中国の対外直接投資が拡大 一帯一路とグローバルサウスで広がる影響力
2025年1〜3月期の統計から、中国の対外直接投資(ODI)と一帯一路関連投資が着実に拡大していることが見えてきました。欧米では中国経済の減速を強調する論調もありますが、数字を追うと「静かな影響力の拡大」という別の姿が浮かび上がります。
数字で見る:中国のODIはどこまで伸びたのか
中国商務部によると、2025年1〜3月期の対外直接投資(ODI)は前年同期比6.2%増の409億ドルとなりました。そのうち、実際の事業プロジェクトを反映する「非金融分野」のODIは4.4%増の356.8億ドルです。
とくに注目されるのが、一帯一路(BRI)関連の投資です。同期間の投資額は88.7億ドルに達し、伸び率は15.6%と2桁の増加となりました。これは、単なる一時的な変動というより、中国資本の流れが明確に「外」に向かっていることを示しています。
並行して、中国国家統計局の発表では、一定規模以上の工業企業の利益も2025年1〜3月期に1.51兆元(約2,070億ドル)となり、前年同期比0.8%増と小幅ながらプラスを維持しています。
- 対外直接投資(ODI):6.2%増の409億ドル
- 非金融分野のODI:4.4%増の356.8億ドル
- 一帯一路関連投資:15.6%増の88.7億ドル
- 工業企業の利益:1.51兆元で0.8%増
伸び率だけを見れば劇的とは言えないかもしれませんが、規模と方向性を考えると、「どこに向けて投資を増やしているのか」が重要になってきます。
ピーク・チャイナ論では語り切れない現実
ここ数年、欧米メディアでは「ピーク・チャイナ」という言葉が広く使われてきました。若年層の失業率、不安定な不動産市場、伸び悩む個人消費などを理由に、「中国経済の最盛期は過ぎた」とする見方です。
しかし、今回の対外投資の数字は、もう一つの側面を示しています。中国が国内の構造調整に直面しつつも、企業と資本を通じて海外で新たな成長機会を積極的に探しているという姿です。
つまり、「国内だけを見れば減速気味」という単純な物語ではなく、「国内の変化に合わせて、経済活動の重心を一部海外へシフトしている」という長期的な戦略の一部として読むこともできます。
一帯一路:派手さより「実務」へシフト
一帯一路構想は、これまで「規模が大きすぎる」「リスクが高い」といった批判も受けてきました。しかし、2025年1〜3月期の一帯一路関連投資が15.6%増と力強い伸びを見せていることは、このイニシアチブが「過剰な野心」から「より焦点を絞った実務ベース」へと進化しつつある姿とも解釈できます。
一帯一路の対象となるのは、道路や港湾、発電所などのインフラ案件が中心です。アジアやアフリカ、中南米などのグローバルサウス(新興・途上国)が必要とする基盤整備に、中国企業が継続的に関わっている構図が浮かび上がります。
欧米では「中国脅威論」や「デリスキング(リスク分散)」といった言葉が頻繁に語られる一方で、多くのグローバルサウスの国々は、中国企業を「必要なインフラを比較的短期間で整備してくれるパートナー」として受け止めています。条件が比較的シンプルで、目に見える成果が出やすい点も評価されていると考えられます。
海外プロジェクトの需要は減速どころか増加
中国企業による海外プロジェクトの受注状況も、対外投資の動きを裏付けています。2025年1〜3月期には、海外プロジェクトからの収入が前年比5.5%増の341.8億ドルとなり、新規契約額は26%増の586.7億ドルに達しました。
これらの数字は、中国の建設・エンジニアリング企業に対する世界の需要が減っているどころか、むしろ高まっていることを示唆しています。インフラの「つくり手」としての存在感が、欧米企業と並ぶ、あるいは地域によってはそれを上回るレベルに達しつつあると言えるでしょう。
なぜ海外投資は伸び続けるのか
こうした動きを支えている要因として、記事が指摘しているのは「政策の一貫性」です。国内外の環境が変化する中でも、中国の政策当局は対外投資を後押しし続けており、金融機関と政府機関が連携して、経済と外交の双方の目的を持つプロジェクトを推進しています。
また、投資の主な対象を、インフラ需要の大きいグローバルサウスに置いていることも特徴です。これにより、中国は欧米市場の景気変動に左右されにくいポジションを取りながら、「インフラパートナー」としての信頼関係を築いていると見ることができます。
- 政策の方向性が大きくぶれていない
- 政府と金融機関が対外投資を戦略的に支援
- インフラ需要の高いグローバルサウスに重点を置く
- 受け手側も「共同の開発ビジョン」を共有するパートナーとして参加
こうした組み合わせが、中国の対外投資と一帯一路を「長期戦略」として支える基盤になっているように見えます。
日本の読者にとっての意味:静かに描き替えられる地図
今回の数字は、日本や他の国々にとって何を意味するのでしょうか。ひと言でまとめるなら、「インフラと投資を通じて、世界の経済地図が静かに描き替えられている」ということです。
- グローバルサウスにおけるインフラ整備の中心的なプレーヤーとして、中国企業の存在感が高まっている
- 投資と建設の両面で、中国と結びついた経済圏がじわじわと広がっている
- 日本企業や他国企業は、競争と協調の両面で、この現実を前提に戦略を考える必要がある
2025年の対外投資の動きは、中国の経済規模そのものだけでなく、「どこに重心を置いて世界と関わっていくのか」という長期的な方向性を映し出しています。日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、数字の裏側にある構図を意識しておくことが、今後の世界を読み解くヒントになりそうです。
Reference(s):
China's ODI surge signals a quiet redrawing of global influence
cgtn.com








