中国の深海有人潜水艇「蛟竜号」、国産部品で大幅アップグレード
中国の深海有人潜水艇「蛟竜号」が、主要部品の国産化と性能向上を柱とする大規模アップグレードを受け、2025年以降の深海科学探査で新たな役割を担おうとしています。
国産部品で進化する深海有人潜水艇「蛟竜号」
蛟竜号は、中国が開発した7,000メートル級の深海有人潜水艇です。今回の最新アップグレードは、2024年11月から始まり、バッテリーや推進装置など「心臓部」にあたる機器を国産品に切り替えることに重点が置かれました。これにより、運用効率と安全性の両面で、次の探査フェーズに向けた基盤が整いつつあります。
バッテリー刷新で「1日2回潜航」が現実に
蛟竜号は、2025年3月25日に約1カ月にわたる海上試験を終えました。この試験では、「1日2回の潜航ミッション」を4回行うという新記録を達成しています。その鍵となったのが、新たに導入された7,000メートル級高エネルギー密度・油浸リチウム電池システムです。
中国国家深海センターの高級工程師でダイバーでもある張毅(Zhang Yi)氏によると、改修前は1回の潜航ごとに充電に約10時間を要し、高頻度のミッションはほとんど不可能でした。今回のリチウム電池システムへの更新により、フル充電に必要な時間は3〜4時間に短縮され、同じ日内での再潜航が現実的な選択肢になったといいます。時間あたりの運用効率が大きく向上したことで、限られた船舶・人員でより多くの観測データを積み上げられるようになりました。
推進装置も国産化、速度と機動力が向上
蛟竜号の上昇・下降や深海での細かい姿勢制御を支えるのが、船尾などに取り付けられたスラスター(推進装置)です。今回の改修では、このスラスターが全面的に更新されました。
張氏によると、従来は7基すべてが輸入品でしたが、現在は国産スラスターに置き換えられ、単基あたりの推力は約89キログラムから100キログラム超へと強化されたとされています。巡航速度も、時速2.5ノットから3ノット超へと向上し、探査海域をより効率的に移動できるようになりました。深海では、わずかな流れや地形の違いが作業効率に直結するため、速度と推力の向上は、観測やサンプル採取の柔軟性を高める要因となります。
4Kカメラで深海生物の「細部」まで
視覚情報の面でも、蛟竜号は大きく強化されています。艇の前方には36倍ズームが可能な4K高精細カメラが新たに搭載され、暗く高圧の深海環境でも、これまでより鮮明な映像記録が可能になりました。
研究者によれば、このカメラを使うことで、例えばイソギンチャクの触手に生えた細かな毛まで確認できるといいます。こうした詳細な映像は、生物の行動観察や分類、深海生態系の把握にとって重要な手がかりになります。写真や動画そのものが、国際的な研究コミュニティで共有される科学的な資料になることも期待されます。
研究者が見るアップグレードの意味
中国工程院の院士である李家彪(Li Jiabiao)氏は、今回の改修について「エネルギー供給、とりわけバッテリーの強化が大きい」と評価しています。李氏によれば、主推進・補助推進を含むスラスターが大幅に性能向上したほか、上昇・下降システムでは、海水の注排水速度や流量が最適化されました。
これにより、蛟竜号はより広い海域で、より精密な作業を行うことが可能になると李氏は見ています。深海の地形観測、熱水噴出域の調査、生物サンプルの採取など、位置決めと微妙な姿勢制御が求められるミッションで、その効果が現れるとみられます。
2025年、80回超の潜航ミッションへ
アップグレードを終えた蛟竜号は、すでに新たな研究航海に投入されています。2025年には年間80回を超える潜航を行う計画が示されており、運用頻度としても一段高いステージに入ろうとしています。
深海は、気候変動や資源、海洋生態系など、現代の国際的課題と直結するフロンティアでもあります。国産部品への切り替えと性能向上を同時に進める今回の取り組みは、深海科学探査を長期的かつ安定的に続けるためのインフラ整備という側面も持っています。今後、蛟竜号がどのようなデータと発見をもたらすのか、2025年のミッションの行方に注目が集まりそうです。
Reference(s):
China's Jiaolong submersible upgraded with domestic components
cgtn.com








