中国が高速潜水型無人艇「ブルー・ホエール」公開 海洋観測のゲームチェンジャーに
高速で走り、水中にも潜る新型無人艇が登場
中国広東省珠海市で、高速航行と潜水の両方ができる新型の無人艇「ブルー・ホエール」が公開されました。海洋テクノロジーと無人システムの分野で、中国が新たな段階に入ったことを示すプロジェクトで、国際ニュースとしても注目を集めています。
この「高速潜水型無人水上艇」は、名前の通り水面を走るだけでなく、水中に潜って運用できるのが特徴です。開発には、珠海雲洲智能科技(Zhuhai Yunzhou)などが携わっています。
「ブルー・ホエール」の主な性能
水上と水中を自在に行き来
開発企業によると、「ブルー・ホエール」は水面では最高で36ノットの速度で航行できます。一方で、台風などの極端な気象条件を避ける必要がある場合には水中に潜り、静止したまま1か月以上とどまることができます。
水上を高速で移動しつつ、必要なときには潜水して安全を確保する──こうした柔軟な運用ができることで、従来の無人艇とは一線を画す存在になりそうです。
災害対応から海底インフラ点検まで
「ブルー・ホエール」は、その多用途性を生かして、さまざまな場面での活用が想定されています。たとえば、
- 海上や沿岸での緊急事態への迅速な対応
- 気象観測や海象(海の状態)データの収集
- 海底地形の調査やマッピング
- 水中写真・動画の撮影
- 海水の採取などの環境モニタリング
- 海底ケーブルなど海底インフラの検査・維持
といった用途が挙げられています。特に、海底ケーブルは国際通信の「生命線」ともいえるインフラであり、その点検や保守を無人で効率的に行える技術は、各国にとっても関心が高い分野です。
台風の「目」に迫る観測能力
プロジェクトの主任エンジニアである Wu Guosong 氏は、「ブルー・ホエール」が台風の中心付近まで接近し、気象ロケットや各種センサーを打ち上げて観測を行える能力を強調しています。
台風の「目」に近いエリアで、
- 大気の状態(温度、湿度、気圧など)
- 海面や水中の状態(波高、水温、海流など)
といったデータを高密度に取得できれば、台風の進路予測や勢力の変化をより正確に把握できる可能性が高まります。日本を含むアジアの沿岸国にとって、台風情報の精度向上は、防災・減災の観点から重要なテーマです。
「中国の独自イノベーション」にとってのマイルストーン
中国科学院の Chen Dake 氏は、「ブルー・ホエール」の公開を、中国の海洋科学における「独自イノベーションのマイルストーン」だと評価しています。
無人艇や無人潜水機は、世界各地で開発競争が進んでいる分野です。その中で、
- 水上と水中の両方で運用できる一体型プラットフォーム
- 長期間の静止潜航が可能な設計
- 気象・海象データを統合的に取得できる観測能力
といった特徴を一つのシステムに組み込んだ点は、中国にとって戦略的にも意味のある一歩だといえます。海洋探査や資源調査だけでなく、気候変動の研究や安全保障上の海域監視など、用途は今後さらに広がるとみられます。
2026年の実運用を見据えたロードマップ
「ブルー・ホエール」の工学モデル(実証用モデル)の建造は、2024年6月に始まりました。圧力に耐えるための溶接、船体の組み立て、機器の搭載といった工程を経て、今回の公開に至っています。
今後は、内部システムのデバッグ(動作確認)、係留試験(港内での試験)、さらなる海上試験といった最終段階のプロセスが予定されています。これらを完了したうえで、2026年に本格的な運用開始を目指す計画です。
日本の読者にとっての意味
今回の「ブルー・ホエール」の登場は、単なる新型無人艇のニュースにとどまりません。台風や海底インフラといったテーマは、日本にとっても無関係ではないからです。
とくに、
- 気象・海象データの高精度観測
- 海底ケーブルなど重要インフラの保守
- 海洋環境の変化を長期的にモニタリングする仕組みづくり
は、東アジアの国々が共通して直面する課題です。今後、こうした無人システムを活用した海洋観測やインフラ監視の取り組みが、国際的な連携の中でどのように進んでいくのか、注目していく価値があるでしょう。
海のデータをどのように集め、どう活用していくのか。「ブルー・ホエール」をめぐる動きは、海洋テクノロジーの未来だけでなく、私たちの暮らしや安全にも静かに影響を与え始めているのかもしれません。
Reference(s):
China launches pioneering high-speed submersible unmanned vessel
cgtn.com








