生物的防除が外来雑草を強くする?豪UNSWの研究が警鐘
外来種対策として世界各地で使われてきた「生物的防除」が、実は外来雑草をさらに強くしているかもしれない——。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の新しい研究が、そんな警鐘を鳴らしています。
外来雑草を弱らせるはずの天敵が「団結」を促す?
今回紹介された国際ニュースによると、研究チームは、生物的防除の一つである「天敵の導入」が思わぬ結果を生んでいる可能性を指摘しています。外来雑草を食べる昆虫などの自然の敵を入れることで、雑草同士が「ばらばらになる」のではなく、「いっそう協力し合う」方向に働き、その結果、個体群全体が前よりもたくましく、生き残りやすくなっているかもしれないというのです。
研究は、こうしたプロセスによって、本来は数を減らしたいはずの侵略的な雑草が、むしろ栄え、衰退するどころか拡大を続けるおそれがあると警告しています。
生物的防除とは何か
生物的防除とは、化学農薬などに頼らず、害虫や病気、草食昆虫といった「天敵」を利用して問題となる生物を抑える方法です。外来雑草が生態系や農業に大きな被害を与える場合、その雑草だけを好んで食べる昆虫を他地域から導入し、数を減らすことがねらいとされてきました。
今回のUNSWの研究は、この一見合理的に見える手法に対して、「導入された天敵が、外来雑草の側に新たな適応や協力関係を生み出していないか」という問いを投げかけています。
「協力する外来雑草」という視点
研究チームが示したのは、外来雑草を一方的な「被害者」としてではなく、「環境に合わせて戦略を変えるしたたかなプレーヤー」として捉える視点です。天敵によるプレッシャーが加わることで、雑草同士が密集して生えたり、資源の使い方を調整したりするなど、結果的に「一緒に生き延びる」行動が強まる可能性があります。
こうした変化が積み重なると、外来雑草の集団は、天敵が導入される前よりも、かえってしぶとく、除去しづらい存在になるかもしれません。この点が、研究者たちがとくに注意を促しているポイントだといえます。
環境政策への示唆:手段そのものを問い直す
外来種対策や環境保全は、地球規模で共有される課題です。今回の研究は、生物的防除という手法そのものを否定しているわけではありませんが、「導入すれば自動的に問題が解決する」といった単純な期待にはブレーキをかけています。
・天敵を導入する前に、長期的な影響や思わぬ副作用を慎重に検討すること
・外来雑草の振る舞いを「個体」ではなく「集団」として観察し、協力関係や適応の変化を追うこと
・生物的防除だけに頼らず、土地利用や在来種の保全など、複数の手段を組み合わせて管理すること
こうした視点は、日本を含む各国で今後生物的防除を検討するときにも、重要な手がかりになりそうです。
私たちにできること:ニュースを「自分ごと」にする
外来種や生物多様性のニュースは、一見すると遠い話に思えるかもしれません。しかし、農産物の価格、身近な自然、公園や川辺の景色など、私たちの日常とも深くつながっています。
今回のUNSWの研究は、「環境問題の解決策は、ときに複雑な結果を生む」という現実を静かに突きつけています。新しい技術や方法が提案されたときこそ、そのメリットだけでなく、長期的な影響や予期せぬ副作用についても考えてみる——そんな視点を持つきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








