中国とマレーシアがAI・デジタル経済協力を強化 新たな黄金期へ video poster
中国とマレーシアが、AI(人工知能)とデジタル経済を軸にした協力を一気に深めています。2025年4月の習近平国家主席のマレーシア訪問で31件の覚書が交わされ、両国は関係を「新たな黄金期」と位置づけました。その中心にあるのが、デジタル変革とスマートシティです。
31件の覚書で始まる「新たな黄金期」
2025年4月、中国の習近平国家主席がマレーシアを訪問し、両国は安全保障、デジタル技術、交通、貿易、メディア、ビザ免除など、幅広い分野で合計31件の覚書(MOU)に署名しました。国際ニュースとしても注目度が高い合意で、両国はこの動きを「新たな黄金期」と表現しています。
とくに、今後の成長産業とされるデジタル経済やAI関連の協力は、アジア全体のデジタル地図にも影響を与えうるテーマです。インフラや貿易だけでなく、データやアルゴリズム、都市運営といった、よりソフトな領域まで協力を広げようとしている点が特徴と言えます。
協力の焦点はデジタル変革とAI
今回の合意で前面に出ているのが、デジタル変革とAI(人工知能)エコシステムの構築です。両国は、経済成長をけん引する「フューチャーレディー(未来志向)な産業」として、デジタル分野を中心に据えています。
デジタル経済協力には、例えば次のようなテーマが含まれることが想定されます。
- 行政サービスや公共サービスのオンライン化
- クラウドやデータセンターなどのデジタルインフラ整備
- AIを活用した産業の高度化や効率化
- スタートアップやデジタル人材の育成
こうした動きは、マレーシアにとっては産業構造の高度化と投資の呼び込み、中国にとってはアジアにおけるデジタル協力ネットワークの拡大という意味を持ちます。
浙江大学とMDECが連携 「浙江モデル」を導入へ
今回の動きの中で象徴的なのが、中国の浙江大学とマレーシア・デジタル・エコノミー公社(MDEC)による連携です。両者は「デジタル変革」「AIエコシステム」「スマートシティ」を柱とした協力に向けて、覚書の前段階となる意向表明書(LOI)に署名しました。
協力のキーワードとなっているのが、中国・浙江省で進められてきたデジタル統治の枠組み「浙江モデル」です。これは、行政手続きや都市運営にデジタル技術を組み込み、データに基づいて政策やサービスを改善していく考え方を指します。
具体的には、次のような方向性がイメージされます。
- 市民や企業向けの行政手続きのワンストップ・オンライン化
- 交通、エネルギー、防災など都市インフラのスマート管理
- 医療・教育・福祉サービスのデジタル化
- データを活用した都市計画・政策立案
浙江大学は、中国における先端技術と公共政策の両面を担う研究機関として知られ、MDECはマレーシアのデジタル経済を推進する中核的な機関です。大学と政府系機関が組むことで、研究開発から人材育成、実証実験、制度設計まで、一連のプロセスをつなぐ狙いがあると見られます。
MDEC CEOが語る「なぜ浙江モデルなのか」
CGTNのインタビューで、MDECのアヌア・ファリズ・ファズィルCEOは、なぜ浙江モデルに注目したのか、そしてマレーシアでどのようにデジタル革新を進めていくのかについて語りました。
浙江モデルが持つポイントとしては、次のような点が意識されていると考えられます。
- 実際に広域の地域で運用されているデジタル統治の枠組みであること
- 行政・産業・市民サービスを一体的にデジタル化していること
- 大学や企業、政府機関が連携してエコシステムを形成していること
マレーシア側は、こうした枠組みをそのままコピーするのではなく、自国の法制度や社会状況に合わせてアレンジしながら導入していくとみられます。AIやデジタル技術の導入が、都市に住む人々の利便性向上と産業競争力の強化の両方につながるのかが、今後の焦点です。
ビザ免除からメディア協力まで 人と情報の流れも変える
今回の31件の覚書には、ビザ免除やメディア協力といった、人と情報の流れに関わる項目も含まれています。デジタル経済の時代には、モノやお金だけでなく、人材移動や情報発信の仕組みも重要なインフラの一部です。
ビザ免除が進めば、ビジネスパーソンや学生、研究者の往来が活発になり、AIやデジタル技術をめぐる共同研究やスタートアップの連携も生まれやすくなります。メディア協力は、両国の社会や文化、政策を互いの言語で伝えるための基盤づくりにつながります。
日本とアジアの読者にとっての意味
日本から見ると、中国とマレーシアのデジタル協力の強化は、アジアの中でデジタル経済圏がいくつも立ち上がりつつある流れの一つとして位置づけられます。とくに、次のような点が注目ポイントになりそうです。
- アジアにおけるスマートシティやAI活用の「モデルケース」が増えること
- 企業やスタートアップにとって、新たな協業先や市場が生まれる可能性
- デジタル統治やデータ活用の考え方が、域内で共有・競争されていくこと
日本企業や研究機関、スタートアップにとっては、中国・マレーシア双方との連携の仕方を再設計するきっかけにもなり得ます。どのようなルールや価値観に基づいてデジタル技術を社会に組み込んでいくのかという問いは、日本にとっても他人事ではありません。
これからのチェックポイント
今回の合意はあくまでスタートラインです。実際にどこまで具体的な成果につながるのかは、これから数年にわたって試されていきます。今後、国際ニュースとして注視したいポイントを整理すると、次のようになります。
- 31件の覚書が、具体的なプロジェクトや制度としてどこまで実装されるか
- 浙江モデルを参考にしたスマートシティや行政サービス改革の進展
- AI人材育成やスタートアップ支援など、エコシステムづくりの実効性
- ビザ免除による人の往来拡大が、ビジネスや観光に与える影響
中国とマレーシアが掲げる「新たな黄金期」が、アジアのデジタル経済の姿をどのように塗り替えていくのか。2026年に向けて、その行方を静かに追いかけていきたい局面です。
Reference(s):
China, Malaysia partner to enhance AI, digital economy innovation
cgtn.com








