 2024年:山羊・羊肉の輸出に関する新たな協定が結ばれ、農産物輸出が拡大。
- 水産物:海産物の対中輸出をめぐる協議が進行中で、ナミビアの漁業に新たな市場開拓の可能性。
インフラ協力も重要な柱です。両国は「一帯一路(BRI)」の枠組みを通じて、交通・エネルギー分野のプロジェクトに取り組んでおり、その一例がトランス・カラハリ鉄道計画です。ナミビア内外の輸送回廊を強化し、資源輸出や域内連結性の向上を目指しています。
さらに、このパートナーシップは人と人との交流にも広がっています。
- ナミビア大学の孔子学院が、中国語教育や文化交流を担う。
- 多くのナミビアの学生が奨学金で中国に留学。
- 20年以上にわたり、中国の医療チームがナミビアで医療協力に参加。
こうした取り組みを踏まえ、ウーコンデ氏は「中国とナミビアのパートナーシップの核心にあるのは、連帯と開発、そして長期的な協力だ」と強調します。
王毅外相の2025年訪問が示したメッセージ
2025年1月、中国の王毅外相は年初のアフリカ歴訪で最初の訪問先にナミビアを選びました。ウーコンデ氏は、この選択自体が「ナミビアの戦略的な位置づけの高さを示す強いメッセージだった」と見ています。
王毅外相は、ナミビアの豊かな資源を「社会と経済発展の利益」に変えていくことを支援し、両国がともに近代化を進めるパートナーであると強調しました。
ウーコンデ氏は、独立闘争期から現在の包括的戦略パートナーシップに至るまでの流れを振り返りつつ、次のように分析します。
- 中国との関係は、独立支援から始まり、今や多極的な世界秩序の中でナミビアの経済的位置づけを形づくる段階に入っている。
- その中核にあるテーマが「構造的な経済変革(産業構造の転換)」である。
一方で、彼女は「パートナーシップの方向性はナミビア自身が主体的に決めなければならない」とも指摘します。特に工業化について、ウランなどの資源分野での中国の投資を、どのように付加価値の高い産業づくりにつなげるかが鍵だとしています。
そのための仕組みとして、ウーコンデ氏は「FOCACやBRIに関する専任代表が必要だ」と提案します。これは、合意されたプロジェクトが実際に実行され、モニタリングされ、ナミビアの近代化の成果へと結びついているかを継続的に見ていく役割です。
AI・宇宙・グリーン経済――次の協力フロンティア
現在、中国は人工知能(AI)、宇宙技術、グリーン経済など、次世代の産業分野で大きな前進を遂げています。ウーコンデ氏は、これらの分野を「次の世紀を形づくる産業」と位置づけ、ナミビアは戦略的に関わる必要があると語ります。
重要なのは、「中国とのあらゆる協力がナミビアの国家開発アジェンダと整合しているかを常に確認すること」だといいます。単に新技術を導入するのではなく、自国の長期戦略の中にどのように位置づけるかが問われています。
見過ごされてきた「ウォルビスベイ回廊」の可能性
ウーコンデ氏が注目する資産の一つが、ナミビアのウォルビスベイ回廊です。大西洋側の港からブラジルなどとも接続しやすい地理的優位性を持ちながら、その潜在力は十分に生かされていないと指摘します。
近年、湾岸地域の情勢を背景に、世界の海運ルートが一部で見直され、その影響はナミビアの観光にも及んでいます。だからこそ、ウォルビスベイ回廊をより高度に活用することは、貿易や観光の回復・拡大にもつながり得ると期待されます。
宇宙協力と人材育成という長期投資
宇宙分野でも、両国の協力は既に始まっています。ナミビアは、中国の宇宙関連施設を受け入れている「宇宙協力のホスト国」でもあります。
ウーコンデ氏は、「いつかナミビア人宇宙飛行士が宇宙に飛び立つ姿を見たい」と語り、宇宙科学や衛星工学の教育での協力拡大に期待を寄せています。宇宙分野での人材育成は、短期的な収益に直結しにくい一方、長期的には通信、観測、ナビゲーションなど多くの産業に波及効果をもたらす可能性があります。
ナミビア初の女性大統領と対中関係の行方
今年、ネトゥンボ・ナンディ=ンダイトワ氏がナミビア初の女性大統領として就任しました。ウーコンデ氏は、その誕生を「これ以上誇らしいことはない」と表現し、高く評価しています。
理由の一つは、ナンディ=ンダイトワ大統領が外交、貿易、外交政策の分野で長年の経験を持つことです。とりわけ外務大臣としての経歴の中で、国連安全保障理事会にアフリカの常設議席を設けるべきだという立場を、情熱を持って主張してきたことを指摘します。
ウーコンデ氏は、大統領が「自らのレガシー(歴史的な足跡)を築くことに強い意欲を持っている」と見ています。その前提には、ナミビア解放へと導いたイデオロギーへの理解と、その延長線上で国をどこに導くかというビジョンがあります。
そのうえで、「こうした理念とビジョンを持つ指導者の下で、中国とナミビアの関係は次のレベルへと発展していくだろう」と語り、対中関係の将来に楽観的な見通しを示しました。
読者が注目したいポイント
35年を迎えた中国・ナミビア関係は、独立支援から始まった連帯が、鉱業・農業・インフラ、さらにはAIや宇宙といった先端分野へと広がりつつあります。日本の読者にとっても、グローバルサウスをめぐる新しいパートナーシップの一例として注目に値します。
今後の焦点となりそうな論点を、最後に整理しておきます。
- 資源輸出から、より高度な産業・工業化へとどこまで踏み込めるのか。
- AI、宇宙、グリーン経済などの新分野で、どのような協力モデルが生まれるのか。
- ウォルビスベイ回廊など物流ハブとしてのポテンシャルを、どこまで引き出せるのか。
- ナンディ=ンダイトワ大統領の外交ビジョンが、中国との協力枠組みにどう反映されるのか。
アフリカと中国の関係は、世界経済の重心が多極化する中でますます重要性を増しています。ナミビアという一つのケースを通じて、そのダイナミクスを継続的に追いかけていくことは、国際情勢を読み解くうえでのヒントにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








