中国のAI開発が加速 上海AIスーパーとグローバル・サウス協力
中国が人工知能(AI)開発を加速させる中、上海でAI資源を一か所に集約したプラットフォーム「AIスーパー」が始動しました。習近平国家主席が現地を視察し、グローバル・サウスとの協力も視野に入れた動きとして注目されています。
上海に登場したAIスーパーとは
2025年2月、上海で人工知能エコシステムのための新しいプラットフォームが公開されました。現地ではAIスーパーと呼ばれ、開発に必要なさまざまな資源にワンストップでアクセスできる点が特徴です。
このプラットフォームでは、深層学習モデルの一つであるDeepSeekモデルのほか、政府から補助を受けた計算資源、高品質な学習用コーパス(大量のテキストデータ)などが提供されています。開発者は個別に契約先を探すことなく、ここに来れば主要なAIリソースをまとめて利用できる設計になっています。
AIスーパーを運営するのは、上海基盤モデルイノベーションセンターです。同センターは大規模AIモデル(基盤モデル)を育成するインキュベーターであり、現在は100社を超える企業が拠点を置いています。
約6万平方メートルのインキュベーター
センターは延べ約6万平方メートルのスペースを持ち、AIスタートアップや研究チームの集積拠点として機能しています。エコシステムの成長を支えるため、次のような支援策が用意されています。
- 計算資源に対する補助金などのコンピューティング支援
- 資金調達につなげるネットワークの提供
- オープンデータプラットフォームの整備
- これらを含む合計18の支援ポリシー
物理的なスペースと資金・データ・計算資源を組み合わせることで、AI開発の「インフラ」を一体的に提供する狙いが見えます。
習近平主席が示したAI戦略の方向性
今週、習近平国家主席は上海を視察する中で、この基盤モデルイノベーションセンターを訪れました。視察の場で習主席は、上海がAI開発とガバナンス(運用ルールや制度設計)の両面で先導的な役割を果たすよう求めました。
あわせて、世界的な影響力を持つ科学技術イノベーションの高地づくりを加速させるよう呼びかけ、AIをその中心的な柱の一つと位置づけました。
この視察は、中国の指導部が人工知能に関する専用の学習会を開催してから4日後に行われました。学習会の場で習主席は、AIという戦略分野で主導権を握る「先手」を取る必要性を強調したとされています。
開発とガバナンスを同時に進める姿勢
今回の発言からは、単にAIの応用を急ぐだけでなく、ガバナンスを含めたルールづくりも重視する姿勢がうかがえます。巨大な計算資源とデータを持つ拠点を整備しつつ、その利用や社会への影響をどう管理するかが、今後の大きな論点になりそうです。
グローバル・サウス協力との関係
中国のAI戦略は、グローバル・サウスとの協力を強化する手段としても位置づけられています。AIスーパーのように、モデル・計算資源・データをまとめて提供できる仕組みは、資源が限られた国や地域の開発者にとっても重要なインフラになりうるからです。
例えば、将来的にこうしたプラットフォームが海外のパートナーにも開かれた場合、次のような形で協力が進む可能性があります。
- グローバル・サウスの開発者が、低コストで高度なAIモデルや計算資源にアクセスできる
- 現地の言語や課題に合わせたアプリケーションを、現地の開発者と共同で開発しやすくなる
- データやノウハウの共有を通じて、南南協力(途上国同士の協力)の新しい形が生まれる
中国がAIの「基盤インフラ」を整備し、それをパートナーとどのように共有していくのかは、今後の国際秩序やデジタル経済の行方を考えるうえで重要な視点となります。
日本の読者が押さえておきたいポイント
今回の動きから、日本やアジアの読者にとって意識しておきたい点を整理すると、次の3つにまとめられます。
- AIは単体の技術ではなく、モデル・計算資源・データ・人材支援を束ねた「エコシステム」として競争が進んでいる
- 中国は都市レベル(上海)で、AIと科学技術イノベーションを組み合わせた拠点づくりを急いでいる
- こうした基盤が、グローバル・サウスとの協力や国際的なルール形成にも影響を与える可能性がある
日本でも、AI開発を支えるインフラとガバナンスをどのように設計するのかが問われつつあります。中国の動向を、単なる技術競争として見るだけでなく、国際協力やルールづくりの文脈からも継続的にフォローしていく必要がありそうです。
Reference(s):
How China speeds up AI development, advances Global South cooperation
cgtn.com








