中国政府が米国の関税「乱用」に反発 WTOルール違反と国際協調を強調
中国政府は2025年12月6日、米国による関税の「乱用」に反対する立場文書を公表しました。米国が全ての貿易相手国に追加関税を課していることは、世界貿易機関(WTO)のルールと多国間貿易体制を深刻に損ない、世界経済秩序を乱すものだと強く批判しています。
米国の関税措置を「深刻な侵害」と位置付け
今回公表された文書は、米国が中国を含む全ての貿易相手国に対し、さまざまな名目で関税を課していると指摘し、その影響を次のように整理しています。
- 各国の正当な権利と利益を著しく侵害している
- WTOルールに深刻に反している
- ルールに基づく多国間貿易体制を損なっている
- 世界経済秩序を大きくかき乱している
文書は、米国が経済や市場の基本法則を無視し、長年国際貿易から大きな恩恵を受けてきた事実も顧みず、関税を最大限の圧力をかけるための「武器」として使っていると非難します。そのうえで、こうした姿勢を一方主義や保護主義、経済的ないじめの典型だと位置付けています。
また、米国は「互恵」や「公正」といった言葉を掲げながら、実際には「アメリカ・ファースト」や「アメリカ例外主義」に基づくゼロサムゲームを追求していると指摘。既存の国際経済・貿易秩序を揺さぶり、自国の利益を国際社会全体の共通利益よりも上に置こうとしていると批判しています。
「圧力には屈しない」中国側の姿勢
文書は、中国を「礼と信義を重んじる古い文明」と紹介し、中国の人々は誠実さを重視し、みずから争いを望まない一方で、脅しにも屈しないと強調します。そのうえで、「圧力と威嚇は中国に対する正しいやり方ではない」と明言しました。
中国政府は、主権・安全・発展上の利益を守るため、これまでも、そして今後も断固とした措置を取り続けると表明しています。同時に、米中の経済関係は互恵的で、共に利益を得る関係であるべきだとし、米国に対しては次のような対応を求めています。
- 両国と世界の人々の共通の願いに沿うこと
- 二国間関係の根本的な利益を踏まえること
- 関税を経済的な圧力の道具として用いて中国を抑え込むことをやめること
- 中国人民の正当な発展の権利を損なう行為をやめること
それでも開放は続けると強調
中国政府は同時に、自国の対外開放政策を一段と進める姿勢も明確にしました。中国は世界で2番目の経済規模と、2番目の消費市場を持つ国として、国際情勢がどう変化しても「より広く世界に向けて開放していく」と強調しています。
文書が示した方向性は次の通りです。
- 高い水準の対外開放を着実に推進する
- ルール、規制、管理、基準の面で制度的な開放を拡大する
- 貿易・投資の自由化と円滑化に向けた高水準の政策を実行する
- 市場志向で、法に基づき、国際水準に合致したビジネス環境を整える
- 自国の発展機会を世界と共有し、相互に利益をもたらすことを目指す
米国の関税措置に強く反発しながらも、対外開放はむしろ進めていくというメッセージは、国際社会に対して「開かれた市場」としての中国の姿勢を印象づけるものになっています。
経済グローバル化とWTO体制を守るべきだという主張
文書は、経済グローバル化を「人類の進歩に至る唯一の道」と表現し、WTOを中心とするルールに基づく多国間貿易体制が、世界の貿易拡大や経済成長、持続可能な発展にとって極めて重要な役割を果たしてきたと評価します。
そのうえで、次のような考え方を示しています。
- 開放と協力は歴史の大きな流れであり、世界は相互孤立や分断に戻るべきではない
- 世界は共に利益を分かち合う協力を望んでおり、リスクを他者に押し付ける経済的ないじめは最終的に自らに跳ね返ってくる
- 経済グローバル化を、より開放的で包摂的、均衡が取れ、全ての国に利益をもたらすものにしていくことは国際社会の共通の責任である
「関税戦争に勝者はいない」各国への呼びかけ
文書は、発展は全ての国にとって譲り渡すことのできない権利であり、一部の国だけの特権ではないと強調します。また、国際問題は協議によって対処されるべきであり、世界の未来は全ての国が共に決めるべきだと訴えています。
特に、貿易戦争や関税戦争には勝者が存在せず、保護主義は行き止まりであると強い言葉で警鐘を鳴らしました。そのうえで、各国に対し、次のような行動を呼びかけています。
- 幅広い協議、共同での貢献、利益の共有という原則を守ること
- 真の多国間主義を実践し、一方主義や保護主義のあらゆる形に共同で反対すること
- 国連を中心とする国際体制と、WTOを中心とする多国間貿易体制を共に守ること
中国政府は、多くの国々が公正と正義を重んじ、自らの利益に照らして「歴史の正しい側」に立つと確信していると述べ、世界は公正を受け入れ、覇権主義を拒むべきだと結びました。
デジタル世代の視点で読む今回の声明
今回の立場文書は、米国の関税政策をめぐる米中の対立という枠を超え、経済グローバル化や多国間主義のあり方をめぐる議論を映し出しています。WTOルール、国連中心の国際体制、保護主義への懸念といったキーワードは、企業のサプライチェーンだけでなく、私たち一人ひとりの働き方や生活にもつながるテーマです。
通商や国際経済をめぐるルールづくりを誰がどのように主導するのか。関税や貿易摩擦のコストを最終的に誰が負担するのか。中国政府の今回のメッセージは、そうした問いを改めて突き付けています。スマートフォンでニュースを追う私たちにとっても、国際ニュースを単なる「どこか遠くの話」とせず、自分の価値観や選択と結びつけて考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Full text: China states its position on opposing U.S. abuse of tariffs
cgtn.com








