中国とマレーシア、「高レベル戦略的共同体」構築へ 経済と文化が密接に
2024年に外交関係樹立50周年を祝った中国とマレーシアが、関係強化に向けて新たな一歩を踏み出しています。習近平国家主席はマレーシアを訪問し、両国で「高レベル戦略的中国・マレーシア共同体」を築く構想を打ち出しました。経済協力から観光、文化交流まで、アジアの将来像を映す動きとして注目されます。
「高レベル戦略的共同体」とは何か
習主席は会談で、今後50年を見据えた関係の青写真として、両国が「高レベル戦略的中国・マレーシア共同体」をともに築くべきだと呼びかけました。その柱として、次の三つの方向性を提案しています。
- 戦略的自立を堅持すること
- 開発戦略を連携させ、相互補完的な成長をめざすこと
- 文明間の交流と相互学習を一層深めること
「戦略的自立」は、どちらか一方に偏るのではなく、自国の判断に基づき協力を進めるという姿勢を意味します。また、開発シナジーの追求や文明交流の強化は、経済と文化の両面で関係を底上げする狙いがあります。
自由貿易とサプライチェーンを守るハイレベル協力
今回の会談では、中国とマレーシアが「無差別な関税」に反対し、デカップリング(経済切り離し)やサプライチェーン分断に対して、開放と協力で対抗していく姿勢を共有したことも重要です。アンワル・イブラヒム首相も、東南アジア諸国連合(ASEAN)は一方的に課される関税を支持しないと強調しました。
習主席は、不安定さの増す世界に対し、「アジアの平和・協力・開放・包摂という価値観」で「弱肉強食の論理」に応えるべきだとし、「不確実な世界」に「安定したアジア」を提示する考えを示しました。
経済面では、中国はマレーシアとの「質の高い協力」をさらに強化する意欲を表明しました。特に次のような分野での連携が挙げられています。
- デジタル経済
- グリーン経済(環境配慮型の成長)
- ブルーエコノミー(海洋資源を活用した経済)
- 人工知能(AI)
産業チェーンやサプライチェーンだけでなく、付加価値を生むバリューチェーン、データの流れを支えるデータチェーン、人材ネットワークとしてのタレントチェーンまで、全体として統合的に発展させる構想です。
習主席がマレーシアのメディアに寄稿した記事によると、2024年の中国・マレーシアの貿易額は2120億ドルに達し、外交関係樹立当初からほぼ1000倍に拡大しました。中国は16年連続でマレーシアの最大の貿易相手国であり、マレーシアも中国にとってASEAN域内で第2の貿易相手国、最大の輸入相手となっています。
マレーシアは「一帯一路」構想の早い段階からのパートナーでもあります。2017年には覚書が結ばれ、「両国双園(Two Countries, Twin Parks)」構想や東海岸鉄道計画など、具体的なプロジェクトが進んできました。今回の会談後には、AIやインフラ、農業など幅広い分野で30件を超える協力文書が署名され、質の高い協力をさらに押し広げる姿勢を示しています。
ビザ免除で広がる人の往来
中国とマレーシアの関係を支えているのは、貿易だけではありません。ここ数年、観光や人的交流も大きく伸びています。習主席は寄稿のなかで、2024年には両国間の往来が延べ600万人近くに達し、新型コロナ流行前の水準を上回ったと指摘しました。
背景には、ビザ(査証)免除措置の拡大があります。
- 2023年12月1日から、両国は相互のビザ免除制度を開始
- その後、中国側はこの措置を2025年末まで延長することに合意
- マレーシア側もこれに応じ、2026年末までの延長を決定
現在も続くビザ免除により、観光だけでなく留学やビジネス出張、家族訪問など、さまざまな目的の往来がしやすくなっています。習主席は、今回の相互ビザ免除協定の署名を好機として、観光交流や若者・地方レベルの交流を一段と活発にし、文化、教育、スポーツ、映画、メディアなどの分野で協力を深めるべきだと呼びかけました。
文化交流:パンダから獅子舞、映画まで
文化・教育の面でも、中国とマレーシアのつながりは着実に広がっています。両国は、ジャイアントパンダの保護に関する新たな共同研究を進めており、絶滅危惧種の保全を通じて科学協力を深めようとしています。
また、伝統芸能の分野では、獅子舞プロジェクトを国連教育科学文化機関(UNESCO)の無形文化遺産代表一覧表に共同で申請することで合意しました。華人文化の影響が色濃いマレーシアにとって、獅子舞は地域社会の結びつきを象徴する存在でもあり、その価値を国際的に共有していく狙いがあります。
ポップカルチャーでも交流が進んでいます。中国映画『Ne Zha 2(哪吒之2)』は先月マレーシアで公開され、中国映画として過去最高の興行収入記録を塗り替えました。中国コンテンツへの関心の高まりを映す出来事と言えます。
最新の世論調査では、マレーシアの回答者の83.6パーセントが中国に対して好意的な印象を持ち、83.8パーセントが中国への訪問や留学に関心があると答えています。観光、教育、エンターテインメントが相互理解を押し上げている様子がうかがえます。
アジアの安定にどうつながるか
今回の動きは、単に二国間関係の強化にとどまりません。保護主義や分断の圧力が高まるなか、中国とマレーシアが「戦略的自立」と「開放的な協力」を掲げることは、東南アジアひいてはアジア全体の安定にとっても意味があります。
サプライチェーンと人の往来を同時に重視する今回のアプローチは、経済安全保障と地域のつながりを両立させる一つのモデルとも言えます。日本を含むアジアの国々にとっても、どのように隣国と信頼関係を築き、互いの多様な文化を尊重しながら協力を深めていくかを考えるヒントになりそうです。
外交関係樹立から半世紀を経た中国とマレーシアは、次の50年を見据えたパートナーシップづくりに踏み出しています。その過程で掲げられた「高レベル戦略的共同体」というキーワードが、今後どのように具体化し、アジアの秩序や私たちの日常にどんな形で影響していくのか、注視していく必要があります。
Reference(s):
China, Malaysia eye high-level strategic community with shared future
cgtn.com








