中国の量子コンピューターがAIモデル微調整で世界初の成果
中国本土の量子コンピューティング企業が、大規模AIモデルの実タスクを量子コンピューターでこなし、計算効率を高めたと発表しました。量子とAIの組み合わせが、次世代の計算インフラをどう変えるのかが注目されています。
何が発表されたのか
中国東部の合肥市に拠点を置くスタートアップOrigin Quantumは、自社開発の第三世代超伝導量子コンピューターOrigin Wukongを使い、パラメーター数が10億規模の大規模AIモデルの微調整に成功したとしています。
同社は、この成果を世界初のブレークスルーと位置づけています。Science and Technology Dailyは月曜日、この成果を報じました。
実世界の大規模モデルタスクに量子コンピューターを適用できたのはこれが初めてであり、現行の量子ハードウェアでもAIモデルの微調整を支えられることを示したと、合肥総合国家科学センターの科学者・陳兆雲氏は述べています。
量子コンピューターで何をしたのか
今回の焦点は、大規模AIモデルの「微調整」です。微調整とは、汎用の大規模AIモデルを、医療診断や金融リスク分析など特定分野向けに最適化するため、専門分野のデータで再学習させるプロセスを指します。DeepSeekのような汎用モデルを、用途に合わせて賢くする作業と考えると分かりやすいでしょう。
Origin Quantumの実験では、モデルのパラメーター数を76パーセント削減しながら、訓練性能を8.4パーセント向上させる結果が得られたとされています。単に軽くするだけでなく、精度も上げられた点がポイントです。
なぜ重要なのか: 軽量な大規模モデルへの道
AIの高度化が進む一方で、計算資源の不足や電力消費の増大が世界的な課題になっています。今回の成果は、量子コンピューティングを活用することで「軽くて賢い大規模モデル」を実現できる可能性を示したものです。
- モデルを小さくしつつ性能を維持・向上できれば、必要な計算資源を抑えられる
- クラウドやエッジ端末など、より多様な環境で高度なAIが動かせる
- 将来予想される計算能力のボトルネックを緩和できる
陳氏は、今回の前進により、量子コンピューターが将来の計算能力制約を乗り越える新しいアプローチを提供し得ると評価しています。
Origin Wukongとはどんな量子マシンか
実験に用いられたOrigin Wukongは、72量子ビットの超伝導方式による量子コンピューターで、プログラム可能かつ提供可能なシステムとされています。量子ビットとは、従来のコンピューターのビットに相当する最小単位で、0と1を同時に重ね合わせた状態を扱えることが特徴です。
Origin Wukongはクラウドを通じて世界中の利用者に公開されています。これまでに139の国と地域から2,300万を超えるユーザーがアクセスし、35万件の量子計算タスクが実行されたとされています。
これからのAIと量子コンピューティング
今回の成果は、量子コンピューターが「研究室の実験機」から、AIのような実タスクを担う計算基盤へと歩み始めていることを示す一例といえます。2025年現在、量子コンピューターの多くはまだ発展途上ですが、具体的なAIモデルの微調整で結果を出したことは、今後の応用研究を加速させるきっかけになりそうです。
今後は、
- 医療や金融など、分野別モデルへの適用事例の拡大
- より多くの量子ビットを持つハードウェアの開発
- 古典コンピューターと量子コンピューターを組み合わせたハイブリッドな学習手法の検証
といった方向で議論と実証が進むと考えられます。
AIと量子コンピューティングの組み合わせは、計算能力の限界に近づきつつある世界で、次の一手となり得るのか。中国本土のOrigin Quantumが示した今回の実験は、その問いに向けた早期の試金石となりそうです。
Reference(s):
China's quantum computer pioneers AI task with enhanced efficiency
cgtn.com








