習近平主席がベトナム紙に寄稿 「中越共同の未来」戦略の中身とは
中国の習近平国家主席は月曜日、ベトナムの新聞「ニャンザン」に署名入り記事を寄稿し、ベトナム国賓訪問を前に、中越関係を「共同の未来を共有する共同体」としてどのように発展させるかを詳しく語りました。歴史・政治・経済・人の交流を縦断する長文メッセージは、アジアの秩序づくりとグローバルサウス連携に向けた中国の対外戦略を読み解く手がかりとなります。
署名記事の概要:キーワードは「中越共同の未来」
記事は、国交樹立75周年を迎えた中国とベトナムが「共に社会主義の道を歩む友好的な隣国」であると位置づけたうえで、「新時代の中越共同の未来を共有する共同体」の構築が両国の共通利益であり、地域と世界の平和・安定・発展にも資すると強調しています。
習主席は、自身にとって4回目となるベトナム訪問に触れつつ、「友誼の再確認」「協力の拡大」「新たな青写真づくり」への期待を示しました。
歴史・信頼・協力・交流の四つの土台
1. 革命の歴史で結ばれた中越関係
習主席はまず、中越関係の原点として、植民地支配と侵略に対抗した革命の歴史を挙げています。近代において、中国とベトナムの革命運動の先駆者たちは、ともに民族の解放の道を探り、第三世界における反植民地主義・反帝国主義の勝利に貢献したと振り返ります。
広州にあるベトナム青年革命同志会の旧址や、中国広西チワン族自治区靖西市にあるベトナム独立同盟会の事務所跡は、そうした革命期の交流を象徴する場所として言及されました。
記事では、ホー・チ・ミン主席が延安や桂林、重慶、昆明などで中国人民の抗日戦争を支援したこと、中国がフランス植民地支配や米国の軍事介入に抵抗するベトナムの戦いを軍事・政治顧問の派遣などを通じて全面的に支援したことにも触れ、「中越両国は同志であり兄弟でもある」という有名な言葉を、共有する革命の記憶として引用しています。
2. 政治的相互信頼とハイレベル対話
次に習主席は、近年の政治対話の積み重ねを「強固な政治的相互信頼」として位置づけます。中国共産党中央委員会総書記である自身と、グエン・フー・チョン総書記、トー・ラム総書記らベトナム側指導者は相互訪問を重ね、中越共同体づくりの方向性を示してきたとしています。
両国間では、次のような枠組みが「円滑に機能している」と説明しています。
- 両国協力指導委員会
- 両党の理論シンポジウム
- 国境防衛友好交流
- 公安当局による犯罪対策会議
さらに、中国の全国人民代表大会とベトナム国会との合同委員会といったハイレベル機構や、外交・国防・公安分野の「3+3戦略対話」など、新たな対話メカニズムの設置にも触れています。地域・国際問題でも両国は「多くの課題で立場を共有し、緊密に協調してきた」と強調しました。
3. 貿易とインフラで進む実務協力
経済面では、世界経済が減速するなかでも中越の産業・サプライチェーン協力は強まり、中国が20年以上連続してベトナム最大の貿易相手となっていると指摘します。2024年の二国間貿易額は2600億ドルを超えたとし、ベトナム産のドリアンやココナツなどの農産品が中国市場で広く流通していることにも触れました。
インフラでは、次のような具体的な協力案件が列挙されています。
- 鉄道ネットワークの接続強化
- スマート港開発プロジェクト
- 太陽光発電パネルや廃棄物発電といったクリーンエネルギー事業
- ハノイの都市鉄道「カットリン・ハドン線」
習主席は、こうした協力がベトナムの電力供給や公共交通を支え、中越両国が「グローバルサウスにおける連帯と協力の模範」となっているとアピールしました。
4. 観光・文化交流で近づく人と人
人の往来も急速に拡大しています。記事によると、2024年には中国からベトナムへの旅行者が延べ370万人を超えました。両国の国境に位置する徳天・板約滝では越境観光協力区が正式に運用を開始し、複数の自動車による越境観光ルートも開通したことで、「一日で二つの国を巡る旅行」が現実になったとしています。
文化面では、中国のドラマや映画、オンラインゲームがベトナムの若者の間で人気を集める一方、中国でもベトナムの楽曲がSNSの検索ランキングに多く登場し、フォーをはじめとするベトナム料理が親しまれていると紹介。中国語を学ぶベトナムの人々が増えていることにも言及し、「両国民の心の距離が近づいている」と述べました。
中国経済とアジアの位置づけ
習主席は、世界が「これまでにない大変動の時代」に入るなかで、一国主義や保護主義の逆風が強まっていると指摘します。その上で、2024年の中国経済は5%成長を達成し、世界経済成長への寄与度がおよそ3割に達したとし、中国が依然として「世界経済の重要なエンジン」であると強調しました。
新エネルギー産業や人工知能、アニメーション映画など、中国発の新しい産業やコンテンツが「世界的な注目を集めている」と述べ、中国は今後も「ハイスタンダードの対外開放」と「高品質な発展」を通じて、各国に新たな機会を提供していくとしています。
また、アジアについては「世界協力と発展の新たな高まりを象徴する存在」と表現。地域全体の復興に向けた「新たな出発点」に立つアジアは、前例のない機会と課題に直面しているとし、中国は周辺外交の「連続性と安定性」を保ちつつ、「親・誠・恵・容」の原則で近隣諸国との友好協力を一層深め、アジアの近代化を共に進める姿勢を打ち出しました。
習主席が示した五つの行動方向
記事の後半では、中越共同の未来を共有する共同体を築くための「五つの提案」が示されています。
1. 戦略的相互信頼を深め、社会主義事業を前進
両国は、最高指導部の合意を指針として、両国協力指導委員会の役割をさらに発揮させ、党・政府・軍・法執行・安全保障など各分野の協力を強化し、外部からのリスクと課題に共同で対応しつつ、政治的安全を守るべきだと提案しています。
中国はまた、ベトナムとの治国理政の経験交流を深め、社会主義の理論と実践を共に発展させることで、両国の社会主義事業の着実な前進を図りたいとしています。
2. ウィンウィンの協力で両国民により大きな利益を
経済協力に関しては、次の連携を一層進めるとしています。
- 中国の一帯一路構想
- ベトナムの「二つの回廊・一つの経済圏」戦略
あわせて、経済・科学技術協力のためのプラットフォームを拡充することを呼びかけました。
具体的には、ベトナム北部の標準軌鉄道三路線やスマート港での協力を前進させる意向を示し、良質なベトナム製品の中国市場への輸出拡大を歓迎するとしています。また、中国企業によるベトナムでの投資・ビジネス展開を奨励し、産業・サプライチェーン協力の強化や、5G、人工知能、グリーン開発といった新分野での協力拡大を通じて、両国民により多くの利益をもたらしたいと述べました。
3. 人民交流を強化し、心の絆をより強く
2025年は「中越人民交流の年」と位置づけられており、この機会を生かして多様な交流を進めるべきだとしています。中国は、ベトナムからの訪問者を歓迎するとともに、中国の人々がベトナム各地を訪れることも奨励すると表明しました。
若者同士の友好交流会や国境地域での祝祭イベントなど、両国民が直接交流できる活動を増やし、「革命の歴史に根ざした友情の物語」を語り継ぐことで、中越友好のバトンを世代を超えて引き継いでいく必要性を訴えています。
4. 多国間協力を通じてアジアの繁栄と振興を推進
今年は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利、そして国際連合創設からそれぞれ80周年にあたる節目の年です。習主席は、中国とベトナムが「国連を中心とする国際システム」と「国際法を基礎とする国際秩序」を揺るぎなく擁護すべきだと強調しました。
さらに、中国が提唱するグローバル発展イニシアティブ、グローバル安全保障イニシアティブ、グローバル文明イニシアティブを推進し、「平等で秩序ある多極的世界」と「万人に恩恵をもたらす包摂的な経済グローバル化」を前に進める必要があると述べています。
そのうえで、貿易戦争や関税戦争には勝者がおらず、保護主義は行き詰まると指摘。中国とベトナムは、多国間貿易体制や安定したグローバルな産業・サプライチェーン、開かれた協力的な国際環境を守るために連携すべきだと訴えました。東アジア協力や瀾滄江・メコン協力などの枠組みでも協調を深め、変動の多い世界に安定と「プラスのエネルギー」をもたらす役割を強調しています。
5. 意見の違いを適切に管理し、地域の平和と安定を維持
最後に習主席は、陸上国境や北部湾の境界画定の成功に触れ、「長期的な視野を持てば、協議と交渉を通じて海洋問題も適切に処理できる」と述べました。
そのうえで、次のような提案を行っています。
- 両国指導者が得た共通認識を実行に移すこと
- 既存の海洋協議メカニズムを活用して、意見の違いを管理しつつ協力を拡大すること
- 最終的な紛争解決に向けた条件づくりを進めること
南シナ海では、関係国の行動宣言の「完全かつ効果的な履行」と、行動規範の協議を積極的に進める必要があるとし、「あらゆる干渉に惑わされず、相違を乗り越えて共通点を広げ、南シナ海を平和・友情・協力の海とすべきだ」と呼びかけました。
中越関係を見るための視点
今回の署名記事は、中越関係だけでなく、より広いアジアと世界秩序の行方を読み解くための材料も含んでいます。
- 国交樹立75周年とベトナム国賓訪問を前に、「共同の未来を共有する共同体」という枠組みを明確に打ち出したことは、中国が周辺外交を重視し、近隣との関係を戦略的に位置づけていることを示しています。
- サプライチェーン協力やクリーンエネルギー、鉄道やデジタル分野を強調した点は、保護主義の高まりのなかで、アジアとグローバルサウスの間で経済連携を深めようとするメッセージとも読めます。
- 人民交流の強化や海洋問題の管理に関する言及は、相互理解とリスク管理を通じて地域の安定を図ろうとする姿勢を示すものでもあります。
習主席は結びで、「歴史の新たな出発点」に立つ中国とベトナムが、これまでの成果を土台に新たな章を書き加え、「人類運命共同体」の構築にも一層貢献していきたいとの考えを示しました。中越関係の動きは、アジアの将来像を考えるうえで今後も注目が集まりそうです。
Reference(s):
Full text of President Xi's signed article in Vietnamese newspaper
cgtn.com







