中国の産後ケア産業はいま:坐月子が変える母と家族のかたち video poster
中国で急成長する母子ケア・産後ケア産業が、出産後の暮らしや家族関係を大きく変えつつあります。自然に囲まれた民営の産後ケアセンターで第二子の産後を過ごしたカオ・ミンルイさん(Cao Minrui)の体験から、その姿を見ていきます。
自然に囲まれた産後ケアセンターで過ごす日々
第二子を出産した直後、カオさんは公園の中にある私営の産後ケアセンターに入所しました。周囲は緑に囲まれ、静かな環境です。そこで新生児は、専門の産科看護師やナニーに見守られ、カオさん自身はしっかりと休息を取ることができました。
休むだけではありません。母乳の出をよくするために、一日に六回、栄養バランスを考えた食事が提供されます。さらに、心理カウンセリング、読書会、専門家の指導による産後の回復エクササイズ、美容トリートメントまで用意されていました。伝統的な「産後の床上げ」を、現代的かつ包括的なケアに置き換えたような空間です。
伝統的な「坐月子」がアップデートされる
中国本土では、出産後の一定期間を安静に過ごす伝統的な習慣は「坐月子(zuoyuezi、ズオユエズ)」と呼ばれます。かつては30〜60日間、外出を控え、食事や行動にも厳しい制約が課されることが一般的でした。
しかし現代の中国本土では、この「坐月子」が大きく変化しています。科学的な根拠に基づいた産後ケアを取り入れ、母親の身体だけでなく、心の回復も重視する方向にシフトしているのです。カオさんが利用したセンターも、まさにその流れを象徴しています。
カオさんが初めて出産したのは8年前。同じケアセンターで産後を過ごしましたが、当時は何もかも手探りでした。赤ちゃんがミルクを吐いたり、のどに詰まらせたりしたときにどう対処すればよいのか分からず、授乳による出血にも悩まされていたと振り返ります。
センターでの滞在を通じて、カオさんは新生児の沐浴やベビーマッサージ、回復を早めるためのセルフケアなど、基本的な育児スキルを体系的に学びました。第二子の出産時には、こうした知識と経験が大きな支えになっています。
義母のケアから、専門施設と「月嫂」へ
中国経済の成長と人々の消費意識の変化に伴い、より科学的な産後ケアを求める声が強まっています。かつて「坐月子」の期間は、主に義母が中心となって面倒を見ることが多く、価値観の違いから家族内の摩擦が生まれることもありました。
今では、多くの新米ママが次のような選択肢から、自分に合った産後ケアを選ぶようになっています。
- 家族、とくに義母が中心となる従来型の家庭内ケア
- 数週間から1〜2カ月間滞在できる専門の産後ケアセンター
- 自宅に来てもらう産後専門のナニー「月嫂(yuesao)」による個別ケア
こうした選択肢の広がりは、母親自身が自分の回復や育児スタイルを主体的に決めることにつながっています。同時に、家族の役割分担や、出産・育児をどう支えるかという社会全体のあり方にも影響を与えています。
データが示す、産後ケアへの高いニーズ
調査会社iiMedia Researchが2022年に行った調査によると、回答者の93.5%が「産後の坐月子は必要だ」と考えており、そのうち65.8%が専門の産後ケアセンターを利用したいと答えています。
この数字からは、産後ケアを「ある人だけの特別なサービス」ではなく、多くの人にとって必要なケアとして捉える意識が広がっている様子が読み取れます。急成長する母子ケア産業は、こうしたニーズに支えられていると言えそうです。
日本の読者への問いかけ:産後ケアをどうデザインするか
中国本土で進む産後ケアの多様化は、「産後のケアを誰が、どのように担うのか」という問いを投げかけています。家族だけに頼るのか、専門職の力を借りるのか、その組み合わせをどう選ぶのか――その答えは一つではありません。
ただ、出産直後の母親と新生児をどう支えるかは、どの社会にとっても避けて通れないテーマです。産後ケアセンターや月嫂の存在は、中国本土の母子ケア産業の成長を示すと同時に、私たち一人ひとりが「ケアのあり方」を考え直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








