中国の半導体関税、米国製チップのみ対象とCSIAが説明
中国本土が米国からの半導体輸入に課す報復関税をめぐり、その対象が「思ったほど広くない」ことが分かりました。中国半導体行業協会(CSIA)が先週金曜日に示した説明で、関税がかかるのは米国内の工場で製造されたチップに限られ、台湾地域や韓国で作られたチップは対象外と整理されたためです。
この国際ニュースは、世界の半導体サプライチェーンと投資家心理に直結する動きとして注目されています。
何が起きたのか:関税の対象は「米国の工場」製チップ
CSIAは、中国本土の主要な半導体企業を代表する業界団体です。同協会は先週金曜日、米国からの半導体輸入に対する報復関税の対象について、「チップの原産地はウエハーを製造する工場(ファブ)の所在地で判断する」と明らかにしました。
ポイントは次の通りです。
- 原産地は、チップを実際に製造したウエハーファブの所在地で決まる
- 最終的なパッケージング(封止)や設計拠点の所在地は、原産地判断には使わない
このルールにより、例えばAMDのCPUやNVIDIAのGPUであっても、台湾地域で製造されたチップは米国製ではなく台湾地域の製品とみなされ、中国本土の報復関税の対象外となります。
一方で、インテルやテキサス・インスツルメンツなどが米国内の工場で製造したチップは、たとえその後、中国本土でパッケージングされたとしても、原産地は米国と判断され、高い関税が課されることになります。
米中の関税応酬:背景にある数字
先週金曜日、中国本土は米国からの一部輸入品に対する関税を125%まで引き上げました。これは、トランプ米大統領が中国本土からの輸入品に課す関税を145%に引き上げる決定をしたことへの対抗措置と位置づけられています。
こうした関税の引き上げは、単なる数字の応酬ではなく、どの製品がどれだけの税負担を負うのかという具体的なルール設計によって、企業行動や投資判断に直接影響を与えます。今回のCSIAの説明は、そのルールをより明確にしたものだと言えます。
市場はどう反応したか:勝者と敗者
関税の影響が限定的だと受け止められた銘柄には買いが集まりました。台湾地域での製造比率が高いとみられる米半導体大手の株価は、金曜日の市場で次のように動きました。
- AMD:前日比6%上昇
- NVIDIA:同2.6%上昇
- Qualcomm:同1.1%上昇
一方で、米国内の工場での製造比率が高いインテルの株価は6%超下落しました。インテルは、パソコン向けプロセッサーの最大手であり、米国内で最先端の半導体を製造しようとしている数少ない企業の一つとされています。そのインテルが売られたことは、投資家が「米国内ファブでの生産に対する関税リスク」を意識し始めたことを示していると言えます。
CSIAの説明が伝わった後は、中国本土の半導体関連株も上昇しました。米国製チップへの高関税により、中国本土の半導体企業やサプライチェーンに追い風が吹くとの見方が広がったためです。
「原産地」ルールがもたらす現実的なインパクト
テック調査会社Omdiaで半導体を担当する何暉(He Hui)氏は、CSIAの通知によって「どの米国製チップに関税がかかるのかが明確になった」と述べています。中国本土でパッケージングされたとしても、米国内の工場で製造されたチップには引き続き関税が課されることがはっきりした形です。
調査会社バーンスタインのアナリストはロイター通信に対し、今回のルールが市場にとって大きなサプライズだったと説明しています。多くの投資家は、これまで「最終的なパッケージングを行った場所が原産地になる」と考えていたためです。しかし実際には、移転が比較的容易なパッケージング工程ではなく、移すのが難しいウエハーファブの所在地が原産地として重視されることになりました。
言い換えれば、企業が関税リスクを軽減しようとするなら、「パッケージング工場をどこに置くか」ではなく「製造用ファブをどこに建てるか」が、これまで以上に重要な経営判断になります。
「China for China」戦略と中国本土の半導体産業
何暉氏は、今回のルールが中国本土の半導体産業とサプライチェーンにとってプラスに働き得ると指摘します。海外半導体企業が中国本土向けの需要を満たすために、中国本土での生産を拡大する「China for China」という戦略を加速させる可能性があるからです。
China for Chinaとは、簡単に言えば「中国本土の市場向けの製品は中国本土で作る」という発想です。これにより、企業は関税や輸送リスクを抑えつつ、中国本土の顧客に近い場所で生産・供給ができます。
米国で製造されたチップに高い関税がかかる一方で、中国本土にあるファブで製造した製品はその影響を受けにくくなります。この差が、海外企業にとって「どこに新たな投資を行うか」を考える際の重要な要素になっていく可能性があります。
これからを考えるための3つの視点
今回の動きは、日本を含む各国・地域の企業や投資家にとっても他人事ではありません。今後のポイントを三つに整理します。
- 1:生産拠点の地理がリスクを決める
ブランドの国籍よりも、「どこのファブで製造しているか」が関税や規制リスクを左右します。調達や投資を考える際には、サプライチェーンの地理的な構造をより細かく見る必要があります。 - 2:関税はサプライチェーン再編の強い圧力になる
高い関税は、企業にとって「工場をどこに置くか」を見直す強いインセンティブになります。今回の原産地ルールは、その圧力が米国内ファブに集中的にかかる可能性を示しています。 - 3:ルールの細部が市場を動かす
CSIAの発表後、わずかな定義変更の違いが株価を大きく動かしたことは、「ルールの細部」がいかに重要かを物語っています。国際ニュースを見る際も、見出しの数字だけでなく、その裏にある定義や運用ルールに目を向けることが求められます。
半導体は、デジタル経済を支える基盤であり、同時に各国・地域の安全保障や産業戦略の中心にある存在です。今回の中国本土による関税の整理は、その半導体をめぐる地政学的な力学が、今も動き続けていることを静かに示していると言えるでしょう。
Reference(s):
China's tariff on chips is not as widespread as you might think
cgtn.com








