米国の新関税と中国テック:半導体と「開かれた自立」の行方
米国が中国製品への関税を一段と引き上げる動きを見せるなか、中国のテクノロジー産業はどのように進路を描いているのでしょうか。本記事では、米国の新たな関税方針と技術規制、それに対応する中国の半導体産業や研究投資の動きを整理します。
米国の新関税と技術規制のいま
米国のトランプ大統領は木曜日、いわゆる「相互関税」方針を発表し、貿易相手国ごとに異なる関税率を課すと表明しました。この枠組みの一環として、中国からの輸入品には34%の関税を課す計画が示されています。
今回のリストには、これまで米中間の摩擦の焦点だった半導体は含まれていません。ただし、半導体分野についてはすでに別の政策により、中国から輸入される半導体に対する米国の関税が2025年1月に50%へ引き上げられることが決まっています。
関税だけではありません。2018年以降、人工知能(AI)、量子計算、半導体、航空宇宙といった戦略分野で、2,000を超える中国の企業や研究機関が米国の「エンティティリスト」に追加されてきました。これにより、米国企業からの部品供給やソフトウェア提供が制限されるケースが増えています。
こうした新たな関税や規制の連鎖について、一部のエコノミストは、米国国内の産業構造を不安定にし、世界経済にも衝撃を与えかねないと警告しています。
数字で見る中国テックの底力
一連の貿易障壁にもかかわらず、中国のテクノロジー企業は、自前の技術体系とグローバルに広がるサプライチェーンを生かしながら、復元力を示しています。いくつかの数字を見ると、その輪郭がよりはっきりします。
2024年の半導体輸出は数量・金額とも拡大
中国税関総署の統計によると、2024年の中国の半導体(集積回路)輸出は2981億1000万個に達し、輸出額は1,595億ドルとなりました。金額ベースでは前年から18.7%の増加です。技術規制や関税の圧力の中でも、世界市場で一定の存在感を維持していることがうかがえます。
2,500超の海外倉庫が支える貿易インフラ
中国商務省によれば、2024年5月時点で、中国企業が設けた海外倉庫は世界各地で2,500拠点を超え、その総面積は3,000万平方メートル以上に達しています。越境電子商取引やグローバル物流の基盤として、こうしたネットワークが中国企業の輸出競争力を下支えしています。
基礎研究への投資が「競争力の源泉」に
中国科学技術部のデータでは、2024年における研究開発投資のうち、基礎研究が占める割合は8.3%に達しました。基礎研究とは、すぐに製品化につながらない長期的な科学研究を指しますが、半導体材料、量子技術、新しい計算方式など、次世代の中核技術を生み出す土台でもあります。
短期的な成果が見えにくい分野への投資を続けてきたことが、今後の技術的な優位性につながるとの見方も出ています。
「段階的自立」と「開かれたイノベーション」
米国の新たな関税や規制が続く可能性があるなかで、中国はどのように技術自立を進めるべきか――浙江省のシンクタンク、Zhejiang Institute of Industry and Information Technology は「段階的な技術自立」を提言しています。
半導体分野について同研究所は、最先端の微細化競争だけを追うのではなく、まずは比較的成熟した28ナノメートル世代のプロセスで、設計から製造、材料までを含む完全なサプライチェーンを自前で構築することを重視すべきだと指摘します。
特に、次のようなボトルネック分野への集中投資が重要だとしています。
- 半導体設計を支えるEDA(電子設計自動化)ツール
- フォトレジスト(感光材)などの半導体用材料
- 生産装置に必要な精密部品や制御ソフトウェア
そのうえで、チップレットと呼ばれる先端パッケージ技術を活用し、複数のチップを組み合わせて高性能な製品を実現するアプローチも重視すべきだとしています。これにより、必ずしも最先端の線幅でなくとも、システム全体としての競争力を確保できるといいます。
「自給自足の罠」を避けるには
同時に、この分析は「技術自立」を過度に追い求めることのリスクも指摘しています。特定の国や地域と技術面で極端に切り離された状態になれば、最新の技術動向や人材との接点を失い、結果としてイノベーションの速度が落ちてしまう恐れがあるからです。これがいわゆる「自給自足の罠」と呼ばれる状況です。
そのため報告書は、世界中の研究者や開発者の知的資源を引きつける「オープンソース型のイノベーション」を提案しています。オープンソースのソフトウェアやハードウェアのプラットフォームを整備し、国内外のプレーヤーが参加しやすい開かれた技術エコシステムをつくることが重要だという考え方です。
日本からこの動きをどう見るか
米国の関税強化と中国テック産業の対応は、日本のビジネスや生活とも無関係ではありません。スマートフォンやパソコンだけでなく、自動車や家電など、多くの製品の価格や供給にも影響しうるからです。
- 世界のサプライチェーン再編が、日本企業の調達コストや輸出戦略にどう響くか
- 中国発の半導体やデジタル技術が、アジア市場でどのようなポジションを築くか
- オープンソースを軸にした国際協力の場に、日本の企業や研究者がどう関与できるか
米中の対立や「デカップリング(分断)」という言葉だけで世界を見るのではなく、関税や規制の変化の中で、各国・各地域がどのように協調と競争のバランスを探っているのか。そのプロセスに注目することが、これからの国際ニュースを読み解く鍵になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








