渡り鳥の楽園・条子泥湿地 保全と共存が生む成長モデル
渡り鳥の楽園・条子泥湿地とは何か
中国東部・江蘇省東台市の沿岸に広がる条子泥湿地は、黄(渤)海沿岸の渡り鳥生息地の中核であり、世界遺産にも登録された国際的な重要湿地です。ここは東アジア・オーストラリア地域を結ぶ渡り鳥の主要な通り道に位置し、国際ニュースとしてもたびたび取り上げられています。
夜明け前、干潟の上空を tens of thousands of migratory birds が一斉に飛び立ち、朝もやの中に翼のうねりを描きます。spoon-billed sandpipers や Nordmann's greenshanks、Saunders's gulls など、多様な渡り鳥が干潟に繊細な足跡を残しながら採餌する光景は、一見静かな湿地を、生命あふれる大舞台へと変えます。
埋め立てより「保全」を選んだ沿岸都市
沿岸部の湿地は、多くの国や地域で大規模な干拓や埋め立ての対象となりがちです。短期的には土地の利用価値や経済的な利益が見込める一方で、生物多様性の喪失や災害リスクの増大といった代償も抱えています。
条子泥湿地では、こうした短期的な利益を優先する道ではなく、生態系の保全を重視する選択がなされました。地元当局は大規模な埋め立て計画を抑え、湿地そのものを守る方針を打ち出しました。その結果、渡り鳥にとって欠かせない中継地が守られ、絶滅の危機にある種を含む多くの鳥類が安心して羽を休めることができています。
保全が生む新しい経済―エコツーリズムと研究拠点
興味深いのは、こうした生態保全の取り組みが、経済発展とも両立している点です。条子泥湿地は今、エコツーリズムの拠点、生物多様性の研究センター、人と自然の共生を象徴する場として発展しています。
エコツーリズムでは、渡り鳥の観察や干潟のガイドツアーなど、自然の価値を学びながら楽しむ形の観光が広がりつつあります。大量の観光客を一度に呼び込むのではなく、自然への負荷を抑えながら地域経済に利益をもたらす仕組みづくりが進んでいます。
また、北京林業大学の研究者らが関わる東アジア・オーストラリア渡り鳥フライウェイ研究センターなど、研究機関の活動も活発です。渡り鳥の移動ルートや個体数の変化を長期的に追跡することで、気候変動や沿岸環境の変化が生態系に与える影響を明らかにしようとしています。
「渡り鳥の目線」で見る持続可能な発展
条子泥湿地のストーリーは、単に一つの湿地の成功例というだけでなく、持続可能な発展を考えるうえでのヒントを与えてくれます。渡り鳥の視点から見れば、国境や行政区分を越えて連なる湿地や沿岸域は、一つながりの生命のネットワークです。
- 短期的な開発利益ではなく、長期的な生態系サービスの価値を評価すること
- 自然保護と地域経済を対立させるのではなく、エコツーリズムや研究などで両立させる道を探ること
- 科学的なモニタリングと地域コミュニティの参加を組み合わせ、継続的に保全の質を高めていくこと
条子泥湿地は、こうした要素が一体となることで、渡り鳥の楽園でありながら、地域の未来を支える基盤ともなり得ることを示しています。
日本やアジアへの示唆
日本を含むアジアの多くの沿岸都市でも、気候変動への適応や生物多様性の保全、そして地域経済の活性化をどう両立させるかが共通の課題となっています。干潟や湿地は、高潮や洪水の緩衝帯として機能し、炭素を蓄える場ともなりうる重要な自然資本です。
条子泥湿地の経験は、開発か保全かという二者択一ではなく、自然を活かしながら地域の豊かさを高める第三の道があり得ることを示しています。国境を越えて渡る鳥たちが教えてくれるのは、私たちの選択が、遠く離れた地域の生態系や人々の暮らしともつながっているという現実です。
国際鳥類デーに考える、私たちの関わり方
国際鳥類デーに合わせて紹介された条子泥湿地の物語は、自然保護を遠いどこかの話ではなく、私たち自身の暮らしと地続きのテーマとして捉え直すきっかけを与えてくれます。
日々のニュースやSNSのタイムラインの向こう側で、今この瞬間も渡り鳥たちは大陸と大陸の間を行き来しています。その旅路を支える湿地をどう守り、生かしていくのか。条子泥湿地の選択は、これからの時代の一つのコード(行動原則)として、多くの都市や地域に問いを投げかけています。
Reference(s):
Tiaozini Wetlands: The symbiotic code of a migratory bird paradise
cgtn.com








