中国が月面サンプルを米国や日本に開放 宇宙分野の国際協力はどこへ向かう?
中国国家航天局は木曜日、月面から持ち帰った岩石サンプルを米国、日本、フランス、ドイツ、英国、パキスタンの研究者に分析用として提供すると発表しました。中国の月探査計画が、国際協力を通じて存在感を高めようとしていることを示す動きです。
月面サンプルを国際社会に開放
今回の発表では、中国の月探査ミッションで回収した月面サンプルを、複数の国の研究機関が借り受けて分析できるようにする方針が示されました。これは、中国が自国の月探査成果を世界の科学コミュニティと共有し、月科学の研究を国際的に前進させる狙いがあるとみられます。
同時に、この動きは、関税をめぐる対立などで緊張が続く米中関係においても、宇宙分野での協力が完全には途絶えていないことを示すものだと受け止められています。
NASA資金を受ける米大学も参加
中国側がサンプルの貸与を認めた7つの機関の中には、米航空宇宙局(NASA)の資金提供を受けている米国のブラウン大学とニューヨーク州立大学ストーニーブルック校も含まれます。
こうした米国の大学が中国の月面サンプルを直接扱うことになることで、科学的な成果の拡大だけでなく、政治的な緊張とは別次元で進む米中間の科学交流という側面にも注目が集まります。
嫦娥5号・6号が拓いた中国の月探査
中国は2020年の嫦娥5号(チャンアー5号)ミッションで月面から岩石を採取し、旧ソ連と米国に続いて、月面サンプルを地球に持ち帰った3番目の国となりました。
さらに、2024年6月に完了した嫦娥6号ミッションでは、地球からは見えない月の裏側から初めて岩石サンプルを持ち帰ることに成功しました。月の裏側の物質はこれまで直接採取されてこなかったため、今後の分析で月の成り立ちや進化に関する新たな知見が得られると期待されています。
呉偉仁氏「かつて閉じていた中国が開き、米国は閉じつつある」
中国の月探査計画のチーフデザイナーである呉偉仁氏は、ロイターとのインタビューで、宇宙協力をめぐる雰囲気の変化について次のように述べています。
かつては米国が開かれていて中国は閉じていたが、現在はその立場が逆転し、中国が開放的になっている一方で、米国はかつてより閉じた姿勢を見せていると指摘しました。その背景として、中国の総合的な国力の向上と、それに伴う自信の高まりがあると強調しています。
また呉氏は、米国の「孤立主義」の高まりは、米国自身の宇宙開発の目標達成にもプラスにはならないとの見方も示しました。今回の月面サンプルの国際提供は、中国が自らを開かれた宇宙パートナーとして位置づけようとしていることの具体的な表れだと言えます。
技術協力の焦点は月の南極
呉氏は、中国のメディアであるCGTNのインタビューでも、今後の国際協力の鍵は技術レベルでの連携にあると語っています。共通の計画を各国が協力して策定し、実行していく枠組みが重要だという考え方です。
とくに、月の南極付近の探査では、厳しい自然条件が大きな課題になります。太陽光が十分に当たらないことによる電力供給の難しさや、昼夜で大きく変化する極端な温度などをどう克服するかが問われます。呉氏は、こうした技術的なハードルは単独の国だけではなく、複数の国が協力して乗り越える必要があるとしています。
欧州・南米との連携、広がる参加国
中国の月探査計画はすでに、欧州宇宙機関(ESA)やアルゼンチンなど南米の国々と協力を進めているとされています。呉氏は、今後さらに多くの新興国がこの取り組みに加わるとの見通しも示しました。
今回、米国や日本、欧州諸国、パキスタンの研究者に月面サンプルが開放されることで、中国主導の月探査プロジェクトが「一国の計画」から、より多くの国々が関わる国際的な研究プラットフォームへと拡大していく可能性があります。
今回の動きが示す3つのポイント
- 宇宙分野で続く米中協力の細いパイプ:関税などをめぐる対立が続く一方で、月面サンプルの共有は、科学技術の分野では協力の余地が残されていることを示します。
- 科学コミュニティへの開放姿勢:米国、日本、欧州、パキスタンなど複数の国の研究者が同じサンプルを分析することで、月科学の成果を共有しやすくなり、各国の強みを持ち寄った研究が進みやすくなります。
- 「競争」から「協調」へのシグナル:月の南極や裏側といった未開の領域を探査するには、高度な技術と長期的な投資が不可欠です。単独の国だけで進めるのは難しく、国際協力で課題を乗り越えていく流れが強まる可能性があります。
日本も対象国に含まれていることから、日本の研究者が中国の月面サンプルを用いた国際共同研究に参加する余地も広がりそうです。月の科学をめぐる国際協力が今後どのような形で進んでいくのか、引き続き注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








