習近平主席が語る「鉄の友情」 中国・カンボジア関係のビジョンとは
2025年4月のカンボジア国賓訪問を前に、中国の習近平国家主席が現地メディアに寄稿した文章「Together We Strive, Together We Thrive(ともに努力し、ともに繁栄を)」が公開されました。記事では、中国とカンボジアの「鉄の友情」の歴史を振り返りつつ、「新時代の安定的で持続可能な共同の未来」をどう築くかを、具体的な提案とともに示しています。
本稿では、この寄稿の主なポイントを日本語で整理し、中国・カンボジア関係やアジア外交の文脈から読み解きます。
カンボジア訪問前に示された「共同の未来」ビジョン
習主席の寄稿は、クメール正月の時期に合わせ、カンボジアの英字紙Khmer Times、中国語紙Jian Hua Daily、ニュースサイトFresh Newsなどに掲載されました。タイトルは「Together We Strive, Together We Thrive: Toward a Stable and Sustainable China-Cambodia Community with a Shared Future in the New Era」。中国とカンボジアが「ともに努力し、ともに繁栄する」関係へ進む決意を強調しています。
習主席は冒頭で、「カンボジアを訪れることは、良き友人の家を訪れるような気持ちだ」と述べ、クメール正月を祝うメッセージを送っています。自身にとって9年ぶり2度目の訪問であり、この訪問をきっかけに「中国・カンボジア共同の未来を持つ共同体」の構築を一段と進めたいとの考えを示しました。
2000年に及ぶ交流と「義」を重んじる友情
「共同の未来」は、長い歴史の積み重ねの上に成り立つ——習主席はまず、両国の交流が2000年にわたって続いてきたことを強調します。
中国の唐代には、カンボジアにあたる真臘(チェンラ)の王族が長安(現在の西安)を訪れ、「賓漢(賓客)」として丁重にもてなされたと紹介。海上シルクロードを通じて、中国の陶磁器や漆器がカンボジアに渡り、逆にカンボジアの香辛料や生糸が中国で人気を集めたことが、バイヨン寺院の浮き彫りなどからも分かると述べています。
さらに、多くのカンボジアの僧侶が中国を訪れて仏教を伝え、中国の元代の外交官・周達観が著した『真臘風土記(The Customs of Cambodia)』が、今もカンボジア史研究の重要資料となっていることにも触れています。こうした歴史を通じて、中国文明とクメール文明は互いに刺激し合いながら繁栄してきた、というのが習主席の見立てです。
もう一つの柱として強調されるのが、「友情と義(正義)」です。記事では、毛沢東主席や周恩来総理と、シハヌーク国王によって形づくられた戦後の関係に言及。1955年のバンドン会議での出会いをきっかけに、1958年にはカンボジアが困難の中で中華人民共和国との国交樹立に踏み切ったと振り返りました。
中国本土がカンボジアの「外国勢力による侵略と、主権・独立を守る正義の闘争」を支持してきたこと、シハヌーク国王が約40年にわたり中国で暮らし、中国とカンボジアの友情をたたえる歌を数多く作ったことなどを紹介。2020年に中国本土がモニーク・シハヌーク前王妃に「中華人民共和国友誼勲章」を授与したことにも触れ、「鉄の友情」と表現しています。
新型コロナウイルスの流行時には、サムデック・テチョ・フン・セン当時首相が厳しい寒さの中で北京を訪問し、中国本土も医療チームや医療物資をカンボジアに送ったと強調。複雑な国際情勢の中で、双方が互いの「核心的利益」を支持し合い、「国際的な公平と正義」を守ってきたとしています。
経済協力:インフラから農業まで広がる連携
習主席は、経済面での協力が「平等と互恵」に支えられてきたと述べます。
中国本土は長年にわたり、カンボジアにとって最大の貿易相手国かつ最大の投資相手となってきました。中国・カンボジア自由貿易協定の下で、バナナ、マンゴー、ロンガンといった高品質なカンボジア産農産物が中国の家庭に広がりつつあるとしています。
両国協力で整備されたシアヌークビル経済特区には、200社を超える国際企業が進出し、カンボジアの産業近代化の基盤になっていると評価。さらに、中国の支援による「カンボジア初の高速道路」「初の河谷高架橋」「最大の発電所」「最大のスタジアム」などのインフラ整備が、現地の暮らしと長期的な発展に具体的な利益をもたらしていると述べています。
農業分野では、中国人専門家が現地での広範な調査をもとに、カンボジアの近代農業発展計画の策定を支援。こうした枠組みを総称して「中国・カンボジア ダイヤモンド六角協力」がカンボジアの発展を後押ししていると位置づけました。
文化財保護と人への投資:目に見えにくい協力も強調
記事の中で、習主席は「包摂性と相互学習」に基づく協力として、文化財保護や人的交流も詳しく取り上げています。
過去30年、中国本土からは考古学や地質、文化遺産保護、建築、芸術などの専門家が派遣され、アンコール遺跡群のチョウ・サイ・テヴォダ寺院やタ・ケウ寺院、古代王宮などの修復に携わってきたと説明。アンコールの遺産を「人類文明の宝石」と表現し、その輝きを取り戻すプロセスを強調しました。
一方で、カンボジアを訪れる中国人観光客が増え、カンボジアの人々の間でも中国語を学ぶ動きが広がっていると紹介。中国本土の援助によって建設された「友好の道路」や飲料水井戸、「中国・カンボジア友好貧困削減模範村」プロジェクトなども挙げています。
なかでも、伝統中国医学(中医)チームの支援により、聴覚障がいのある少女が初めて「ママ」と発音できるようになった事例や、車椅子利用者が再び歩けるようになったエピソードを取り上げ、協力の成果が個々の人生にも及んでいると印象づけました。
アジアの「奇跡」から「新たな出発点」へ
習主席は、ここ半世紀近く、アジアが概ね平和と安定を維持し、急速な経済成長を達成してきたことを「世界の発展史におけるアジアの奇跡」と表現します。
そのうえで、「百年に一度の大変動」が加速する中で、アジアは今や「集団的台頭の新たな出発点」に立っていると指摘。中国本土としては、「親誠恵容」(親しみ・誠実・互恵・包摂)の理念と、「近隣諸国との友好・パートナーシップを発展させる政策」に基づき、周辺国との友情と協力を深化させると述べています。
具体的には、中国式現代化の成果を周辺国にも広く共有し、地域の平和と安定を守りながら、アジア全体の現代化をともに進めると強調しました。また、グローバル発展イニシアチブ(Global Development Initiative)、グローバル安全保障イニシアチブ(Global Security Initiative)、グローバル文明イニシアチブ(Global Civilization Initiative)という3つの構想を、カンボジアとともに具体化していく決意も示しています。
習主席が示した5つの行動提案
寄稿の後半では、今後の中国・カンボジア関係をどう発展させるかについて、「〜しよう」と呼びかける形で5つの方向性が提示されています。その要点を整理すると、次の通りです。
- 1. 政治的信頼を一段と高める
首脳レベルを含むハイレベル交流を頻繁に行い、「新時代の中国・カンボジア共同の未来を持つ共同体」の戦略的青写真を描く。中国本土は、カンボジアが自国の状況に合った発展の道を自主的に選ぶこと、主権・独立・領土一体性を守ること、国際社会でより大きな役割を果たすことを支持すると明言しています。また、外交や国防など戦略的な問題での意思疎通を強め、外部勢力による内政干渉や離間工作に反対する姿勢も示しました。 - 2. より質の高い互恵協力を拡大する
発展を最優先とし、人々の利益を中心に据えることを強調。中国・カンボジア政府間調整委員会の役割を最大限に生かし、一帯一路構想とカンボジアの「ペンタゴナル戦略」を連携させ、「産業・技術回廊」や「魚と米の回廊」の建設を進めるとしています。先端製造業、グリーン成長、デジタル経済などの分野で協力を深め、「ダイヤモンド六角協力」をさらに輝かせるとしました。 - 3. より大きな安全をともに確保する
双方の発展にとって安全な環境をつくるため、外部勢力の干渉や分裂活動に対抗する協力を強化。「カラー革命」を警戒・防止し、一帯一路関連の主要プロジェクトの安全確保や、合同演習・訓練、緊急対応などでの協力を進めるとしています。電気通信・サイバー詐欺などの犯罪への取り締まりでも連携し、「共通・総合・協力・持続可能な安全保障」のビジョンに基づき、地域と世界の平和と安定を守ると強調しました。 - 4. 人的・文化交流をさらに活発にする
連帯と調和を掲げ、文化対話や統治経験の共有を進めると提案。文化、観光、若者交流、文化遺産の保護・修復など、多様な分野で協力を拡大し、人と人とのつながりを強めるとしています。そのうえで、「アジアの価値」と「人類共通の価値」をともに提唱していくと述べました。 - 5. より高いレベルで戦略的協調を行う
平和共存五原則やバンドン精神から知恵をくみ取り、ランカーングメコン地域で「平和と繁栄の共同の未来」を目指すとしています。覇権主義や強権政治、陣営対立に反対し、発展途上国を含む双方と他の国々の共同利益を守ると強調。多極化した「平等で秩序ある世界」と、包摂的で「皆に利益をもたらす」経済グローバル化を支持し、保護主義に反対しながら、開放と協力の国際環境を守るとしました。
「精錬された金」のような友情を強調
寄稿の締めくくりで、習主席は中国の詩句を引用し、「真の友情は、精錬された金のように、時間の試練に耐える」と表現しました。
そのうえで、中国・カンボジアの鉄の友情は「風雨と歳月の試練を経てなお、初心に忠実であり続けている」と強調。今後も平和を守り、発展を追求し、共通の繁栄を実現するために協力し、「新時代の中国・カンボジア共同の未来を持つ共同体」の構築を着実に進めると約束しました。
不確実性が高まる世界にあって、中国本土とカンボジアの関係を「安定」と「確実性」をもたらす要素として位置づけた点も印象的です。カンボジア訪問を前に発表されたこのメッセージは、両国関係の特別さを再確認すると同時に、アジアの将来像をめぐる中国本土の考え方を読み解くうえでも重要な手がかりと言えそうです。
Reference(s):
Full text of President Xi Jinping's article in Cambodian media
cgtn.com








