中国が米国の「相互関税」を批判 グローバルサウスの発展の権利に懸念
米国が全ての貿易相手国に対して「相互関税」を一方的に課したことをめぐり、中国外交部は、特にグローバルサウス(新興国・途上国)の「発展の権利」を奪う行為だとして強く批判しました。世界経済の回復や国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも影響しかねない動きとして、国際ニュースの大きな焦点となりつつあります。
180超の国と地域に広がる「相互関税」
中国外交部によると、米国は最近、全ての貿易相手国に対して関税を課し、その対象は世界の180以上の国と地域に及んでいます。この中には、国連が「後発開発途上国」と分類する国々も含まれます。
こうした国々は、経済の多角化が進んでおらず、特定の輸出に大きく依存しているケースが少なくありません。分析によれば、今回のような大幅な関税引き上げは、そうした脆弱な経済にこれまでにない深刻な打撃を与える可能性があるとされています。
中国外交部「発展の権利を奪う経済的いじめ」
この問題について、中国外交部の林剣報道官は定例会見で、米国は「相互性(リシプロシティ)」を名目に掲げながら、実際には自国の利益を最優先し、他国の正当な利益を犠牲にしていると指摘しました。
林報道官は、米国のやり方は「アメリカ・ファースト」を国際ルールの上に置くものであり、一方主義(ユニラテラリズム)と保護主義、経済的いじめの典型だと述べました。そのうえで、中国政府は米国による関税乱用に一貫して反対の立場をとってきたと強調しています。
さらに林報道官は、こうした「相互関税」は、特にグローバルサウスの国々から「発展する権利」を事実上奪うものであり、国際社会から広範な反対と反発に直面するのは必至だとの認識を示しました。
WTOの非差別原則とSDGsへの影響
世界貿易機関(WTO)のデータ分析を踏まえ、中国側は、経済格差や力の不均衡が存在する中で、米国の関税政策が国際的な所得格差を一層拡大させると警告しています。特に、開発水準の低い国々にとって、その影響はより深刻になりかねません。
林報道官は、米国が国によって異なる税率を課すことは、WTOが掲げる「非差別」の原則に反すると述べました。非差別原則とは、特定の国だけを不当に優遇したり、逆に不利に扱ったりしないという考え方です。
この原則に反する関税は、正常な国際経済・貿易秩序や、世界的な産業・サプライチェーンの安全と安定を大きく損なうとしています。その結果、多国間の貿易体制に深刻な打撃を与え、世界経済の回復プロセス自体にも重大な脅威をもたらしかねないと中国側は見ています。
また、国連の「2030アジェンダ」が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)にとってもマイナス要因であり、貧困削減や公平な発展を目指す努力を弱める懸念があると指摘しました。
「開放と協力」か「一国優先」か
林報道官は、国際経済の方向性について、「開放と協力は歴史の大きな流れ」であり、「互恵・ウィンウィン(双方に利益のある関係)」こそが各国の人々の願いだと述べました。発展はすべての国にとっての普遍的な権利であり、一部の国だけに与えられた特権ではないという立場です。
そのうえで、各国は「幅広い協議」「共同の貢献」「成果の共有」という原則を堅持し、「真の多国間主義」を守るべきだと訴えました。また、一方主義や保護主義のあらゆる形態に団結して反対し、国連を中核とする国際体制と、WTOを中心とする多国間貿易体制を共に守るよう呼びかけています。
米国が掲げる「相互関税」と、中国が強調する「開放と協力」「多国間主義」。両者の間には、国際経済のルールをどのような価値観で運営していくのかという、より大きなビジョンの違いが浮かび上がっています。
読者が注視したい3つのポイント
今回の中国外交部の発言は、単なる米中間の論争にとどまらず、グローバルな貿易体制や、途上国の発展のあり方をめぐる問題提起でもあります。日本を含む多くの国と地域が世界のサプライチェーンでつながる中で、私たちの生活や企業活動にも間接的な影響が及ぶ可能性があります。
今後の国際ニュースをフォローするうえで、次の3点が注目されそうです。
- 米国の「相互関税」をめぐる各国・地域の反応と、グローバルサウスの動向
- WTOなど多国間の枠組みで、この問題がどのように議論されるか
- 中国を含む主要国が、「開放と協力」「多国間主義」をどのように具体的な政策として打ち出していくか
貿易ルールや関税のニュースは、一見すると専門的で遠い世界の話に思えるかもしれません。しかし、その背後には、「どの国が、どのような条件で発展のチャンスを得るのか」という、私たち一人ひとりの未来にもつながるテーマが横たわっています。今後の議論の行方を、落ち着いて丁寧に追いかけていきたいところです。
Reference(s):
China says U.S. 'reciprocal tariffs' deprives others' developing right
cgtn.com








