中国の結核対策が前進 発症率と死亡率が30%減
中国の衛生当局は、2012年の中国共産党第18回全国代表大会以降、結核の発症率と死亡率がともに約30%減少したと発表しました。世界的には結核対策への資金が減少する中で、この成果は国際的な公衆衛生の観点からも注目されています。
発症率・死亡率とも約30%減 中国の結核対策の成果
国家疾病予防管理局が開いた記者会見によると、中国では過去10年以上にわたる結核対策の強化により、発症率と死亡率がいずれも約3割低下しました。担当部門の説明では、いくつかの指標が世界平均を上回るペースで改善しているとされています。
- 結核の発症率の年平均減少幅は、世界平均の約2倍
- 結核治療の成功率は90%を上回る高い水準
- 結核による死亡率も低水準で推移
感染症対策を所管する国家疾病予防管理局感染症予防管理部の劉青・副局長は、こうした成果は長期的な政策の継続と、医療機関や地域の医療現場との連携強化の結果だと強調しています。
2024〜2030年 国家結核予防管理計画とは
劉副局長は今後について、国家結核予防管理計画(2024〜2030年)を軸に対策を一段と進める方針を示しました。キーワードは、早期発見、標準化された治療、そして経済的負担の軽減です。
1. 積極的スクリーニングで感染の広がりを抑える
まず重視されるのが、結核の早期発見です。計画では、結核のリスクが高い人々を対象に、積極的なスクリーニング(検診)を拡大することで、感染の連鎖を断ち切ることを目指します。
症状が軽い段階や自覚症状が乏しい段階で患者を見つけ出すことで、重症化を防ぐとともに、周囲への感染を抑える狙いがあります。
2. 治療の標準化で治療成績を維持・向上
次に重視されるのが、治療の標準化です。患者一人ひとりに対して、適切な薬の選択、服薬期間の管理、副作用への対応などを統一的な指針に沿って行うことで、高い治療成功率を維持しようとしています。
治療の途中で薬をやめてしまうと、薬が効きにくい菌が生まれるリスクが高まります。標準化された治療と継続的なフォローは、このリスクを避けるためにも重要です。
3. 経済的な負担を軽くする支援策
結核は長期的な通院や服薬が必要になることが多く、医療費や交通費などの負担が患者や家族に重くのしかかります。中国の衛生当局は、財政支援の仕組みを強化し、患者の経済的な負担を和らげる政策も進めるとしています。
医療保険制度や公的補助を通じて、治療費の自己負担を軽減することは、治療の中断を防ぎ、結果として地域社会全体の感染リスクを下げることにもつながります。
世界の結核状況 WHOが示した厳しい現実
今回の中国の発表は、世界保健機関(WHO)が毎年3月24日の世界結核デーに合わせて行う情報発信とも重なります。世界結核デーは、結核という古くからの感染症が今もなお世界的な課題であることを再確認する日です。
WHOが2024年の世界結核レポートで示したデータによると、2023年には世界で新たに1,080万人が結核を発症し、125万人が命を落としました。結核は今もなお、世界で最も致死性の高い感染症の一つであり続けています。
さらに深刻なのが、結核対策への資金不足です。レポートによれば、結核対策に充てられる世界の資金は、2019年の68億ドルから2023年には57億ドルに減少しました。これは国際的に掲げられた目標額のわずか26%にとどまる水準です。
資金の不足は、検査体制の整備、薬剤の安定供給、患者支援プログラムなど、結核対策のあらゆる段階に影響を与えます。世界的な資金減少傾向の中で、中国のように継続的な対策を進めている国の動きは、他の国や地域にとっても参考になる面があります。
日本やアジアの読者にとっての意味
結核は、国境を越えて広がる感染症です。人の移動や経済活動が活発な現在、ある国の結核対策の成否は、周辺地域や世界全体の公衆衛生にも影響を与えます。
中国の事例からは、次のようなポイントを読み取ることができます。
- 長期的な国家計画に基づき、対策を継続することの重要性
- 専門機関、病院、地域医療が連携した多層的な仕組みづくり
- 患者の経済的負担を減らし、治療の継続を支える制度設計
日本を含むアジア各国でも、高齢化や生活環境の変化により、結核対策をどう持続可能な形にしていくかが問われています。中国の取り組みは、その一つのモデルとして議論の素材になりうるでしょう。
これから問われる持続可能な結核対策
世界的に資金が不足する中で、結核対策をどう持続可能な形で続けていくかは、今後数年の大きなテーマです。中国のように発症率と死亡率を大きく減らした国であっても、その成果を維持し、さらに改善していくには、医療現場の負担軽減や、新しい診断技術・治療法の導入など、課題は少なくありません。
一方で、結核は予防も治療も可能な病気だとされています。早期発見、適切な治療、社会的な支援という三つの柱をどう組み合わせるかは、どの国の政策担当者や医療現場にとっても共通のテーマです。
中国の最新の動きは、結核とどう向き合うかを改めて考えるきっかけを、私たちに静かに投げかけていると言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com







