中国の新電波望遠鏡 三峡南極の目が南極で本格稼働
南極に新たな「宇宙を見る目」が加わりました。中国が南極の中山駅に新しい電波・ミリ波望遠鏡「三峡南極の目」を設置し、2025年4月3日に正式運用を開始しました。国際ニュースとして、極地から宇宙を探る新たな一歩です。本稿では、この動きを日本語ニュースとして分かりやすく解説します。
南極に誕生した新しい電波望遠鏡
三峡南極の目は、口径3.2メートルの電波・ミリ波望遠鏡です。南極の中山駅に設置され、中国三峡大学(CTGU)と上海師範大学(SHNU)が共同で開発しました。電波や低周波のミリ波を捉えることで、肉眼や可視光の望遠鏡では見えにくい宇宙の姿をとらえることができます。
- 設置場所:南極・中山駅
- 望遠鏡の種類:電波・ミリ波望遠鏡
- 主な開発機関:中国三峡大学(CTGU)、上海師範大学(SHNU)
- 口径:3.2メートル
- 主な観測対象:天の川銀河の中性水素やアンモニア分子のスペクトル線
中国三峡大学によると、望遠鏡はすでに天の川銀河に含まれる中性水素やアンモニア分子のスペクトル線の観測を本格的に始めています。これらのデータは、銀河内のガスの動きや星が生まれるプロセスを解き明かすうえで重要な手がかりになります。
何を観測し、どんな発見が期待されるのか
中性水素は、宇宙に最も豊富に存在するガスの一つで、銀河の骨格を形づくる材料ともいえます。一方、アンモニア分子は、星が生まれる分子雲と呼ばれるガスの塊の状態を知るのに役立つ物質です。これらのスペクトル線を観測することで、次のような研究が進むと期待されています。
- 天の川銀河のガスがどのように流れ、集まり、星の材料になっていくのか
- 星形成が活発な領域とそうでない領域の違い
- 銀河全体の進化の中で、ガスの役割がどう変化していくのか
電波やミリ波は、宇宙空間に浮かぶ塵(ちり)やガスに遮られにくく、星の「ゆりかご」ともいわれる分子雲の内部をのぞき込むことができます。三峡南極の目は、こうした観測を長期的に積み重ねることで、私たちの銀河像をより立体的なものへとアップデートしていくことになります。
極寒の南極で望遠鏡を動かす難しさ
もちろん、南極に大型の望遠鏡を建設し、安定的に運用するのは簡単ではありません。中国三峡大学の曽祥雲准教授は、南極は地球で最も寒い大陸であり、極端な低温と強風が電波望遠鏡の開発と設置に大きな課題をもたらしていると指摘しています。
2023年以降、CTGUとSHNUは協力して、次のような技術的ハードルに取り組んできました。
- マイナス数十度にも達する低温環境でも動作する電子機器や駆動装置の開発
- ハリケーン並みの強風に耐えるドームや構造体の設計
- 限られた人員と物資で設置・保守ができるシステム構成
上海師範大学の張毅准教授は、三峡南極の目が南極における天文台建設の技術的ボトルネックを突破し、今後のサブミリ波望遠鏡の整備に向けた土台を築いたと評価しています。極限環境で使える装置を作ること自体が、次世代の観測技術の開発にもつながっていきます。
次世代南極天文学への布石
三峡南極の目は、電波から低周波のミリ波まで広い帯域をカバーすることで、南極での天文学研究の可能性を広げるとされています。中国三峡大学の何偉軍・党委書記は、この望遠鏡の成功が同大学の極地研究装備の成果を示すものであり、科学技術の新たな高みを目指す中国の研究者の姿勢を体現していると強調しています。
望遠鏡が安定運用に入った段階で、CTGUは研究者を中山駅に派遣し、現地での観測とデータ解析を本格化させる計画です。南極という特殊な環境だからこそ得られる高品質なデータが、今後世界中の研究者と共有されていく可能性もあります。
中国はこれまでも、南極サーベイ望遠鏡AST3などの機器を通じて、南極での天文観測能力を着実に高めてきました。三峡南極の目の稼働は、こうした取り組みをさらに押し上げ、地球上でも最も人里離れた場所から宇宙を観測する国際的な努力を後押しするものとなります。
世界の宇宙観測と私たち
南極の望遠鏡というと遠い世界の話に聞こえるかもしれませんが、その成果は、数年から十数年というスパンで私たちの宇宙観に確かな変化をもたらしていきます。
- 宇宙をどう見るかという「ものの見方」がアップデートされる
- 極地観測の技術が、将来の月・火星など他天体での観測にも応用される可能性がある
- 地球の気候や環境を理解するうえでも、南極という場のデータが重要性を増していく
国際ニュースとしての側面だけでなく、長期的に見れば、今回の三峡南極の目の稼働は「人類がどこまで宇宙を理解できるのか」という問いに対する静かな挑戦でもあります。私たちが夜空を見上げるとき、そのずっと向こうを南極の望遠鏡が見ている――そんなイメージを思い浮かべながら、この動きをフォローしていきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








