海南エキスポのマスコットが語る熱帯雨林保護と緑の未来
中国南部の海南省・海口市で第5回中国国際消費品博覧会(CICPE、海南エキスポ)が開幕しました。会場では、絶滅危惧種「海南テナガザル」をモチーフにしたマスコットが登場し、熱帯雨林保護と「より緑の未来」への取り組みを象徴する存在として注目を集めています。
海南エキスポの主役級マスコット「Yuanyuan」と「Xiaoxiao」
今年のエキスポでも、人気マスコット「Yuanyuan(ユエンユエン)」と「Xiaoxiao(シャオシャオ)」が会場を盛り上げています。2体のモデルとなっているのは、海南島だけに生息する希少なサル、海南テナガザルです。
このマスコットは毎年「衣装」が変わることで知られていますが、今年は熱帯雨林保全の研究チームの一員という設定で登場しました。調査や保全に携わる研究者をイメージした姿は、海南省が掲げる熱帯雨林の保護と、環境と共生する未来づくりへの決意を象徴しています。
消費やライフスタイルをテーマにした国際イベントで、環境保護を前面に押し出すマスコットが採用されていること自体が、「経済発展と生態系保全を両立させる」というメッセージでもあります。国際ニュースとして見ても、消費と環境をどう結びつけるかという問いを投げかける試みと言えるでしょう。
海南テナガザルとは? 熱帯雨林の「健康診断役」
海南テナガザルは、海南島固有のテナガザルで、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで最も危機的な区分の一つである「深刻な絶滅危惧」に指定されています。2〜3年に1度しか新しい世代が生まれないとされるほど繁殖のペースは遅く、そのため保全の成果が個体数の変化として表れるまでに長い時間がかかります。
同時に、海南テナガザルは熱帯雨林の「指標種」とされています。これは、
- 生物多様性(どれだけ多様な生き物がいるか)
- 生息地の質(森の広さやつながり、植生の状態)
- 気候の調節機能(森林が果たす気温や水循環のコントロール)
といった要素を総合した、熱帯雨林の健全さや「本物らしさ」を映し出す存在という意味です。海南テナガザルが暮らせる森を守れるかどうかは、その地域の熱帯雨林がどれだけ守られているかを示すバロメーターでもあります。
絶滅寸前からの回復:数字で見る保全の歩み
海南テナガザルは、かつて絶滅の瀬戸際に立たされていました。
- 1970年代後半:確認された個体数はわずか7〜9頭とされ、文字通り「消えてしまうかもしれない」状況でした。
- 2003年:包括的な調査の結果、2つの群れに分かれた計13頭しかいないことが明らかになりました。
- 2005年:海南テナガザルの専任モニタリングチームが設立され、本格的な監視と保全が始まりました。
その後も、長年にわたる保全活動とモニタリングが続けられてきました。その成果は、近年のデータにはっきり表れています。2024年のデータでは、海南テナガザルの個体数は7つの家族群から成る42頭まで増加したとされています。
さらに、保護が継続され、大きな攪乱要因が発生しなければ、2035年ごろには個体数が現在のほぼ倍となる60〜70頭に達するという見通しも示されています。繁殖ペースの遅い種であることを考えると、この回復曲線は、地道な保全の積み重ねが確かな成果を生んでいることを物語っています。
なぜ「消費品博覧会」で自然保護が語られるのか
中国国際消費品博覧会は、その名のとおり消費財に焦点をあてた大型イベントです。しかし、海南省はこの場を、熱帯雨林保護や生物多様性というテーマを発信する機会としても活用しています。
マスコットを通じて伝えられているのは、次のようなメッセージです。
- 観光や消費の舞台となる海南の美しい自然は、当たり前に存在しているわけではなく、長年の保全努力によって守られてきたこと
- 「買うこと」「使うこと」と「自然を守ること」は対立するものではなく、選び方やつくり方を工夫することで両立し得るということ
- 絶滅の危機にある種を守ることが、地域全体の森や気候を守ることにもつながっているという視点
国際ニュースとしての視点で見れば、経済イベントの場で環境保護が強く打ち出されることは、「持続可能な消費」をめぐる世界的な議論とも響き合う動きです。海南エキスポの会場でマスコットが担っているのは、専門的な話題をやさしいビジュアルに翻訳する「通訳」のような役割だと言えるでしょう。
海南の森から私たちへの問いかけ
海南テナガザルは、地理的には遠く離れた存在かもしれません。しかし、その回復の物語は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 絶滅寸前だった種も、長期的な視野で守り続ければ回復し得ること
- 生物多様性を守ることが、地域の気候や暮らしの安定にも関わっていること
- 日々の消費行動や選択が、遠くの森の未来ともつながっているかもしれないこと
日本でニュースを読む私たちにとっても、海南エキスポのマスコットは、単なるイベントキャラクター以上の意味を持ちます。スマートフォンの画面越しにこの話題に触れることをきっかけに、
- 環境や生物多様性に関する国際ニュースを意識的に追ってみる
- 自然保護や持続可能性を重視した商品やサービスに目を向けてみる
- 海南テナガザルのような事例を、家族や友人、SNSで共有してみる
といった小さな一歩を踏み出すこともできます。
「読みやすいけれど考えさせられる」海南の森のストーリー
第5回中国国際消費品博覧会で注目を集める「Yuanyuan」と「Xiaoxiao」は、華やかな展示の中で、静かに熱帯雨林保護の重要性を語る存在です。1970年代後半には7〜9頭まで減った海南テナガザルが、2024年には42頭まで回復し、2035年にはさらに増加が見込まれているという事実は、時間をかけて取り組む自然保護の可能性を示しています。
消費と環境、経済成長と生物多様性——それらをどう両立させていくのか。海南の森から届くこのニュースは、私たち一人ひとりが日常の選択を見直すための、ささやかなヒントにもなりそうです。
Reference(s):
Hainan Expo mascots pay tribute to the island's rainforest protection
cgtn.com








