LEDで光る獅子舞 中国・広東の若き継承者が伝統に新風
中国南部の広東省湛江出身の獅子舞アーティスト、李祖杰(Li Zujie)さんが、LEDを使った光る獅子舞で伝統芸能に新しい命を吹き込んでいます。夜の舞台でも鮮やかに輝くこの獅子は、現在、世界各地の観客や関係者の注目を集めています。
四代続く家業としての獅子舞
李祖杰さんは、家族に受け継がれてきた獅子舞の四代目の継承者です。幼い頃から獅子舞が身近にあり、「獅子舞は自分の血の中に流れている」と感じてきたといいます。そのため、この伝統を次の世代につなぐことを自分の責任だと考え、日々舞台に立ち続けてきました。
Suixi獅子舞と夜の「見えにくさ」という課題
李さんの原点にあるのは、広東の獅子舞文化の中でも重要な位置を占めるSuixi(スイシー)獅子舞です。力強く華やかな演技が持ち味ですが、屋外の夜間公演では「観客から獅子が見えにくい」という課題がありました。
獅子の表情や細かな動きが暗闇に溶けてしまうと、せっかくの技も十分に伝わりません。李さんはこの「視認性」の問題をどう解決できるかを、長く考え続けてきました。
光る太鼓から生まれた「光る獅子」の発想
転機となったのは、他のチームが使う「光る太鼓」でした。暗闇の中で、ドラムだけが鮮やかに光り、観客の目を引いていたのです。それを見た李さんは、伝統の獅子舞にも現代の技術を取り入れられないかとひらめきました。
そこで挑戦したのが、獅子の衣装そのものにLEDライトを組み込むことでした。何度も試作と改良を重ねた末に生まれたのが、発光する獅子衣装「Glow-in-the-Dark Lion」です。舞台上で獅子が動くたびに光が流れるように変化し、従来の獅子舞とは一味違う視覚的なインパクトを生み出しています。
この光る獅子は、伝統的なフォルムや動きの魅力を残しつつ、観客にとって分かりやすく、写真や動画にも映える新しい表現として広く注目されるようになりました。
初演のトラブルからプログラミング習得へ
もちろん、ここまでの道のりは順風満帆ではありませんでした。光る獅子が初めて登場したステージでは、技術的なトラブルも起きました。ライトの点灯が安定しなかったり、思い通りのタイミングで光が切り替わらなかったりと、実践の場で課題が次々に浮かび上がったのです。
それでも李さんはあきらめませんでした。問題を他人任せにせず、自らプログラミングの勉強を始め、制御システムの改善に取り組みました。伝統芸能の継承者が、同時にコードを書くクリエイターにもなるというのは、まさに現代ならではの姿だと言えます。
試行錯誤の末、現在では光の色や点滅のリズムを細かく調整できるようになり、演技の展開に合わせた演出が可能になりました。獅子の動きと光の演出が一体となり、舞台全体の臨場感を高めています。
伝統の魅力を守りながら、観客層を広げる
最新の技術を取り入れても、李さんが大切にしているのは、あくまで「伝統の核」を守ることです。獅子の顔立ちや体のバランス、基本となる型やステップなど、代々受け継がれてきた要素はそのままにしながら、光の演出で魅力を引き出すアプローチをとっています。
その結果、光る獅子舞は、これまで獅子舞に触れる機会が少なかった若い世代や海外の観客にも受け入れられるようになりました。SNS映えするビジュアルは、動画や写真として共有されやすく、伝統芸能への入り口としても機能しています。
世界で売れ始めた獅子舞道具というインパクト
李さんが手がける光る獅子舞の道具は、現在、多くの国々で快調に売れ始めています。単なる舞台演出用の小道具にとどまらず、各地のチームが自分たちの演目に取り入れることで、地域ごとに個性ある獅子舞が生まれつつあります。
そこには次のような変化の兆しを見ることができます。
- 伝統芸能が、技術革新を通じて新たな表現の場を獲得している
- 一人の継承者の工夫が、国や地域を越えて共有されつつある
- 「見やすさ」や「楽しさ」を高める工夫が、継承と普及の両方に役立っている
私たちへの問いかけ 日本やアジアの伝統もどう変わるか
李祖杰さんの「光る獅子」は、単なるアイデア商品ではなく、伝統とテクノロジーが共存できることを示す象徴的な例だと言えます。夜間の視認性という現場の課題から出発し、試作と学習を重ね、世界の観客に届く形にまで磨き上げたプロセスには、多くの学びがあります。
日本を含むアジア各地でも、祭りや伝統芸能をいかに若い世代や海外の人びとに届けるかが課題になっています。李さんの試みは、「何を守り、どこを変えるのか」「どのように新しい技術を取り入れるのか」という問いを、静かに投げかけているように見えます。
デジタル技術と伝統文化の交差点で、新しい表現を模索する動きは今後も広がっていくでしょう。その先頭を走る一人として、李祖杰さんの挑戦は、これからも注目すべき動きのひとつと言えます。
Reference(s):
cgtn.com








