中国の南極研究でグリーンエネルギー先行 秦嶺駅の挑戦
中国が南極の最新研究拠点「秦嶺駅」で大規模な再生可能エネルギーシステムを本格稼働させ、南極探査のグリーン転換を先導しようとしています。専門家は、こうした動きが南極全体の脱炭素をめぐる国際議論に新たな選択肢をもたらすと見ています。
南極の新拠点・秦嶺駅で何が起きているのか
秦嶺駅は、中国が南極に設けた最新の研究基地で、2024年2月に運用を開始しました。過酷な南極の環境で観測や研究を行う拠点として、エネルギーをいかに安定的かつ環境負荷を抑えて確保するかが大きな課題となってきました。
この秦嶺駅で2025年3月、初の大規模な再生可能エネルギーによるハイブリッド電源システムが稼働しました。中国の極地エネルギー研究を牽引する中国極地研究センターの孫洪斌(スン・ホンビン)氏は、このシステムによって「極地用エネルギー装備とシステムの中核技術で重要な突破が得られた」と評価しています。
電力の6割超をクリーンエネルギーで賄うハイブリッドシステム
秦嶺駅の新システムは、太陽光や風力、水素エネルギーなどのクリーンエネルギーと、従来の燃料を組み合わせたハイブリッド方式が特徴です。孫氏によると、クリーンエネルギーは基地全体の電力供給の6割以上を占める可能性があるとされています。
また、風も日照もない時間帯でも、およそ2時間半にわたって電力を供給できる設計になっており、その間は研究機器や生活に必要な設備を「グリーン運転」のまま維持することができます。短時間とはいえ、エネルギー供給が不安定になりがちな極地で、再生可能エネルギーだけで運用を続けられることの意味は小さくありません。
こうした仕組みにより、秦嶺駅は南極の観測基地として、エネルギーの安定供給と脱炭素を両立させるための「実験場」としての役割も担い始めています。
多くの基地はいまだ化石燃料依存
孫氏は、南極にある90以上の研究・観測基地の多くが、いまなお電力の9割以上を化石燃料に頼っていると指摘します。発電機用の燃料を大量に輸送し、燃焼によって発電する仕組みが主流で、その結果、南極における二酸化炭素(CO2)排出量は増加傾向にあるといいます。
この状況と比べると、再生可能エネルギーが6割超を占める可能性のある秦嶺駅の取り組みは、南極観測のエネルギーミックス(電源構成)において大きな転換点といえます。孫氏は「南極でいかにクリーンエネルギーへの転換を実現するかは、世界の科学コミュニティにとって極めて重要な課題だ」と強調します。
12年のクリーンエネルギーロードマップ
中国極地研究センターは2024年、他の研究機関と連携し、南極の科学観測基地でクリーンエネルギーを活用するための12年にわたる技術開発の大綱を公表しました。このロードマップは、今後どのような技術を優先的に開発し、段階的に導入していくのかを示した指針となっています。
具体的には、太陽光と風力、水素エネルギーといった複数のクリーンエネルギーを組み合わせながら、極地でも安定的に電力を確保することを目指します。国際的な南極研究組織「科学委員会・南極研究(SCAR)」の元議長、キム・イェドン氏は、中国がこうしたエネルギーシステムを段階的に配備していることにより、「極地での安定した電力供給という難題に取り組み、低炭素な基地運用の現実的な道筋を示している」と評価しています。
キム氏はさらに、これらの取り組みが「国際社会の環境保護の共通認識と合致し、南極探査におけるエネルギー転換に、中国ならではの解決策を提示している」と述べています。
南極発のエネルギー転換が示すもの
気候変動や脱炭素がグローバルな課題となるなか、遠く離れた南極の研究基地も例外ではありません。秦嶺駅の事例は、極限環境で再生可能エネルギーをどこまで活用できるのかを試す「実証プロジェクト」として、各国の南極基地や将来の月・火星探査などにも影響を与えうると考えられます。
一方で、南極全体のエネルギー転換を進めるには、多くの国や地域の研究機関が、技術や知見を共有しながら取り組みを広げていく必要があります。中国が打ち出した12年のロードマップと秦嶺駅での実証は、その議論を加速させるきっかけの一つになりそうです。
南極で進むエネルギーの実験は、私たちの日常とは遠い話のようでいて、「これから世界はどのようなエネルギーで動いていくのか」という問いを静かに投げかけています。スマートフォンでニュースを追う私たちにとっても、その動きから目を離せなくなりつつあります。
Reference(s):
China leads green energy transition in Antarctic exploration: Experts
cgtn.com








