習近平氏、AIの「健全で秩序ある発展」を強調 安全・公平性に焦点
中国の習近平氏(中国共産党中央委員会総書記)が、人工知能(AI)の「健全で秩序ある発展」を強く呼びかけました。政治局の集団学習を主宰した場で、安全性と公平性を重視しつつ、AIを国の戦略技術として総合的に育てていく方針を示しています。
政治局の集団学習でAIをテーマに
習近平氏は、今週開かれた中国共産党中央政治局の集団学習でAIをテーマに取り上げ、AIの発展を「新たな技術革命と産業変革を先導する戦略技術」と位置づけました。
会合では、中国・陝西省の西安交通大学の鄭南寧教授が講義を行い、AIの現状と課題、政策への提言を説明。政治局のメンバーはこれを聴講したうえで討議を行い、その後に習氏が総括として方向性を示しました。
習氏は、中国共産党中央がAIを重視し、ここ数年でトップレベルの設計(トップダウンの戦略づくり)と実行を強化してきた結果、中国全体のAI能力が体系的に向上していると評価しました。一方で、基礎理論やコア技術などに「なおギャップや不足がある」と課題も率直に認めています。
「有益・安全・公平」なAI開発を強調
今回の発言で習氏が繰り返し用いたキーワードが、「有益」「安全」「公平」です。AIの急速な進化を踏まえ、次のような点が強調されました。
- AIの発展方向を、人類全体にとって有益で、リスクを抑えた安全なものにすること
- 特定の企業や一部の地域だけが利益を独占しない、公平な仕組みを目指すこと
- 技術開発とガバナンス(ルールづくり)双方で主体性を握ること
習氏は、AI開発とAIガバナンスの「主導権」を確実に握る必要性を訴え、開発だけでなく、規制や倫理のルール作りでも積極的に関与していく姿勢を示しました。
基礎研究とコア技術への集中投資
理論・手法・ツールで突破口を
技術面ではまず、「基礎理論・方法論・ツール」でのブレイクスルー(飛躍的進展)の必要性が強調されました。習氏は、ここで優位性を築くことがAI分野での競争力につながると指摘しています。
特に、
- 高性能な半導体チップ
- AIを支える基盤ソフトウェア
といったコア技術への継続的な投資が求められました。目指すのは、「独立性が高く、制御可能で、ソフトとハードが協調して機能するAI基盤システム」です。
データ・産業・アプリの強みを生かす
習氏は、中国には豊富なデータ資源、幅広い産業体系、多様な利用シナリオ、巨大な市場があると指摘し、これらを最大限に生かすべきだと述べました。そのための具体的な方向として、
- 企業主導で、産学研とユーザーが一体となったイノベーション体制をつくる
- AI技術の革新と産業の革新を深く結びつける
- 従来産業の高度化と、新しい戦略的新興産業・将来産業の開拓にAIを活用する
といった点が挙げられました。
さらに、AIを動かす「計算力インフラ」(データセンターや高性能コンピューティングなど)を計画的に整備し、データ資源の開発・利用・共有を一段と進めることも重要だとしています。
政策・金融・人材の総合支援
技術と産業を支える環境づくりとして、習氏は次のような政策支援の必要性を示しました。
- 知的財産権、税制、政府調達、設備開放などに関する政策整備
- 科学技術分野への金融サービスを一層強化すること
人材面では、学校教育の全段階においてAI教育を推進し、社会全体のAIリテラシー(理解と活用能力)を高める方針が打ち出されました。高い能力を持つ人材を継続的に育成するため、
- 研究支援の仕組み
- キャリア形成の制度
- 人材評価の仕組み
を充実させ、能力を発揮できるプラットフォームや環境を整えることが求められています。
リスクと倫理: AIガバナンスの強化
習氏は、AIがもたらすのは「前例のない機会」であると同時に、「前例のないリスクと課題」でもあると述べました。そのうえで、次のようなガバナンス強化を呼びかけています。
- AIに関する法律・規則・政策体系・利用基準・倫理指針の策定と改善を急ぐ
- 技術モニタリング、リスクの早期警戒、緊急対応の仕組みを整備する
- AIシステムの安全性・信頼性・制御可能性を確保する
技術開発を加速しながらも、社会への影響や倫理的な側面を軽視しない、という姿勢を国内外に示したかたちです。
国際協力と「グローバル公共財」としてのAI
習氏はまた、AIは人類全体の利益に資する「グローバルな公共財」となり得ると強調しました。そのために、広範な国際協力が必要だとし、特にグローバル・サウス諸国の技術能力向上を支援し、世界のAI格差を縮小することの重要性に言及しました。
さらに、各国・各地域が
- 開発戦略
- ガバナンスのルール
- 技術標準
を調和させ、なるべく早い段階で広い合意に基づくグローバルなAIガバナンス枠組みを形成すべきだと呼びかけています。
日本と世界にとっての意味合い
今回の発言は、中国がAIを国家戦略の中核に据え、技術・産業・人材・ルールづくりを一体で進めていく姿勢を改めて示したものです。これは、AI分野での国際的な競争と協調の両面に影響を与える可能性があります。
日本を含む各国にとって、
- 基礎研究やコア技術への継続的な投資
- 産業への実装と社会受容のバランス
- 倫理・法制度・国際ルールにどう関与するか
といった論点は共通しています。AIを「便利な技術」として受け取るだけでなく、「どのような方向性で育て、どのようなルールで使うのか」という視点から、自国の戦略を見直す契機にもなりそうです。
AIが日常生活や仕事の現場に深く入りつつある今、各国のトップがどのような言葉でAIの未来を語るのかは、世界のルール形成やビジネス環境にも直結します。習氏のメッセージを読むことは、アジア発のAI戦略と国際ガバナンスの行方を考える手がかりにもなるでしょう。
Reference(s):
Xi Jinping urges promoting healthy, orderly development of AI
cgtn.com








