中国、共通の安全保障に基づく核軍縮を提唱 NPT準備委で立場表明
中国が核軍縮と核不拡散をめぐり「自国の安全保障と共通の安全保障は切り離せない」とする立場を改めて打ち出しました。2026年核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第3回準備委員会の一般討論で、中国外務省軍備管理司の孫暁波(そん・ぎょうは)司長が演説し、核軍縮の進め方や核エネルギーの平和利用について包括的なメッセージを発信しました。
共通の安全保障を軸にした核軍縮
孫氏は、中国は「自国の安全」と「共通の安全」は不可分だとし、その両方を守りながら世界の戦略的安定を維持する核軍縮の道を支持すると表明しました。安全保障上の権利と義務は切り離せないとしたうえで、公平で公正な核不拡散体制の構築を支持すると述べました。
さらに、安全保障と開発も不可分だと位置づけ、NPT締約国すべてが原子力の平和利用を行う権利を有すると強調しました。核エネルギーを開発目的でどう活かすかという点で、開発途上国も含む各国の権利を守るべきだという立場です。
NPTという枠組みの重みと試練
孫氏は、NPTを「国際的な核軍縮・核不拡散体制の礎」と位置づけ、その権威がこれまでにない試練に直面していると指摘しました。そのうえで、中国は新しい時代においてもNPTが平和と発展に貢献できるよう、その役割を十分に発揮させることを支持し、条約の権威性、有効性、普遍性を守っていくと述べました。
NPTは1968年に署名され、1970年3月5日に発効した条約で、核軍縮の追求に関する法的拘束力を持つ約束を含む唯一の国際条約とされています。核兵器国5カ国を含む191の国と地域が参加しており、最も広く受け入れられている多国間軍縮合意だとされています。
米国や一部諸国への懸念「力が正義ではない」
孫氏は、国際秩序を揺るがしている要因として、特に米国や一部の国々の動きを名指しで批判しました。米国は「力こそが正義」と考え、覇権を追求し、関税や制裁を乱用して最大限の圧力をかけ、いじめのような手法を用いていると述べました。こうした行動が、国連を中心とする国際体制や国際法に基づく国際秩序を深刻に損なっているとしています。
また、一部の国々が冷戦思考に固執し、小さなグループや排他的なサークルを形成し、絶対的な軍事的優位を追求していると指摘しました。具体的には、膨大な予算で核戦力三本柱(陸上・海上・空中の核戦力)の近代化を進め、核同盟を強化し、他の核兵器国の国境付近にまで及ぶグローバルなミサイル防衛システムや中距離ミサイルの前方配備を進めていると説明しました。
こうした「負の傾向」は、大国間の相互信頼と協力を損ない、核軍拡競争や核紛争のリスクを高め、国際的な戦略安全保障環境を悪化させ、世界的な戦略バランスと安定を弱めると孫氏は警告しました。
一方主義と「弱肉強食」への逆行を懸念
孫氏は、一方主義やいじめ、パワーポリティクス(力による政治)の台頭に警鐘を鳴らし、国際社会は団結して歴史の流れに反する行為に断固として対抗すべきだと呼びかけました。人類が「強者が弱者を食らう」弱肉強食の世界に逆戻りするのを防ぐ必要があると強調しました。
最大核保有国に新START履行と削減を要求
核軍縮の具体的な一歩として、孫氏は、世界で最大の核兵器庫を持つ2カ国に対し、「新戦略兵器削減条約(ニュー・スタート)」の履行を再開し、検証可能かつ不可逆で法的拘束力のある形で、核兵器を大幅かつ実質的に削減するよう求めました。これは、他の核兵器国が核軍縮プロセスに参加するための条件を整える狙いがあると説明しました。
あわせて孫氏は、「特定の国々」に対し、次のような見直しを促しました。
- 国家および集団安全保障政策において、核兵器の役割を低減すること
- 核共有や拡大抑止(同盟国を核で守るとする抑止)といった取り決めを廃止すること
- 国外に配備している核兵器を自国領土に撤収すること
- グローバルなミサイル防衛システムの開発・配備をやめること
- 他国近傍での地上発射型中距離ミサイルの前方配備を停止すること
こうした措置によってこそ、核軍縮と国際的な戦略安定に向けた環境が整うというのが、中国側の主張です。
核の平和利用と「グローバル・サウス」
孫氏は、中国は地域の核問題について、政治的・外交的手段による解決を一貫して支持していると述べました。武力の恣意的な行使や、国際法に反する一方的制裁の乱用に反対するとともに、核不拡散分野の国際的な法制度や取り決めを損なう行為、地政学的な思惑を核不拡散より優先させる姿勢に反対すると表明しました。
また、中国は「グローバル・サウスのための原子イニシアチブ」を支持し、原子力分野での世界的な協力を妨げる一方的な輸出規制の誤用に反対すると強調しました。核技術は「共有とウィンウィンの利益をもたらす財産」であるべきであり、「鉄のカーテン」を作る道具にしてはならないと述べました。経済や技術の「デカップリング(切り離し)」は、最終的には自らを孤立に追い込むと警告しています。
中国の核政策「不先行不使用」を強調
孫氏は、中国文明の平和的性格が、中国を「世界の平和の建設者」「世界の発展への貢献者」「国際秩序の擁護者」として行動させていると語りました。
中国は核兵器を保有した初日から、「いかなる時、いかなる状況でも核兵器を先に使用しない」と約束してきたと強調しました。また、非核兵器国や、核兵器を持たない地域(非核兵器地帯)に対しては、核兵器を使用せず、あるいは使用すると脅さないことを無条件で約束していると述べました。
この核兵器不先行不使用と安全の保証に関する政策は、60年以上にわたり変わっておらず、歴史の検証にも耐えてきたと孫氏は説明しました。中国は自らの約束を守る「責任ある国家」だと位置づけています。
何が問われているのか
核軍縮と核不拡散は、アジア太平洋を含む世界全体の安全保障に直結するテーマです。今回の中国のメッセージは、核兵器国の責任や「共通の安全保障」という視点を前面に押し出すものでした。一方、安全保障環境や歴史認識が異なる各国のあいだで、核抑止への依存をどう減らし、どうやって信頼と安定を築いていくのかという問いは、これからも国際社会全体で向き合うべき課題だと言えます。
Reference(s):
China advocates nuclear disarmament based on common security: Envoy
cgtn.com








