中国・合肥のエコ葬「AIが愛を伝える」自然に還す新しい別れのかたち video poster
2025年3月23日、中国安徽省合肥市のDashushan Cultural Memorial Parkで、春季エコ葬儀式が行われました。テーマは「AIが愛を伝え、春が自然へと還る」。70人の故人が環境に配慮した方法で大地へと戻され、そのうち13人は遺体提供を行った人びとでした。
合肥で開かれた春季エコ葬とは
今回のエコ葬は、Dashushan Cultural Memorial Parkが主催した2025年春の追悼行事です。70人の故人の遺骨や遺体が、自然の循環を尊重したかたちで埋葬されました。従来型の大きな墓石や広い区画を必要とする墓地ではなく、環境への負荷を抑えながら静かに見送るスタイルが特徴です。
エコ葬では、遺骨や遺体を土や樹木、芝生など自然環境の一部として受け入れ、時間をかけて大地へと還していく考え方が重視されます。今回の式典も、「自然と共生する弔い」というメッセージを前面に出した取り組みといえます。
テーマ「AIが愛を伝え、春が自然へと還る」が示すメッセージ
式典のテーマは「AIが愛を伝え、春が自然へと還る」。英語ではAI Transmits Love, Spring Returns to Natureと掲げられました。先端技術の象徴であるAIと、春や自然といった有機的なイメージが一つのフレーズのなかで結びついている点が印象的です。
実際の式典でどのようにAIが活用されたのか、公開されている情報は限られていますが、次のようなイメージが想起されます。
- 生前の写真や動画、メッセージをデジタルで整理し、遺族がいつでも振り返れるようにする
- AI技術を使い、故人の声や言葉を記録・再構成し、記憶を伝える新しい「アーカイブ」として活用する
- オンライン追悼ページなどを通じて、遠方にいる家族や友人も自然とつながる場を持てるようにする
デジタル技術によって「記憶」や「言葉」が受け継がれ、埋葬そのものは自然に寄り添う形で行われる。そんな二つのレイヤーが、このテーマには重ねられているように感じられます。
エコ葬が注目される背景
合肥でのエコ葬は、単独の特別な試みというより、広く世界で進んでいる「環境配慮型の弔い」の流れの一つと見ることができます。背景には、次のような課題や価値観の変化があります。
- 墓地の土地不足と管理負担
都市部では墓地用地の確保が難しく、長期的な管理も家族にとって負担になりやすくなっています。 - 環境への配慮
資源消費やCO2排出を抑えたいという意識の高まりから、よりシンプルで環境負荷の少ない埋葬方法を選ぶ人が増えています。 - ライフスタイルの変化
「モノを持たない暮らし」や自然志向の価値観が広がるなか、最期のあり方もシンプルにしたいというニーズが高まっています。 - 家族構成の変化
単身世帯や子どものいない世帯が増えるなかで、後の世代に大きな墓を引き継がせることへのためらいも生じています。
こうした流れのなかで、「自然に還る弔い」が一つの選択肢として注目されているといえます。合肥での式典は、その動きを象徴的に示す事例の一つとなりました。
遺体提供者13人をたたえる意味
今回のエコ葬では、70人の故人のうち、13人が遺体提供者として特にたたえられました。遺体提供とは、一般に医療や教育、研究の発展のために、自らの体を提供することを指します。
生前の決意によって他者への貢献を選んだ人びとを、最期に自然へと還す儀式で共に見送ることには、大きな象徴性があります。
- 生前と死後の両方で社会に貢献するという姿勢を示している
- 医療・教育への貢献と、環境への配慮が一つの物語としてつながる
- 「自分の死を通じて誰かの役に立ちたい」という思いに社会が応える場になっている
数字としての「13人」ではなく、一人ひとりが持っていた人生の物語をどう受け止め、未来へ引き継いでいくのかが問われているともいえます。
日本の弔い文化との共通点と違い
日本でも近年、樹木葬や散骨など、自然志向の埋葬方法が広がりつつあります。合肥でのエコ葬のニュースは、日本の弔い文化を考えるうえでもいくつかの示唆を与えてくれます。
共通点
- 自然の中で静かに眠りたいという願い
- 子や孫に大きな墓守りの負担を残したくないという思い
- 「形」よりも「気持ち」や「記憶」を重視する価値観
違いとこれからの問い
- AIなどデジタル技術をどこまで弔いに取り入れるのか
- オンラインでの追悼や、デジタルな墓参りをどう位置づけるのか
- 自然への負荷を本当に抑えられているのか、仕組みをどう検証するのか
たとえば、AIを使って故人との対話を疑似的に再現するサービスや、デジタル空間上に墓地のような場を設ける取り組みなども、世界各地で試みられています。技術的には可能になりつつある一方で、「それは本当に自分の望む別れのかたちなのか」という問いも同時に浮かび上がります。
「自然に還る」弔いが投げかけるもの
今年3月の合肥でのエコ葬は、環境配慮やデジタル技術といったキーワードを通じて、私たちに次のような問いを投げかけています。
- 自分はどんな場所で、どのように見送られたいのか
- 残される人に、どのような負担や記憶を残したいのか
- 自然環境と調和しながら、故人をたたえる方法は何か
エコ葬は、単に「環境に優しい葬儀」というだけでなく、人生の最終章をどうデザインするかを考えるきっかけにもなります。合肥で行われた春季エコ葬は、その問いを具体的な姿として示した事例として、これからも注目されていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








