中国とオランダの女性研究者:科学のジェンダーギャップを埋める挑戦
世界の女性研究者の割合が4割を超える一方で、その成果は必ずしも正当に評価されていません。中国とオランダの研究現場から、ジェンダーギャップを埋めるヒントが見えてきました。
世界で41%に増えた女性研究者
国際的な学術情報企業エルゼビアがまとめた報告書『Gender Equality in Research and Innovation 2024』によると、世界の研究者に占める女性の割合は、2001年の28%から2022年には41%へと大きく伸びました。とくに保健・医療などヘルスサイエンス分野では、女性研究者の存在感が一段と高まっているとされています。
北京で開かれた中国・オランダ共同セミナー
こうした数字は、最近北京で開かれた「女性と科学」をテーマにしたセミナーで紹介されました。セミナーは、中国科学技術部と在中国オランダ王国大使館が共同で開催し、1995年に北京で開かれた第4回世界女性会議から30年という節目を記念する位置づけでした。
目的は、より多くの女性が科学研究のキャリアに進み、活躍できるよう後押しすることです。基調講演やパネルディスカッションを通じて、中国とオランダ双方の女性科学者の経験や課題が共有されました。
評価の枠組みが見落としてきたもの
一方で、報告書やセミナーでは、研究者評価の「ものさし」が、女性の貢献を十分にすくい取れていない現状も指摘されました。論文数や被引用数といった従来の指標だけでは、チームワーク、社会への影響、教育や若手育成など、女性研究者が担っている多様な役割が見えにくくなりがちです。
こうした過小評価は、昇進や研究費配分にも影響し、ジェンダー不平等を再生産してしまう恐れがあります。セミナー参加者からは、評価指標の見直しや、多様なキャリアパスを認める制度づくりの重要性が共有されました。
中国とオランダが共有する課題意識
在中国オランダ王国大使館で公使兼次席公使を務めるロデリック・ウォルス氏は、あいさつの中で「オランダも中国も、この課題を認識しており、科学分野のジェンダー平等を促進することにコミットしている」と強調しました。
会場では、両国の共同研究プロジェクトで活躍する女性科学者の成果も紹介されました。中国とオランダの科学協力は長い歴史を持ち、今回のセミナーでも次のようなテーマが取り上げられました。
- 中国科学院とオランダ科学研究機構による、糖尿病治療に向けた成人膵臓幹細胞の再生医療研究
- 次世代のエネルギー転換を支える、高度な電池技術の共同開発
いずれも社会的なインパクトが大きいテーマであり、その最前線に女性研究者が立っていることが強調されました。
「彼女に何をすべきか教えない」メッセージ
セミナーの締めくくりには、女性科学者たちによるパネルディスカッションが行われました。話題は、女性であることの強みや、研究と家庭生活の両立、ロールモデルの重要性など、多岐にわたりました。
中国農業科学院農業環境持続発展研究所の李紅楠(リー・ホンナン)教授は、若い世代へのメッセージとして次のように語りました。
彼女に「何をすべきか」を選ばせようとしてはいけません。彼女が「何が好きか」を選べるようにしてあげてください。
この一言には、進路の選択肢を狭めるのではなく、好きなことに挑戦できる環境こそが才能を引き出す、という思いが込められています。
ジェンダーギャップを埋めるために何ができるか
今回の中国・オランダの取り組みは、数字の上で女性研究者が増えるだけでは不十分であり、「評価」「職場環境」「キャリア支援」を含めた総合的な変革が必要だというメッセージを発信しています。
研究機関や大学、企業、そして個人レベルでも、次のような視点が問われています。
- 評価指標を見直し、多様な貢献を正当に評価できているか
- ライフイベントと研究キャリアの両立を支える制度があるか
- 少女や学生が科学への興味を伸ばせるロールモデルや機会を提供できているか
北京でのセミナーで共有された経験や知見は、科学分野のジェンダーギャップを埋めたいと考える世界中の関係者にとって、参考になる事例と言えそうです。
Reference(s):
Sino-Dutch women in science: Bridging gender gap in research
cgtn.com








