老舗・首都シネマが挑む「シネマ+」ビジネスモデルとは
北京・西単の商業地区に本部を置く老舗映画館「首都シネマ」が、2025年のいま、新しい「シネマ+」ビジネスモデルに挑戦しています。長年、北京の人々に愛されてきた映画の原点が、なぜいま変わろうとしているのでしょうか。
1937年創業、北京の「映画の殿堂」
首都シネマの歴史は、1937年にまでさかのぼります。当時は、京劇の名優・馬連良(マ・リアンリャン)氏とその友人たちの資金によって設立された「新新劇場」としてスタートしました。場所は、いまも北京の中心的なショッピングエリアとして知られる西単商業地区です。
1950年には、当時の中国の周恩来総理によって正式に「首都シネマ」と命名されました。それ以降、この映画館は北京の映画文化を象徴する存在となり、何世代にもわたって市民の思い出を育んできました。
中国映画史に刻まれた数々の「初」
首都シネマは、その長い歴史の中でいくつもの業界記録を打ち立ててきました。
- 中国で最初のワイドスクリーン・ステレオ音響映画館
- 北京で最初の光学ステレオ音響映画館
- 北京市内で初めて、興行収入が1000万元を突破した映画館
こうした実績から、首都シネマは長年にわたり「北京人の心に刻まれた映画の殿堂」として特別な位置を占めてきました。映画そのものだけでなく、劇場に足を運ぶという行為が、家族や友人との時間、街の空気とセットになった体験として記憶されてきたのです。
いまなぜ「シネマ+」なのか
オンライン配信サービスの普及などにより、「映画を見る場所」はここ数年で大きく変わりました。その一方で、「わざわざ映画館に行く理由」は、以前よりも厳しく問われています。こうした環境の変化の中で、首都シネマが模索するのが「シネマ+」という新しいビジネスモデルです。
「シネマ+」とは、単に映画を上映するだけでなく、映画館を軸にさまざまな文化体験やサービスを組み合わせる発想だと考えられます。上映と飲食、展示、トークイベント、ライブパフォーマンス、地域コミュニティづくりなど、映画の枠を超えた多層的な空間づくりがそのイメージです。
伝統と革新をどうつなぐか
1937年創業という深い歴史を持ち、中国初のワイドスクリーン・ステレオ音響映画館として名を刻んだ首都シネマが「シネマ+」に挑むことには、大きな意味があります。単なる設備更新ではなく、「都市の記憶としての映画館」をどう次の世代につなぐかという問いが、その根底にあるからです。
首都シネマの場合、創設者の一人が京劇の名優であることからも分かるように、映画と伝統芸能の橋渡しという軸も考えられます。映画上映とともに、京劇や他の舞台芸術に関するトークやワークショップを行うことができれば、「映画+舞台芸術」というクロスオーバーが生まれます。
さらに、長年にわたり北京の市民に親しまれてきたという歴史的背景は、単なるノスタルジーにとどまりません。都市の変化を見つめてきた「場」としての力は、若い世代にとっても新しい学びや発見のきっかけになり得ます。歴史展示やアーカイブ上映会など、「映画+記憶」「映画+教育」といった方向性も、「シネマ+」の一部になりそうです。
西単から広がる新しい都市体験
首都シネマが位置する西単商業地区は、ショッピングや飲食、エンターテインメントが集まる北京の中心エリアです。この場所で映画館が「シネマ+」モデルに踏み出すことは、街全体の体験価値にも影響を与える可能性があります。
買い物や食事のついでに映画を観るだけでなく、映画館をハブにして一日をデザインする──そんなライフスタイルが現実味を帯びてきます。映画上映に合わせた街歩きや、周辺施設とのコラボレーション企画など、「映画館と街」をセットで楽しむ発想が広がれば、西単というエリアの魅力もさらに高まるでしょう。
「映画館でしか味わえないもの」を問い直す
首都シネマが探る「シネマ+」は、単なる収益源の多様化ではなく、「映画館でしか味わえないものは何か」をあらためて問い直す試みでもあります。
暗い館内で同じスクリーンに向かい、見知らぬ人と感情を共有する。上映後、その余韻を抱えたまま夜の街に出ていく──そうした体験は、オンライン視聴とは異なる価値を持ち続けています。そこに、歴史ある建物や街の記憶、他の文化体験が重なるとき、「シネマ+」は単なるビジネスモデル以上の意味を帯びてくるはずです。
1937年から続く北京の映画の殿堂が、2025年のいま、どのような「シネマ+」を形にしていくのか。首都シネマの次の一歩は、世界中の映画館にとっても、「映画と都市の未来」を考えるヒントになるかもしれません。
Reference(s):
Time-honored Capital Cinema explores new 'cinema+' business model
cgtn.com








