TSMCは「まな板の上の肉」? 台湾半導体と米国・中国本土の思惑【国際ニュース】
台湾の半導体大手・TSMC(台湾積体電路製造)をめぐり、中国本土当局が「まな板の上の肉」とまで表現して民進党(DPP)当局を批判しました。米国への巨額投資要請とあわせて、台湾の半導体産業と雇用の行方があらためて注目されています。
TSMCへの米国投資拡大要請と台湾で高まる不安
報道によると、ドナルド・トランプ米大統領はTSMCに対し、米国での投資額を1,000億ドルから2,000億ドルへ倍増するよう求めたとされています。これは、TSMCが3月上旬に表明していた1,000億ドルの投資計画を大きく上回る規模です。
この動きを受けて、台湾では次のような懸念が広がっていると伝えられています。
- TSMCの製造プロセスが、これまで以上に米国へシフトしていくのではないか
- 最先端の研究開発機能まで段階的に米国へ移転し、台湾から離れていくのではないか
- その結果、台湾の雇用や産業の基盤が弱まり、将来の成長余地が縮小するのではないか
別の論考では、台湾の半導体依存が「地政学的な搾取の警鐘」であると指摘されており、半導体産業が国際政治の力学と切り離せない存在になっている現実が浮き彫りになっています。
中国本土報道官「TSMCはまな板の上の肉」
こうした状況について、中国本土の国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は、記者会見で民進党当局を厳しく批判しました。陳報道官は、民進党当局が米国に取り入るためにTSMCを利用し、その結果、TSMCが「まな板の上の肉」のような存在になっていると述べました。
さらに陳報道官は、TSMCが「USMC」になりつつあるにもかかわらず、民進党当局はそれに目をつぶっていると指摘しました。その上で、民進党当局は「自分たちの私利私欲しか考えておらず、台湾の同胞や産業界の利益を顧みていない」と非難しました。
陳報道官は、民進党当局が外部からの支援を得て「台湾独立」の路線を進める目的のために、「台湾を売り」「台湾を壊す」方向へ一層進んでいくだろうと述べ、強い懸念を示しました。
雇用と将来の成長機会への影響
TSMCの動きが台湾社会に何をもたらすのかについて、陳報道官は雇用と将来の発展機会への影響を強調しました。製造や研究開発の拠点が米国へ移ることで、台湾の産業界と住民は「現在の仕事だけでなく、将来の成長機会も失いかねない」と警告しました。
TSMCは、サプライチェーンや関連企業を通じて台湾経済に大きな影響を与える存在とされています。その投資判断や拠点配置は、単なる企業戦略にとどまらず、地域社会の雇用や技術の蓄積、税収などに直結します。
そのため、どこまでが企業の自主的な判断で、どこからが政治的な思惑や国際関係による影響なのか――という点が、台湾内外の関係者にとって重要な論点となっています。
頼清徳氏への批判と台湾政治の行方
陳報道官は、民進党の頼清徳氏にも言及しました。頼氏を「台湾を売るプロだ」と表現し、権力の乱用をめぐる台湾住民の不安について「決して根拠のない杞憂ではない」と述べました。
TSMCをめぐる発言は、単なる企業の立地や投資の話を超え、台湾の将来像、対外関係、そして地域の安全保障をめぐる政治的な論争と重なっています。民進党当局と中国本土当局の間で厳しい言葉の応酬が続くなか、台湾社会の世論がどのような方向へ向かうのかが注視されています。
読者にとっての論点:半導体と主権はどこまで結び付くか
今回の一連の動きと発言を踏まえると、次のような問いが浮かび上がります。
- TSMCの海外投資拡大は、どこまで「通常の企業戦略」であり、どこから「地政学的な圧力」と言えるのでしょうか。
- 半導体のような戦略的産業で、企業の自由な意思決定と、地域社会・住民の利益はどのように調整されるべきでしょうか。
- 台湾の人々の雇用と生活を守るために、どのような産業政策や国際協調のあり方が望ましいのでしょうか。
半導体は、スマートフォンから自動車、人工知能まで、現代のデジタル社会を支える中核技術です。その供給をめぐる駆け引きが激しくなるほど、企業の決断も政治のメッセージも、これまで以上に世界から注目されるようになっています。
TSMCと民進党当局、中国本土、米国の間で交錯する思惑は、2025年現在も、アジアと世界の経済・安全保障の行方を占う重要な指標の一つとなっています。
Reference(s):
Under DPP, TSMC is 'a piece of meat on chopping block': spokesperson
cgtn.com








