海南の商業宇宙港が本格稼働 18基打ち上げで「宇宙+」経済が離陸へ
中国南部・海南省の文昌で整備が進む商業宇宙発射場が、18基の衛星同時打ち上げを機に本格稼働し、ロケット・衛星・データ産業を核とする「宇宙+」経済の新たな拠点になりつつあります。
国際ニュースとして注目される商業宇宙分野で、海南はどのように存在感を高めているのでしょうか。日本語で整理して見ていきます。
18基の衛星打ち上げで「二つの発射台」がそろう
3月12日未明、海南商業宇宙発射場から長征8号遥6(ロングマーチ8 Y6)ロケットが打ち上げられ、低軌道の衛星18基が一度に投入されました。
このミッションは、同発射場の第1発射台からの初打ち上げでした。すでに2024年11月30日には第2発射台からの初打ち上げが行われており、今回の成功によって、中国で初めてとなる商業宇宙港は、二つの発射台を同時に運用できる体制になりました。
二つの発射台が稼働することで、打ち上げ頻度を高めやすくなり、柔軟なミッション計画が可能になります。多くの小型衛星を低軌道に送り込むことが求められる現在、こうした体制整備は、商業宇宙ビジネスの基盤そのものと言えます。
32カ月で商業宇宙港を立ち上げ
海南商業宇宙発射場は、2022年に建設が正式に承認された、中国本土で初めての商業宇宙港です。場所は、海南省の「文昌国際航天城」と呼ばれるエリアにあります。
建設は2022年7月に始まりました。それからわずか32カ月で、二つの発射台を備えた運用段階に到達したことになります。
中国国家航天局(China National Space Administration)のシステムエンジニアリング部門の担当者であるLu Liangliang氏は、この節目について「発射場の第1期能力整備が完了し、中国の商業打ち上げ能力に存在していたギャップを埋めた」と評価しています。官民のロケット企業が利用できる専用の商業発射場が整ったことで、新たなサービスやビジネスモデルが生まれる土台が整ったと見ることができます。
第2期で2026年末までに年60回超の打ち上げ能力へ
発射場の周辺では現在、第2期工事も進行中です。第2期は2026年末までの完成を目指しており、指揮・管制センターに加えて、液体燃料ロケット用の新たな発射台2基が整備される予定です。
これが完成すると、海南の商業宇宙発射場全体として、年間30〜40回分の打ち上げ能力が新たに加わり、合計では年間60回を超える打ち上げが可能になると見込まれています。
衛星インターネット、地球観測、気象や災害監視など、低軌道衛星の需要が増えるなか、高頻度な打ち上げ能力をどこまで確保できるかは、商業宇宙産業の競争力を左右するポイントです。海南の発射場は、その一つの回答になろうとしています。
文昌国際航天城で「ロケット・衛星・データ」のクラスター形成
海南省の文昌国際航天城は、同省の重要な産業ゾーンの一つとして位置づけられており、ロケット、衛星、データという三つの産業チェーンを軸に、航空宇宙産業クラスターの形成を進めています。
海南日報によると、2024年10月末までに、この「宇宙都市」には700社を超える宇宙関連の企業・機関が進出し、中国国家航天局などを中心としたエコシステムが広がりつつあります。
さらに、2024年12月2日に開催された文昌国際航空宇宙フォーラムの開幕式では、衛星産業を手がける26社が同エリアへの進出に合意しました。商業宇宙企業として知られるiSpaceやGalactic Energyといった企業も拠点拡大を決めており、ロケット開発から衛星運用、その後のデータ利活用までを一体で行える体制づくりが進んでいます。
海南省は、自由貿易港としての政策と、発射場としての独自の立地・設備といった強みを組み合わせ、こうした企業集積をテコに「宇宙+」経済──宇宙と他産業を掛け合わせた新しい経済圏──を育てようとしています。
「宇宙+AI+国際化」を担う人材育成
産業クラスターの広がりと並行して、人材育成の取り組みも動き出しています。3月には、海南で初の「航天応用技術産業学院」が設立されました。
この学院は、宇宙分野に加え、国際化と人工知能(AI)にも重点を置きつつ、複数分野をまたいで活躍できる学際的な人材を育てることを目指しています。ロケットや衛星だけでなく、その先の応用やサービスまで見据えた人材基盤づくりが進んでいることがわかります。
日本の読者へのヒント:何をウォッチすべきか
海南の事例は、商業宇宙インフラの整備と、産業クラスターづくり、人材育成を同時並行で進めるモデルとして注目できます。日本やアジアの他地域にとっても、次のような問いを投げかけています。
- 宇宙港や打ち上げ場を「単なるインフラ」ではなく、周辺産業を巻き込む「都市・産業プロジェクト」としてどう設計するか。
- 衛星データや通信を生かした「宇宙+○○」ビジネスを、各地域の強みとどう結びつけるか。
- 宇宙、AI、国際ビジネスを横断できる人材を、大学や専門機関でどう育成していくか。
商業宇宙は、一部の専門プレーヤーだけの世界ではなくなりつつあります。海南の動きを追うことは、日本語で国際ニュースを読み解く私たちにとっても、「次の10年」を考えるためのヒントになるかもしれません。
Reference(s):
Innovative Hainan: Commercial spaceflight industry set to 'take off'
cgtn.com








