習近平氏がマレーシア紙に署名記事 中国・マレーシア関係とASEAN連携の未来
中国の習近平国家主席は、マレーシアへの国賓訪問を前に、現地の主要紙に署名記事を寄稿し、中国・マレーシア関係と中国・ASEAN関係の今後の方向性を示しました。歴史、経済、人の交流、多国間協力までを一つのストーリーとして描き、アジア太平洋の将来像を語っています。
署名記事の概要:訪問前に「友情の船」を強調
署名記事は、Sin Chew Daily、The Star、Sinar Harian などマレーシアの主要メディアに掲載されました。タイトルは、中国・マレーシアの友好の船を、より明るい未来へ進めたいという趣旨のものです。招待したのはマレーシアのスルタン・イブラヒム国王で、習主席にとってマレーシア訪問は12年ぶり2回目とされています。
記事の中で習主席は、両国関係を一隻の船にたとえながら、これから注力すべき分野として次の四つを挙げています。
- 戦略的な舵取り(高いレベルの対話と政治的信頼の強化)
- 経済協力という「バラスト」(相互利益を拡大する実務協力)
- 人と文化の交流という「エンジン」(人的・文化的つながりの拡大)
- 多国間協力という「推進力」(国際・地域枠組みでの協調)
長い時間をかけて歴史の大河を進んできた友好の船に、新しい推進力を加えたいというのが、記事全体を貫くメッセージです。
千年以上さかのぼる交流史を振り返る
習主席は、マレー語のことわざ air dicincang tidak akan putus(切り刻んだ水は決して切れない)を引用し、中国とマレーシアの関係は水のように切っても切れないと表現しました。
約1300年前、唐代の僧侶Yijingがマレー半島を巡り、古代王国Kedahに関する最古の記録を残したことや、600年以上前に明代の航海者Zheng Heが7回の遠洋航海のうち5回マラッカに寄港したことも紹介しています。Sam Po Kong Temple や Bukit Cina、Princess Hang Li Poh's Well などが、いまもその記憶を伝える存在だとしています。
さらに、約80年前の中国人民の対日戦争のさなか、マレーシアから集まった Nanyang Volunteer Drivers and Mechanics が中国の雲南省まで赴き、当時の重要な補給路であるビルマ・ロードを守るために危険な任務に就いたエピソードにも触れました。
こうした歴史を踏まえ、両国は喜びも試練も分かち合ってきたとし、これからも共に新しい時代を切り開いていくべきだと訴えています。
急拡大する経済協力:貿易は約1000倍に
習主席によると、2024年の中国・マレーシアの貿易額は 212 billion U.S. dollars(約2120億米ドル)に達し、国交樹立当初と比べて約1000倍に増えました。中国は16年連続でマレーシアの最大の貿易相手となっていると指摘しています。
具体例として、マレーシア産ドリアンが収穫から24時間以内に中国のスーパーに並ぶようになり、中国の消費者に高い人気を得ていることを挙げました。
また、Malaysia-China Kuantan Industrial Park への投資額が累計で over 11 billion yuan(1.5 billion U.S. dollars)を超え、計画された事業が設計能力どおりに生産を始めれば、多くの長期的な雇用が生まれると紹介しています。
今後の重点分野として、記事では次のような協力の方向性が示されています。
- 一帯一路協力計画の着実な実行と、両国の発展戦略の連携強化
- 産業・サプライチェーン協力の強化
- デジタル経済、グリーン(環境)経済、ブルー(海洋)経済、観光経済といった新分野での連携
こうした実務的な協力が、両国関係の「バラスト(重し)」となり、船を安定して前進させる役割を果たすと位置づけています。
ビザ免除と往来拡大:家族のように行き来を
人と人のつながりについて、習主席は「エンジン」という比喩を用いて重要性を強調しました。中国とマレーシアは互いの国民にビザ免除を認めており、2024年には両国間の往来が約600万人に達し、COVID-19流行前の水準を上回ったとしています。
マレーシアを多様なアジア文化が交差する国として紹介する観光プロモーションにも触れ、中国から多くの観光客が休暇や観光でマレーシアを訪れていると述べました。一方で、マレーシアから中国を訪れる人も増え、歴史や現代中国の活気ある姿を体験していると説明しています。
習主席は、両国の人々が家族のように頻繁に行き来することを望むとし、とくに若い世代の間で相互理解と友情を深める人文交流を一層促進すべきだと訴えました。
グローバルサウスと多国間協力で共鳴
習主席は、中国とマレーシアはいずれもアジア太平洋の主要な発展途上国であり、新興市場経済であり、グローバルサウスの一員だと位置づけています。
東アジア協力やAPEC、国連などの枠組みのもとで、国際的な公正と正義を守り、開かれた包摂的な発展を進める上で緊密に連携してきたと述べました。
記事では、中国がマレーシアの BRICS パートナー国としての参加を歓迎していることにも触れています。その参加は、グローバルサウスの連帯と共同前進という歴史的な流れに沿うものであり、開発途上国の共通の利益にかなうと評価しました。
さらに、中国人民の対日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利、国連創設から80年、バンドン会議から70年という節目の年であることに言及し、平和共存五原則とバンドン精神を掲げて、より公正で公平なグローバル・ガバナンスを推進すべきだと呼びかけています。
その一環として、国連を中心とする国際システムや国際法に基づく国際秩序、多国間貿易体制、そして安定したグローバルな産業・サプライチェーンの維持が重要だとしました。
中国・ASEAN関係を「最も実りある協力」と位置づけ
習主席は、中国とASEAN諸国との関係についても詳しく触れました。アジア通貨危機や世界金融危機、COVID-19の流行、経済グローバル化への逆風といった試練を共に乗り越えてきた結果、協力関係はいっそう強靭になったと述べています。
中国は、ASEANの対話パートナーとして初めて Treaty of Amity and Cooperation in Southeast Asia(東南アジアの友好協力条約)に加盟し、自由貿易圏や包括的戦略的パートナーシップもいち早く構築したと説明しました。そのうえで、中国・ASEAN協力は地域で最も成果が上がっていると評価しています。
2024年の中国・ASEAN貿易は 980 billion U.S. dollars を超え、5年連続で互いに最大の貿易相手となったとし、中国・ASEAN自由貿易圏のバージョン3.0に向けたアップグレード交渉も実質的に妥結したと伝えています。
また、ASEAN各国の特色ある産品が中国の多くの家庭に届くようになっている一方で、中国の文学作品やアニメ、映画、テレビドラマなどのコンテンツがASEAN地域の観客を引きつけているとし、文化面での交流の広がりも強調しました。
中国は、ASEANの結束と共同体づくり、地域協力における中心的役割を支持すると表明。2025年のASEAN議長国であり、中国・ASEAN対話関係の調整国を務めるマレーシアが、両者をつなぐより強力な架け橋となることに期待を示しました。
中国経済と「中国式現代化」への自信
署名記事の終盤で習主席は、中国は現代化を通じて、あらゆる面で現代的な社会主義国家を築き、中華民族の復興を進めていると説明しました。その道筋は平和的発展に基づくものであり、互恵協力を通じて世界の平和・発展・共同繁栄に寄与していくとしています。
中国経済については、強固な基礎、多様な強み、高いレジリエンス、成長の大きな潜在力があると自信を示し、長期的にプラス成長を支える基本条件は変わっておらず、上向きのトレンドも変わっていないと述べました。
また、中国は2025年の経済成長率の目標をおおむね5パーセントに設定したと明らかにし、高品質な発展とハイスタンダードな対外開放を続け、他国と発展の機会を分かち合い、地域と世界の経済により大きな安定と確実性をもたらすと強調しました。
「共に繁栄する未来」ビジョンをどう読むか
全体を通じて、習主席は中国とマレーシアが「同じ船に乗る仲間」として、順境でも逆境でも運命を共にし、共に成長していくべきだというメッセージを前面に出しています。
二国間関係では、長い交流の歴史と急拡大する経済・人的往来を土台に、より戦略的で総合的な協力へと発展させる構想が示されました。同時に、中国・ASEAN全体との関係の強化や、グローバルサウス、多国間協力での連携も重ねて強調されています。
地政学的な対立や陣営化、単独主義や保護主義の「逆流」に対し、協力と連帯で応えるべきだというのが、今回の署名記事を貫くメッセージです。中国・マレーシア、そして中国・ASEAN関係の動向は、今後のアジア太平洋の秩序や経済の行方を考えるうえで、引き続き重要なテーマとなりそうです。
Reference(s):
Full text of President Xi Jinping's signed article in Malaysian media
cgtn.com








