上海モーターショー2025:低炭素・知能化モビリティで示した自動車産業の現在地
2025年の上海モーターショーは、低炭素と知能化(インテリジェント)モビリティに焦点を当て、過去最大規模で世界の自動車産業の「いま」を映し出しました。本記事では、日本語で国際ニュースを追う読者向けに、このイベントのポイントとその意味を整理します。
過去最大規模となった2025年上海モーターショー
今回の上海モーターショーは、水曜日に開幕し、東部の大都市・上海で10日間にわたって開催されました。26の国と地域から、世界的な自動車メーカーやサプライチェーン関連企業が約1,000社集まり、同イベント史上最大の規模となりました。
会場には約1,300台の車両が展示され、そのうち新エネルギー車(電気自動車などの低炭素車)が7割以上を占めたとされています。会期中に世界初公開・会場初公開となる新型車も100車種以上が登場し、海外のディーラーも100を超える国と地域から上海に集まりました。
主催は、中国国際貿易促進機構の上海機関であるCCPIT上海と、中国汽車工業協会です。CCPIT上海の副会長・顧春亭氏は、展示車両の規模や新エネルギー車比率の高さ、海外からの参加の多さを強調し、上海モーターショーが国際的な技術発表とビジネス交流の場になっていると説明しました。
低炭素・知能化モビリティが主役
今回のテーマの中心にあるのが、低炭素と知能化モビリティです。新エネルギー車が7割以上という構成そのものが、自動車産業の重心が内燃機関から電動化へと移っていることを示しています。
会場では車両そのものだけでなく、車載通信を活用したインテリジェント・コネクティビティ技術や、各種センサーによる安全・セキュリティシステム、自動車金融サービスなども幅広く展示されました。クルマ単体ではなく、「移動」と「デジタル」と「金融」が一体となったモビリティ・エコシステムが前面に出てきていることが特徴です。
サプライチェーンに光を当てた新パビリオン
今年の上海モーターショーの大きな特徴の一つが、初めて設置された「自動車技術・サプライチェーンパビリオン」です。このパビリオンでは、自動車産業全体の技術革新や成果が一堂に会しました。
前回開催時と比べ、このセクションの出展企業数は大きく増加しました。半導体やチップなどの分野で知られる国内外の有力企業が約50社、今回のショーで新たに出展しています。完成車メーカーだけでなく、電子部品、半導体、ソフトウェアといったサプライチェーンの上流企業が主役の一角を担い始めていることがうかがえます。
電動化と知能化が進むなかで、自動車は「走るコンピューター」とも呼ばれます。その基盤となる半導体や電池技術にスポットライトを当てた今回の構成は、産業構造の変化を象徴していると言えるでしょう。
トヨタ:上海にEV専用工場、レクサスEVに大型投資
今回のモーターショー開幕前には、複数の大手メーカーが相次いで戦略的な発表を行い、イベントへの期待感を高めました。その一つが、日本のトヨタ自動車による電気自動車(EV)戦略です。
トヨタは上海市との間で、同市にEV専用の完全子会社工場を設立する合意を締結しました。これは、自動車市場として世界最大規模を誇る中国本土における存在感を強化するための一手と位置づけられています。
同時に、上海市との戦略協力協定の中で、トヨタはレクサスブランドのEVおよびEV用電池の研究開発・生産・販売に焦点を当てるプロジェクトに対し、総額146億元(約20億ドル)を投資することを約束しました。
トヨタの中国事業の最高経営責任者であり、トヨタモーター(中国)投資有限公司の董事長でもある上田達郎氏は、現地サプライヤーとの連携を強化し、中国の新エネルギー車産業チェーンが持つ競争力を世界に示すとともに、中国発の技術の世界的な展開を共同で推進したいとの考えを示しました。
フォルクスワーゲン:中国本土市場向けに30車種超を投入へ
ドイツの大手メーカーであるフォルクスワーゲンも、今回の上海モーターショーで存在感を示しました。同社は過去40年以上にわたり中国本土市場に深く根を下ろしてきたとされ、今回のショーには50車種以上を出展しました。
さらに同社は、今後3年間で中国本土市場向けに30車種を超える新モデルを投入する計画も明らかにしました。これは、電動化やソフトウェアの進化を背景に、多様なニーズに対応するラインアップを拡充する狙いがあるとみられます。
フォルクスワーゲンの中国乗用車ブランドCEOであるステファン・メハ氏は、中国市場が技術導入に非常に適しており、同社は長年この市場に深く入り込み、豊富なローカル知見を蓄積してきたと述べました。そのうえで、中国本土で培った技術やビジネスモデルを世界市場にも展開していく考えを示しています。
電池イノベーション:CATLの「デュアルコア構造」
電動化時代の競争軸として欠かせないのが電池技術です。今回の上海モーターショーでは、電池メーカーのContemporary Amperex Technology Co. Limited(CATL)が、新しいデュアルコア構造技術を発表しました。
この技術では、一つのバッテリーを二つの独立したエネルギーゾーンに分割します。それぞれのゾーンで異なる材料を用いたセルを採用し、それぞれの特性を最大限に生かす設計になっているとされています。例えば、一方はエネルギー密度重視、もう一方は出力や耐久性重視といった形で、用途や走行シーンに応じて性能を最適化できる可能性があります。
電動車の航続距離や充電時間、コストを左右する電池分野で、構造そのものを工夫するアプローチが前面に出てきたことは、今後の技術競争の方向性を示す一例と言えるでしょう。
インテリジェント技術・安全・金融まで「クルマの外側」も充実
今回の上海モーターショーは、車両そのものだけでなく、周辺技術やサービスの展示も充実していました。会場では、車とインターネットを連携させるインテリジェント・コネクティビティ技術や、サイバー攻撃や不正アクセスから車両を守るセキュリティシステム、事故リスクを低減する先進安全技術が紹介されました。
さらに、自動車ローンやリース、保険などの自動車金融サービスも展示対象となり、購入から利用、アフターサービスまでを含む包括的なモビリティ体験が提案されました。クルマが単なる「移動手段」から、デジタルサービスや金融と結びついたプラットフォームへと変化しつつある姿が浮かび上がります。
日本の読者が押さえたい3つのポイント
今回の上海モーターショーは、中国本土市場の動きというだけでなく、世界の自動車産業全体の方向性を示すものでもあります。日本の読者にとって重要なポイントを3つに整理すると、次のようになります。
- 1.電動化は「特別枠」ではなくメインストリームに
展示車の7割以上が新エネルギー車という構成は、電動車がもはや特別なカテゴリではなく、マーケットの中心に近づいていることを示しています。 - 2.サプライチェーンと半導体の重要性が一段と高まる
自動車技術・サプライチェーンパビリオンに、半導体やチップメーカーを含む約50社が新規に出展したことは、クルマの価値の源泉がハードウェアとソフトウェアの組み合わせにあることを改めて示しました。 - 3.グローバルメーカーは中国本土を「技術とビジネスの実験場」に
トヨタの大規模なEV投資や、フォルクスワーゲンの30車種超の新モデル計画などからは、中国本土市場を起点に技術や商品を磨き、その成果を世界に展開していく動きが読み取れます。
モビリティの未来をどう捉えるか
2025年の上海モーターショーは、低炭素・知能化モビリティが、もはや「将来像」ではなく具体的な製品とサービスとして大量に登場し始めていることを可視化しました。
日本に暮らす私たちにとっても、次にクルマを選ぶとき、あるいは都市の交通やエネルギー政策を考えるとき、こうした国際的な動きは無関係ではありません。電動化、コネクテッドカー、そしてサプライチェーンの再編が、日常の移動体験や仕事、投資の判断にも少しずつ影響を与えていく可能性があります。
今回の上海モーターショーで示されたトレンドを、自分自身の生活やキャリアと重ね合わせながら、「これからどんなモビリティの未来を望むのか」を考えてみるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
2025 Shanghai Auto Show highlights low-carbon, intelligent mobility
cgtn.com








