TCM CTで見る伝統医学と最新テクノロジーの融合 video poster
赤外線サーマルイメージングで、伝統中国医学の「陰陽」や「寒熱」を可視化する――中国南部・海南省で注目される医療テクノロジー「TCM CT」が、古くからの知恵と現代のデジタル技術をどのようにつなげようとしているのかを見ていきます。
TCM CTとは? 赤外線で「陰陽・寒熱」を見る
TCM CT(Traditional Chinese Medicine Computed Tomography)は、赤外線サーマルイメージング技術を使って、人体における「寒と熱」「陰と陽」「表と裏」「虚と実」といった伝統中国医学の状態を画像として捉えようとする新しい医療検査法です。
体表の温度分布を赤外線で読み取り、そのパターンを伝統中国医学の視点から分析することで、これまで問診や触診、経験に大きく依存してきた診断を、より客観的でデジタルな形に近づけようとしています。
開発者らは、こうした可視化により、診断と治療のプロセス全体を「客観的」「デジタル」「ビジュアル」にすることを目指しています。患者にとっても、自分の体の状態が色やパターンとして示されることで、説明を理解しやすくなる可能性があります。
「見える化」される伝統中国医学の世界観
伝統中国医学では、身体の状態を「陰陽」「寒熱」「表裏」「虚実」といった概念のバランスとしてとらえます。TCM CTは、その抽象的な世界観を、赤外線画像という具体的な形で示そうとする試みだと言えます。
例えば、ある部位の熱が強く現れれば「熱」の偏り、逆に冷えが目立てば「寒」の偏りとして読み解くことが考えられます。こうした情報を組み合わせることで、全身のバランスを一枚の画像として眺めることができます。
画像化されたデータには、次のような利点が期待されています。
- 客観性の向上:同じ画像を複数の医師が共有し、所見を比較しやすくなります。
- デジタル記録:時系列でデータを保存し、治療前後の変化を追いやすくなります。
- ビジュアルな説明:専門用語だけでなく、色や形で状態を示すことで、患者も直感的に理解しやすくなります。
もちろん、画像だけですべてが分かるわけではなく、問診や他の検査と組み合わせて使うことが前提ですが、「見える」という要素が加わることで、伝統中国医学の説明力が変わっていく可能性があります。
海南・博鰲楽城国際医療観光パイロットゾーンから伝わる現場
このTCM CTが紹介されているのが、中国南部・海南省の博鰲楽城国際医療観光パイロットゾーン(Boao Lecheng International Medical Tourism Pilot Zone)です。その名称が示すように、国際的な医療観光を視野に入れた医療エリアとして位置づけられている地域です。
国際メディアCGTNのZang Shijie氏は、現地を訪れてTCM CTについて取材し、この医療テクノロジーの背景や特徴を伝えています。現場の様子を通じて、伝統中国医学と先端技術の組み合わせが、どのように実際の検査として運用されているのかが紹介されています。
こうした取材を通じて、海南省から発信される医療関連の動きが、世界の視聴者や読者にも届きやすくなり、国際ニュースとしての存在感も高まっています。
古い知恵と新しい技術をどう生かすか
TCM CTは、「古いもの」と「新しいもの」を対立させるのではなく、組み合わせていくアプローチの一例です。伝統中国医学が長い時間をかけて培ってきた身体観や診断の枠組みを、赤外線サーマルイメージングという現代の技術で翻訳しようとしているとも言えます。
私たちの側から見ると、次のような問いが浮かび上がってきます。
- 数値や画像だけでは捉えきれない身体感覚を、どのようにテクノロジーと結びつけるのか。
- 伝統医学の概念をデジタルデータに変換したとき、その意味合いはどこまで保たれるのか。
- 国や地域の枠を超えて、医療の多様なアプローチをどのように共有し、学び合っていくのか。
海南省の一つの取り組みであるTCM CTは、こうした問いを具体的な形で投げかける存在でもあります。
これからの医療を考えるためのヒントとして
今回取り上げたTCM CTは、医療テクノロジーのニュースであると同時に、「自分の体をどう理解するか」という、より根本的なテーマにもつながっています。
日本から見ると、中国南部の一地域で行われている実験的な取り組みに見えるかもしれません。しかし、伝統医学とデジタル技術の融合という方向性は、国境を越えて共有されうるものです。
国際ニュースを日本語で追いかける私たちにとって、TCM CTは「遠い国の特殊な話」ではなく、これからの医療やヘルスケアのあり方を考えるヒントの一つとして受け止めることができるのではないでしょうか。
古くから受け継がれてきた知恵と、最新の医療テクノロジー。その両方に耳を傾けながら、自分の健康との向き合い方を改めて見つめ直すきっかけにしてみてもよさそうです。
Reference(s):
cgtn.com








