中国の月面探査展示、月の土でレンガ製造する未来計画を公開
中国の月面探査の歩みと未来計画を紹介する大規模な展示会が、北京で開幕しました。展示では、月の土を使ってレンガを作る新技術や、2026年・2028年に予定されている次世代探査計画が公開され、国際ニュースとしても注目を集めています。
北京の展示会で示された月面探査の現在地
今回の展示会は、中国国家博物館と中国国家航天局が共同で開催しており、中国の月面探査計画を包括的に振り返る内容になっています。月面探査計画は2004年に正式に承認されており、すでに20年以上の歴史を持ちます。
会場では、中国の嫦娥5号と嫦娥6号が採取した、月の「表側」と「裏側」それぞれの月面サンプルが、初めて同じ場で展示されています。月の両側から採取したサンプルが並ぶことで、月の環境や地質の違いをイメージしやすくなっており、研究者だけでなく一般の来場者にとっても貴重な機会となっています。
さらに、過去の探査で使われた機器の関連資料や、計画立ち上げ期からの写真・文書など、数百点におよぶ資料も公開されており、中国の月面探査のストーリーを一望できる構成です。展示会は開幕日からおよそ2か月間開催される予定です。
月の土でレンガづくり 水も接着剤も持ち込まない発想
今回の展示で特に目を引くのが、月の土(レゴリス)をその場で加工し、レンガを作る装置です。中国の月面探査計画の主任設計者であるWu Weiren氏によると、これは世界で初めて開発された「月面土壌レンガ製造機」で、現地資源を最大限に活用することを目指しています。
この装置は、太陽エネルギーを利用し、そのエネルギーを光ファイバーで伝送して月の土を加熱します。温度はおよそ1400〜1500度まで達し、月の土を完全に溶かすことができます。その溶融した素材を3Dプリンターのように成形し、さまざまなサイズのレンガを作る仕組みです。
重要なのは、この方法では地球から水や接着剤などを運ぶ必要がないという点です。Wu氏は「地球から水や追加の結合剤を運ばずにすみ、本当の意味で現地の資源をその場で利用できる」と説明しています。いわゆるイン・シチュ資源利用(現地資源を現地で活用する考え方)を、具体的な技術として示した例だといえます。
こうしたレンガ製造技術は、将来の国際月面研究ステーションの建設を支える基盤技術と位置づけられています。月面で建材を自給できるかどうかは、長期滞在や基地建設の実現性を左右する鍵の一つであり、今回の発表は宇宙開発全体にとっても意味のあるステップと見ることができます。
嫦娥7号・8号がめざす月の南極
展示会では、今後の月面探査計画についても詳しい説明が行われています。Wu氏によれば、次の主な計画は嫦娥7号と嫦娥8号で、それぞれ2026年と2028年の実施が予定されています。いずれも月の南極を探査対象としている点が特徴です。
- 嫦娥7号(2026年予定): 月の南極に着陸し、水が存在するかどうかを探ることが主な目的とされています。水は、将来の月面基地における飲料水や酸素、燃料の原料になり得るため、その有無や分布を調べることは非常に重要です。
- 嫦娥8号(2028年予定): 同じく月の南極付近で、通信システムやエネルギーインフラの整備を進める計画です。月面での継続的な活動を支える「通信」と「電力」の基盤づくりを目指しているとされており、レンガ製造技術などと組み合わせることで、将来の月面ステーション構想と密接に結びついていきます。
2025年の今の時点で、こうした計画が具体的な年次と目的を伴って示されていることは、月面探査が「遠い夢」から「段階的に進むプロジェクト」へと変わりつつあることを示していると言えるでしょう。
国際月面研究ステーションと広がる協力の可能性
展示会に合わせて、Wu氏は、国際月面研究ステーションの構想により多くの国や国際研究機関、国外の科学者が参加することを期待していると語っています。月面という共通のフィールドで、多様なプレーヤーが協力する姿を描いていると言えます。
国際月面研究ステーションは、月面での長期的な科学観測や技術実証の拠点として構想されており、今回披露されたレンガ製造機のような現地資源利用技術は、その実現に向けた重要なピースの一つです。
複数の国や地域が関わる月面探査は、単に技術力を競うだけでなく、データ共有や共同研究を通じて、リスクやコストを分担しながら成果を高めていく枠組みにもつながります。宇宙開発をめぐる動きはしばしば地上の政治と結びつけて語られますが、同時に、科学や技術を軸にした協力の場を広げる可能性も持っています。
私たちにとっての月面探査 日常とどうつながるか
月の土を溶かしてレンガを作る、というアイデアは、一見するとSF作品のようにも聞こえます。しかし、太陽エネルギーの活用、3Dプリント技術、現地資源利用といった要素は、すでに地上の産業や環境技術とも共通するテーマです。
例えば、限られた資源をどう循環させるか、エネルギーをどう安定的に確保するか、といった課題は、月面での基地建設と同じように、地球の私たちの社会にもそのまま当てはまります。月面探査のニュースを追うことは、遠い宇宙の話というより、「極限環境での持続可能性」を考えるヒントにもなり得ます。
北京の展示会は、こうした技術や構想を一度に俯瞰できる場として企画されています。もし今後、類似の展示やオンラインコンテンツが登場すれば、国境を越えて多くの人が月面探査のストーリーに触れる機会が増えていくでしょう。
2026年の嫦娥7号、2028年の嫦娥8号がどのような成果をもたらすのか。今回の展示で提示された「月の土でレンガを作る」というコンセプトは、その先にある国際月面研究ステーション構想とあわせて、これから数年の宇宙開発を考えるうえで、一つの象徴的なキーワードになっていきそうです。
Reference(s):
China unveils future lunar exploration plans at exhibition in Beijing
cgtn.com








