清明節の中国観光、没入型「文化パッケージ」が主役に video poster
2025年の清明節シーズン、中国本土の観光市場では、没入型の文化観光パッケージと癒やし・リラックスをテーマにした旅行が国内観光の主役として注目を集めました。オンライン旅行サイトの最新データや各地の取り組みから、観光の「体験」がどのように進化しているのかを見ていきます。
清明節シーズン、中国本土の観光市場に新トレンド
中国本土では、先祖をしのぶ伝統行事である清明節の時期に短期連休となるため、毎年国内旅行の需要が高まります。今年の清明節を前に、オンライン旅行サイトの一つであるLY.comのデータによると、没入型の文化観光パッケージと、心身の回復を目的とした癒やし・リラックス系の旅行が、旅行者の主要な関心となりました。
これまでの「名所を巡るだけ」の観光から一歩進み、「物語の中に入り込む」「心を休める」といったテーマが重視されていることがうかがえます。
予約は前年比ほぼ倍増 ロールプレイ体験が人気
山東省の地元紙・済南日報の報道によると、没入型の文化観光パッケージの予約は前年比でほぼ倍増しました。なかでも人気を集めているのが、旅行者が物語の登場人物になりきるロールプレイ型の体験です。
山東省・戦争映画の「脚本ツアー」
東部の山東省では、戦争映画を題材にした脚本型のツアーが登場しています。参加者は事前に配られた脚本に沿って役割を演じ、歴史上の場面をモチーフにしたシナリオを体験します。
- 参加者はお気に入りの役柄を選び、対話や行動を通じて物語に関わる
- 現地のロケ地やセットを使い、映画のワンシーンに入ったような演出が行われる
- 複数日にわたるストーリー構成にすることで、滞在日数の延長にもつなげている
こうした企画は、観光客の滞在時間を伸ばすだけでなく、飲食や宿泊、土産など周辺消費の拡大にも寄与し、地域の文化観光産業の高度化を後押ししているとされています。
浙江・横店で「清明上河図」を実物大さながらに再現
東部の浙江省では、撮影基地として知られる横店影視城(Hengdian World Studios)が、伝統文化と没入型観光を組み合わせた取り組みを進めています。その代表例が、名画「清明上河図(Along the River during the Qingming Festival)」の世界を現代によみがえらせるプロジェクトです。
「清明上河図」は、清明節の頃の都のにぎわいを描いた巻物で、長さ5メートルを超えるとされる名高い絵巻です。横店影視城では、この絵巻に描かれた北宋の都・汴京(現在の開封付近)の街並みを、実際のセットと演者によって再現しています。
絵巻の「中に入る」街歩き
このプロジェクトは、今年で3年連続の実施となりました。清明節の始まりにあたる4月4日から5月5日までの期間中、数百人規模の俳優・女優が参加し、絵巻の世界を立体的に表現しました。
来場者が絵巻に登場する要所に足を踏み入れると、周囲では屋台の商人の呼び声が飛び交い、石畳を走る馬のひづめの音が響きます。視覚・聴覚を総動員する演出によって、古都の活気あふれる空気感が体感できるようになっています。
単なる「再現展示」ではなく、観光客が歩き、交わり、時には演者と対話しながら時間を過ごすことで、鑑賞と参加が一体となった没入型の文化体験になっている点が特徴です。
癒やし・リラックス系ツアーも台頭
同時に、癒やしやリラックスを前面に打ち出した旅行商品も、清明節の旅行市場で存在感を増したとされています。忙しい都市生活やデジタル疲れから距離を置き、
- 静かな環境でゆっくり過ごす
- 自然の中で散策や軽いアクティビティを楽しむ
- 温泉や養生、心身のケアに焦点を当てる
といった「回復」に焦点を当てた旅が、従来型の観光地巡りとは異なる選択肢として支持を集めています。
なぜ「没入型」と「癒やし」が求められるのか
今回の清明節シーズンの動きを眺めると、中国本土の旅行者のニーズが次のように変化していることが見えてきます。
- 観るだけでなく「参加する」ことで、旅行の満足度や記憶に残る度合いが高まる
- 歴史や文化を、物語や役になりきる体験を通じて理解したいというニーズが強まっている
- 忙しい日常から一時的に離れ、心と体を休める「回復の時間」として旅行を位置づける人が増えている
こうしたトレンドは、スマートフォンやSNSを日常的に使いこなす世代とも相性が良いと考えられます。ストーリー性のある体験や、写真・動画で共有しやすいシーンが多い旅は、オンライン上でも話題になりやすいからです。
これからの中国観光を読む視点
没入型の文化観光パッケージや癒やし・リラックスを重視したツアーの広がりは、中国本土の観光産業が「量」から「質」へと軸足を移しつつあることを示していると言えます。
- 脚本ベースのツアーによる滞在日数の延長
- 歴史絵巻の再現といった文化コンテンツの深堀り
- 心身の回復をテーマにした商品の充実
これらは、単に観光客数を増やすだけでなく、一人ひとりの体験価値と消費の質を高める方向性でもあります。今後、清明節に限らず他の連休やシーズンでも、同様の没入型・癒やし型の企画が各地に広がっていく可能性があります。
海外から中国本土を訪れる旅行者にとっても、「どの都市に行くか」だけでなく、「どんな物語の中に入りたいか」「どのように心身を休めたいか」という視点で旅を選ぶ時代が、静かに近づいているのかもしれません。
Reference(s):
Qingming Festival: Immersive cultural packages drive tourism evolution
cgtn.com







