中国・仏山発「シルクファーザー」 ガンビアード広東ガーゼを未来へ video poster
中国南部・広東省の都市、仏山。カンフーの聖地として知られるこの街で、何百年も続く「ガンビアード広東ガーゼ」という絹織物が、静かに新しい命を吹き込まれています。伝統工芸はなぜいま注目され、どのように現代のアートやファッションと結びついているのでしょうか。
カンフーだけじゃない、仏山のもう一つの顔
仏山は、中国の武術やカンフー映画のイメージと強く結びついた都市です。しかし、街を歩いてみると、もう一つの長い歴史を持つ文化が息づいています。それが、広東地方で育まれてきたガンビアード広東ガーゼの文化です。
この絹織物は、武術のように派手な動きはありませんが、手仕事の積み重ねと時間の深みが織り込まれた、静かな「強さ」を宿しています。
ガンビアード広東ガーゼとは何か
ガンビアード広東ガーゼは、広東で生まれた伝統的な絹の布です。薄く軽やかなガーゼ生地でありながら、独特の質感と深みのある表情を持つことで知られています。
長い年月をかけて受け継がれてきた技法によって、一枚一枚の布には微妙な色合いや風合いの違いが生まれます。その「揺らぎ」こそが、この布の魅力であり、地域の文化遺産として大切にされてきた理由でもあります。
「一本の糸にも値段がつく時代」に何を守るか
いまの世界では、あらゆるものに値段がつき、早く・安く・大量に作ることが求められがちです。「一本の糸にも値段がつく」時代に、時間と手間を惜しまない布づくりは、効率の論理とは真逆の存在に見えるかもしれません。
それでも、ガンビアード広東ガーゼが特別視されるのには理由があります。例えば、次のような価値が挙げられます。
- 何百年も続く歴史が織り込まれていること
- 手作業による工程が多く、一点ごとに個性があること
- 地域の記憶や物語と結びついた「語る布」であること
布そのものの価格だけでなく、その背後にある時間や経験、土地の記憶まで含めて価値を考えようとする動きが、2020年代の今、世界各地で広がりつつあります。
伝統工芸から現代アートへ
ガンビアード広東ガーゼは、かつては日常の衣服として使われることが多かったとされています。現在は、その独特の質感を生かして、現代のファッションやインテリア、アート作品に取り入れられるようになってきました。
若いデザイナーやクリエイターたちは、この布を単なる「昔ながらの素材」としてではなく、表現のためのメディアとして捉えています。伝統的な布地が、アートピースや舞台衣装、インスタレーションなどの形に姿を変え、新しい物語をまとっていくのです。
こうしてガンビアード広東ガーゼは、伝統工芸でありながら、現代アートの現場でも存在感を増しています。
「シルクファーザー」と受け継ぎ手たち
タイトルにある「シルクファーザー」という言葉は、長年にわたってこの布を守り、育ててきた職人たちを象徴的に表す呼び名です。彼らは、技術だけでなく、「なぜこの布を残すのか」という哲学そのものを次の世代に手渡そうとしています。
若い世代にとって、伝統工芸は時に遠い存在に感じられます。それでも、熟練の職人から直接手ほどきを受け、糸に触れ、布が生まれる過程を体験することで、「自分もこの物語の一部になれる」という実感が生まれます。
シルクファーザーのような存在と、新しい感性を持つ受け継ぎ手たち。その協働こそが、ガンビアード広東ガーゼを「過去の遺産」ではなく「生きた文化」として未来へつなぐ力になっています。
ガンビアード・シルクが問いかけるもの
今回紹介したガンビアード広東ガーゼの物語は、一つの地域の特別な布についての話であると同時に、「私たちは何に価値を見いだすのか」という問いでもあります。
大量生産の服を選ぶことも、伝統の布を選ぶことも、どちらが「正しい」という単純な話ではありません。ただ、自分が身につけるものや生活の中に取り入れるものに、どんな物語が織り込まれているのかを想像してみることには、確かな意味があります。
仏山のガンビアード広東ガーゼは、遺産・シルク・レガシーが一つの布のなかで結び合わさった存在です。この静かな布の物語は、2025年を生きる私たちに、スピードだけでは測れない豊かさのあり方をそっと教えてくれているのかもしれません。
Reference(s):
The Silkfather: Preserving Guangdong's gambiered silk legacy
cgtn.com








