オランダ人留学生が二胡に恋する理由 バイオリンでつなぐ東西の音楽
中国・上海の音楽大学で学ぶ一人のオランダ人留学生が、クラシックのバイオリンと中国の二胡を通じて東西の文化をつなごうとしています。政治や経済の国際ニュースとは違う、静かだけれど示唆に富んだ「音楽のニュース」です。
オランダ出身の交換留学生アナスタシア・フリードマンさんは、上海音楽学院(Shanghai Conservatory of Music)で学ぶクラシック訓練を受けたバイオリニストです。いま彼女が強く惹かれているのが、中国伝統の弦楽器「二胡」。二つの楽器が持つイメージの殻を破りながら、東西の感情表現の幅を広げようとしています。
オランダから上海へ:西と東が出会う教室
アナスタシア・フリードマンさんは、オランダからの交換留学生として、現在上海音楽学院で学んでいます。幼い頃からクラシック音楽の教育を受け、バイオリンを専門としてきましたが、上海で出会ったのが二胡という新しい世界でした。
二胡は、中国の伝統音楽を代表する二本弦の楽器です。弓で弦をこするその音色は、人の声に近いといわれ、しばしば「泣きの楽器」として語られます。アナスタシアさんは、この独特の響きに魅了され、自ら演奏を学び始めました。
彼女にとって、上海での生活は単なる留学体験ではありません。西洋クラシックの訓練を受けた自分と、東アジアの音楽文化が、毎日の練習室で出会い、少しずつ混ざり合っていく「音楽の旅」そのものだといえます。
二胡とバイオリン、「イメージの殻」を破る
バイオリンには「ロマンチック」「愛の旋律」といったイメージが強く、二胡には「もの悲しい」「切ない」といった印象がつきまといがちです。アナスタシアさんは、そうしたイメージに違和感を抱いてきました。
彼女は、二つの楽器が本来ははるかに幅広い感情を表現できると考えています。バイオリンは、恋愛だけでなく、静かな祈り、日常のユーモア、素朴な喜びや葛藤も丁寧に描き出せる楽器です。同じように、二胡も悲しみだけでなく、希望や躍動感、穏やかな幸福感を生き生きと表現できる可能性を秘めています。
アナスタシアさんが目指すのは、「バイオリン=ロマンス」「二胡=悲しみ」という固定観念から自由になる演奏です。ステージの上で二つの楽器を対等に並べ、それぞれの持つ感情表現の幅を引き出しながら、新しい物語を紡ごうとしています。
東西の「声」を重ねて生まれるハーモニー
アナスタシアさんにとって、二胡とバイオリンは、それぞれ東と西の文化の「声」を象徴する存在です。音色も歴史も学び方も違う二つの楽器を、一つの作品の中で対話させることで、彼女は東西の文化を対立させるのではなく、調和させようとしています。
彼女の目標は、単なるジャンルの「ミックス」ではありません。二胡が育ってきた文化と、バイオリンが磨かれてきた伝統の違いをきちんと尊重しながら、そのあいだにある共通点を探り出すことです。そのプロセスから生まれる音楽こそが、東西の声のあいだに生まれるハーモニーだといえるでしょう。
アナスタシアさんは、こうした試みを通じて、東西のあいだにある距離を少しでも縮めたいと願っています。彼女の演奏には、国境や言語の違いを越えて「一緒に音楽を楽しみたい」というシンプルなメッセージが込められています。
音楽がつくる「小さな橋」、私たちにできること
2025年のいま、国際ニュースやSNSでは、国や地域どうしの緊張や対立が大きく取り上げられます。その一方で、上海の一つの教室では、一人の留学生が二胡とバイオリンという二つの楽器を手に、静かに文化の橋をかけようとしています。
こうした「小さな物語」は、大きな政治や経済のニュースの陰に隠れがちですが、私たちのものの見方をやわらかくしてくれる力を持っています。異なる文化を「遠いもの」としてではなく、「一緒に音を鳴らせる相手」として捉え直すきっかけになるからです。
- 知らない国や地域の音楽を一曲聴いてみる
- 身近な留学生や海外経験のある人の話を聞いてみる
- 自分の得意分野を通じて、異なる背景の人と何かを一緒につくってみる
こうした一つひとつの行動は、アナスタシアさんの挑戦と同じように、小さな「橋」を世界のあちこちに増やしていくことにつながります。
上海音楽学院で二胡とバイオリンの新しい可能性を探るアナスタシア・フリードマンさんの物語は、音楽が国境や言葉の壁を越え、「わかり合いたい」という静かな願いを形にできることを、あらためて思い出させてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








